2005 年 10 月 31 日 : 合格ライン
成長の曲線もS字のカーブを描くように思える。
最初は成長は緩やかだけれども、時の経過と共に成長は加速し、やがてその成長も緩やかになる。そして次の成長フェーズへと進む感じである。
製品開発やマーケティングの際、思うことがある。それは成長のペースが緩やかになって来た時に採るべきアクションについてである。ひとつの考え方は大体出来上がってきたからそれで良しとし終了する方法。もうひとつの考え方は合格ラインまで何かが欠けるとして残り0.1%の完成度を追う方法。
これまでのビジネスの経験から言えることは、製品が売れるための目には見えないある一定の合格ラインが存在している。時間と労力を費やして創られた商品も売れるかどうかはその合格ラインをクリアしているか、で決まると思う。
少しでも合格ラインに達していなければ売れないし、少しでも合格ラインに達していれば売れるといった感じではないだろうか。水が摂氏 100 度になった瞬間、液体から気体へと相転移する現象に似ている。
難しいのはその合格ラインが目に見えないという点だろう。どれくらいやればそこに到達できるのかも経験に乏しければ把握し難い。確実に言えるのは、全力の限りを尽くすことさえすれば問題は回避できるということ。
人はたぶん精神的に弱い生き物で、せっかくいいところまで来ているのについそこで妥協する傾向にある。もう少しで合格ラインに到達できるのにその手前で辞めてしまうことが多いと思う。とても難しいけれども大切なことは、持続して遣り残した点を徹底的に洗い出し、それらをパーフェクトと見なせるまで完成度を高めてゆくアプローチである。
2005 年 10 月 31 日 : 曲線の形状
ベンチャービジネスで自分の思いを実現するには、理想型のS字カーブをイメージして自ずとそうなるように経営する習慣がキーになるだろう。スポーツの世界であれば、それはイメージトレーニングに相当するのかもしれない。
どうすればS字カーブの最初の曲線が上向くスピードが速くなるのか?
どうすればS字カーブの山が大きくなるか?
どうすれば理想的なS字カーブの曲線を繰り返し描けるのか?
千円札を 1 万円札に交換してくれる店があれば、間違いなくその店には長蛇の行列ができる。しかし原価千円の商品を価格 1 万円で販売していても、長蛇の行列ができる店は極めて少ない。その商品に潜在的に 1 万円以上の価値があっても、である。
では、それは何故か?
と考えてみるところから出発すれば思わぬヒントが得られるかもしれない。
商売の基本は、お客様に、千円の商品に 1 万円の価値をリアルにイメージさせることではないだろうか。千円札を 1 万円札に交換してくれるところがあれば人は殺到するから、そんな商売であれば間違いなく繁盛するだろう。
そして、お客様が実際にその商品を手にして本当に 1 万円の価値を得たと実感すれば、そうある限りその商売はきっと永続することだろう。
では何故そのような商売は現実にはあまり存在しないのだろうか?
ひとつには錬金術のごとく、それだけの価値を有する商品を創造するのが困難だからである。そんな商品は究極のある一線を超えない限り生み出し得ないものである。高いハードルに敢えて挑戦する人も少なければ、その一歩手前で諦めてしまう人がほとんどだからだろう。
逆に言えば、挑戦し諦めなければ、競争は限りなくゼロに等しく勝ち残れる確率は時間の経過と共に急上昇するものである。だから成功するまで諦めないというのが成功法則としてよく言われるのかもしれない。
もうひとつ言えることがある。それはどんなに価値あるものを創造したとしても、お客様の心に伝わるメッセージでその商品を表現しなければ意味がないということだ。
光のスピードは余りにも早く人の能力では察知できない。同じように偉大なものほど誰にでも分かるようにそれをメッセージとして表現するのが難しいというパラドックスが成立している。
このパラドックスをどうやって解くかが、偉大なベンチャーへと繋がる最大の関門に至る道程に思う。