2005 年 04 月 13 日 : Asymmetric information
情報の非対称性(Asymmetric Information)とは売り手と買い手の間で持てる情報量に格差がある状態のことをいう。インターネットの発展と共に、両者の情報格差は縮小し、場合によっては逆転現象すら発生しているという。そんな世の中の傾向のエッセンスをどのように解釈し、それを経営に応用し実践できるか、それによって戦略シナリオの道筋とその展開も異なってくる。
インターネットが普及する以前は、売り手が買い手よりもたくさんの情報を持っていた。だから、営業員が顧客に商品について分かりやすくプレゼンテーションし、啓蒙する活動は必要不可欠であった。
時は移り変わり、いまは買い手がありとあらゆる必要な情報を瞬時にインターネット経由で入手できる時代だ。もし仮に買い手が事前にその商品情報を持っていれば、売り手はその商品の説明すらしなくてよい。極端な話、買い手が売り手以上の情報を掴んでいる場合さえある。
商品がオートマティックに売れるのならば営業員がいらなくなる場合もある。だから、売り手としてはこれ以上有難い話はない。こんな美味しい話には当然前提条件があるものだ。その商品が何故必要になるのか、インターネットだけで買い手が本当に理解し買う気になるのかということである。この問い掛けは極めて重要だ。
肝心なポイントは、どのようにしてインターネットというツールを駆使して、できるだけたくさんの買い手に短時間でその商品の良さを正しく理解してもらえるかという話に尽きると思う。
確率的な話からすれば、母数が多ければ多いほど当たりの数も増える筈である。そのためには、先ずはできるだけ多くの買い手にホームページを閲覧してもらう発想が重要になるだろう。
そのためには、まったく同一のモノなんだけれども、それを表現する方法は無限にあることを認識する必要があるだろう。同じことを異なる表現で延々と限りなく繰り返し説明するのは問題あると思う。けれども、適切にそれをやることでより多くの人びとにその商品の価値を理解してもらえるのではないだろうか。
分かり易い例でいえば、同じ商品について日本語と英語のホームページを用意していれば、国内だけでなく海外からも問い合わせや注文が入り、それだけ多く売れる仕組みができる。
当たり前のような話かもしれない。これと同じ考え方を日本語のホームページの中においても展開する発想がプラス方向に作用してくれるのではないだろうか。そのように仮説を立て、いま新しいホームページの構想を練っている。
同じ商品の説明でも、まずは商品の概要を知りたい顧客と、その商品の購入を真剣に検討している顧客とではすべき説明の内容、深さやトーンも随分と異なってくるはずだ。更に言及するならば、新しくかつ深みのある商品には、いろんなメリットがあって、顧客によってその商品を買う理由は異なるものだ。その顧客の思惑に沿ったシナリオでホームページが個別に構成されていればそれだけ売れる確率も高まるのではないだろうか。
ホームページ上に同じ商品について無制限に何通りも表現するのは事実上不可能であり、ある最適値を過ぎると逆効果になるであろう。肝心なポイントはその最適化プロセスにおけるバランス感覚にありそうだ。限りなく思考に思考を重ねたにしても、最終的にはそのプロジェクトチームの感性に依存する問題に帰着してしまう。それを考えれば日頃からいろんな素晴らしきモノに触れ、超一流を目指して感性を磨く習慣がとても大切に思えてくる。
……Glenn GouldによるJ.S.Bachのピアノ演奏を聴きながら、あんな風に洗練されたクールさでホームページが創れればと憧れを抱く。そこに辿り着くまでの道程は険しく曲がりくねっている。