2005 年 02 月 23 日 : ストラテジックマインド
「0」、「1」、「2」、「3」、・・・「9」という10個の数字を並べた、所謂、順列の組み合わせがどれくらいあるのか瞬間的に想像できるだろうか?
電卓を叩いてその順列の組み合わせの数、即ち「10!=1×2×3×・・・×10」を計算してみると、「3,628,800」という数字が液晶画面に映し出された。たった10個の組み合わせだけでもこんなにも膨大な数となってしまう。
現実の世の中では選択肢とその組み合わせは数え切れないくらいある。だからこそ、同じように見える事業でも、それぞれの切り口に対する見方や優先順位をどのように意思決定し行動するかで、実際の結果は全く異なった様相が現れる。
いつも行列ができて繁盛しているラーメン屋もあれば、昼食時ですら閑古鳥が鳴いている寂れたラーメン屋もある。事象の全ては経営者がいろんな物事の切り口の視点をどのように選択し、考えて行動しているかという結果に過ぎないのかもしれない。しかし、これこそが戦略的な思考であり、経営者が最も大切にすべき行動様式なのだ。
創業時におけるソフィア・クレイドルの戦略的な視点というのは以下のような感じだった。
ソフィア・クレイドルは携帯電話向けのソフトウェア製品の開発と販売の事業を展開している。商売の基本は“まず最初にどこで創めるのか”ということである。分かり易い店舗の例で譬えるのなら、同じ店であれば人通りの多いところに開店した方が売上が大きくなるのは小学生にでも分かるだろう。しかし、現実の事業では人通りの多いところが見えない場合が多く、この選択と集中が意外に難しい。
携帯電話向けソフトウェア開発事業を創める時に真っ先に注目したのが、世界における携帯電話出荷台数のメーカー別シェアの数字だった。世界的に売れている、或いは売れるであろうから数の多いプラットフォームを選択した方が、人通りが多い通りと同じだから商売が成功する確率は高まる。
物事を俯瞰する姿勢が、勝てる戦略立案には求められよう。創業当時はそんな事情で携帯電話の世界シェアを調べて考えていることが多かった。以前の日記で紹介したデータであるが、3年前とほとんど変化はないのだが、携帯電話の世界シェアは次のようになっている。
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携帯電話の世界マーケットシェア
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ノキア 30.9%
サムスン 13.8%
モトローラ 13.4%
ジーメンス 7.6%
LG 6.7%
ソニー・エリクソン 6.4%
サジェム 2.5%
松下 2.4%
NEC 2.0%
三洋 1.7%
その他 12.8%
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合計 100.0%
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( 2004年3Q)
世界の携帯電話業界をよくご存知ない方は、この表を見て意外に思われるかもしれないが、日本の携帯電話は世界マーケットでは全く売れていない。実質的にはソニー・エリクソンは海外に含めてよいので、世界マーケットでは海外の携帯電話メーカーが90%以上のシェアを占めている。
創業当時、この数字を見て思ったのが、日本国内でしか使えないようなソフトウェアテクノロジーは世界マーケットでは確実に淘汰されるだろうということだった。
であれば、最初から海外でビジネスを創めるというオプションも有り得たが、敢えてそれは選択しなかった。幸運にも国内でも海外マーケットを対象とした携帯電話向けソフトウェア事業が可能だった。そして、日本でしか得がたいような都合の良い点もあったからだ。
それは携帯電話そのものの進化と関係している。どんな製品にしても、それが多機能、高付加価値化してくれば、必ずそこにはレイヤー構造のようなものを製品のアーキテクチャーに見出せる。ちょうど、ソフィア・クレイドルを創業した2002年当時、携帯電話業界はそんな変化の荒波に揉まれていた時期だった。
携帯電話のOSがいくつかに統一される兆しがあった。それからアプリケーションを開発するための全世界で利用可能なプラットフォームとしてJavaやBREWといったようなものが姿を見せつつあった。JavaやBREWの上であれば、世界マーケットにおいて携帯電話の種類に関係なく、ソフトウェア事業を展開することができた。しかも、国内マーケットに普及している日本製の携帯電話のハードウェアは世界で最も進んでいたので、先進的なアプリケーションを世界に先駆けて研究開発できる可能性があった。