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2004 年 12 月 19 日 : ステルス

ミハエル・シューマッハを擁して F1 レースで連戦連勝のフェラーリ

カローラに代表される大衆車でその名を世界に知らしめ、自動車販売では世界第 2 位となったトヨタ

派手さ&クールさならフェラーリ。

ビジネスという観点ならトヨタ。

多くの人が見かけが華々しいものを好む。自動車の例で言えば、トヨタよりはフェラーリがカッコいいと思う。カッコ良さとビジネスのスケールは必ずしも一致しない。研究開発では画期的な成果でも、消費者には高嶺の花でビジネスがブレークしないこともある。

トヨタや松下電器産業など、消費者にコストパフォーマンスに秀でた製品を開発し提供して、発展した企業の戦略や戦術から多くを学べる。

携帯電話のソフトウェア業界をどのように俯瞰すべきかをまとめてみる。

今、携帯電話はブロードバンドで、世界共通の 3G 携帯に切り替えが進んでいる。NTT ドコモの戦略に顕著なのだが、3G 携帯電話ではオペレーティングシステムLinuxという、現在、サーバー用途で利用されているものが採用されたりしている。(NTT ドコモが採用している 3G 携帯電話向けのオペレーティングシステムにはSymbianOS もある。これも高性能な携帯電話向けのものだ。)

もともとサーバーで使われていたものである。大掛かりな研究開発もできる。だから多くのハイテクベンチャーはそちらに向かっている。それを動作させるには、高価なハードウェアが必要である。結果的に、出来上がる携帯電話は高価なもの、或いはスピードの遅いものとなってしまう。

値段が高ければ、マーケットに流通させる局面で、消費者への販売には無理があり非現実的なのである。世界マーケットで考えてみて欲しい。日本ほど豊かな国は、 5 本の指で数えるくらいしかない。

日本人でも高いと思う携帯電話は、世界で普及する状況は望めない。それがLinux携帯電話の現状の姿ではないだろうか。

携帯電話向けソフトウェア事業を展開する上で、どのプラットフォームを選択すべきかをこのような実態から定めた。

ハイエンドな携帯電話よりもハードウェア的には少々見劣りするかもしれないけれど、安価な携帯電話でも、ソフトウェアテクノロジーを駆使することで、高級な携帯電話に匹敵するくらいの性能を発揮させることができる。それがクアルコム社が自社の 3G 携帯電話向けチップと共に提供している BREW である。

創業した年は、KDDI はまだそれを正式採用するとは決めてなかった。冷や汗ものだったけれど、必然的にこうなるであろうという予測はついていた。

心強かったのは、クアルコム社は 3G 携帯電話の CDMA という技術を独占的に有している会社だったということだ。

世界中に広く普及するであろうCDMA の 3G 携帯電話のプラットフォームを発見して、それに向かって研究開発を積極的に進める会社が皆無に近かったことも、追い風になった。

値段が安いとはいっても、技術的な観点からすれば、BREW というプラットフォームは昨日もお話した ARM という携帯電話の CPU をダイレクトに扱えるという、とても興味深い一面を有するものであった。これまでの一般の携帯電話向けソフトウェア開発会社ではなし得なかった仕事ができるオープンな環境でもあるのだ。

最近のソフトウェアの開発といえば、JavaVisual Basicなどの高級プログラミング言語が常識だ。

ARM というプラットフォームでは機械語という 2 進数でプログラミングすることによって、携帯電話の性能を極限まで引き出せる。この仕事は誰にもできるわけではなく希少価値があり、技術を追求する前向きな技術者にとっては、非常に楽しい仕事なのである。

偶然にも、技術的な興味も十分に満たされ、競争も少なく、将来的に世界中に大きく拡がる市場を発見することができて、やっとその成果が収穫できつつある今日この頃である。

1 年後、NTTドコモも BREW と呼ばれるプラットフォームを採用するようだ。

ハイテクベンチャーでは、テクノロジーの研究開発競争は熾烈である。経営戦略として、激しい戦いから逃れ、戦力の消耗を避けつつ、こっそりと隠れて、いつの間にか拠点を全て制覇する。いわばステルスな行動をとる作戦が功を奏する場合が多い。

  
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