2006 年 03 月 25 日 : 交換法則
集合 S に 2 項演算 "·" が定義されているとき、 S の任意の 2 元 a, b について
a・b = b・a
が成立するならば、この演算は交換法則を満たすという。このとき、演算は可換であるともいう。(Wikipedia より)
例えば、整数の足し算と掛け算については交換法則を満足するので、これらは可換である。
抽象的に考えれば、ビジネスの財務諸表に現れる全ての数字は、整数の足し算と掛け算をした結果に過ぎない。
すなわち、ビジネスのほとんどの出来事は可換であり、2 種類の事象 "a" と "b" があったとき、"a・b" と "b・a" のどちらを選択するかが経営者のセンスと言えるかもしれない。
例えば、3 つの事業を展開し、それぞれの事業で 1 億円の売上を上げて総売上 3 億円とする経営者もいれば、ひとつの事業に絞って総売上 3 億円とする経営者もいる。
或いは、100 名の社員を雇って、1 人あたり 1000 万円の売上で総売上 10 億円とする経営者もいれば、10 名の社員だけを雇って、1 人あたり 1 億円の売上で総売上 10 億円とする経営者もいる。
財務諸表の結論を眺めた瞬間は、どちらも結果は同じである。けれども、どちらの会社に未来が拓けているのかという問題意識が重要だろう。
2006 年 03 月 22 日 : 新しいビジネスの形
今週は、地球の裏側、ラテンアメリカのお客様とメールでコミュニケーションを取りつつ仕事を進めていたりする。
聴くところによると、ラテンアメリカではNOKIA 製の携帯電話が爆発的に普及しているという。
携帯電話のハードウェア仕様が日本で普及しているものと一部異なっている。
特殊な仕様をメールでヒアリングし、その仕様通り数学的にプログラミングし、完成したものをネット経由でお客様に配布する。
手元には現地で使われている携帯電話が無いので、お客様に協力を仰いでテストしていただく。
今朝、何ら問題なく無事に動作したというお客様からのメールが入っていた。
問題が発生してから解決までに要した時間は一週間もかかっていない。現地に赴く必要は全くない。
ネットの有り難さを実感する瞬間である。
今後、ワールドワイドなビジネスのスタイルは大きな変貌を遂げることであろう。
肝心なのは、その姿をどれくらいリアルにイメージできるかである。
2006 年 03 月 06 日 : アイディア
インターネットの時代は、何ごとも瞬時に検索できる。「何がイケテルのか?」が簡単に分かってしまう。
客観的に圧倒的 No.1 の地位を確保できるかどうかが、ビジネスをスムーズに展開する上で重要なファクターになる。
それでは、どうすればそれは実現可能となるのか、となってくる。
ソフィア・クレイドルというベンチャービジネスで戦略的な発想というものはこんな感じだった。
NTT ドコモとボーダーフォンの携帯電話向けアプリのプラットフォームはJava、KDDI の携帯電話向けアプリのプラットフォームは BREW である。2 種類のプラットフォームがある。
アプリを使う側も、アプリを提供する側も、プラットフォームは統一された方が良い。言葉にしても、世界中で日本語が使えたとしたらどんなに便利だろうということである。
それ故に、BREW と Java を統合するようなプラットフォーム的なイメージのある会社というのは人々のニーズがあると考えられる。
「BREW」だけ「Java」だけでは、Googleの検索エンジンで検索しても 1 ページ目にランキングされることは難しい。
けれども、「BREW」と「Java」を組み合わせて Google を検索すれば 221 万件中 6 位にランキングされていたりする。ニュースサイトなどを除けば、純粋なソフトウェア開発会社としては第 1 位にランキングされている。
これが意味するところは、Google のユーザーからすれば、「BREW」と「Java」という両方の技術に強い会社はソフィア・クレイドルであるという印象を与えることになるだろう。
「BREW」と「Java」の 2 つのキーワードに加えて、3 つ目のキーワードとして「圧縮」を 加えて Google を検索すると、1ページに表示されるのは全てソフィア・クレイドルの関連ページである。
「BREW」と「Java」の「圧縮」関連ビジネスはソフィア・クレイドルがほぼ独占しているということである。
「BREW」と「Java」というキーワードである程度のポジションを確保すれば、「圧縮」以外にも「GUI」、「開発環境」、「ツール」、「XML」…いろんなキーワードが考えられると思うが、そんなキーワードに事業領域を広げることによって安定的にビジネスを成長させることが可能となるだろう。
これは最初からそうなるように、努力して長い年月をかけて行動し積み重ねてきた結果であり一朝一夕に出来上がるものではない。
ネットビジネスで勝者となるためにはこのような戦略的な発想も重要だと思う。
2005 年 11 月 20 日 : 好きなことをするためには
自らの才能を活かして、得意なこと、好きなことに集中して一生を過ごせれば、人生は素晴らしく充実したものとなるだろう。でも資産家でもなければ生きていくためには収入が必要だ。
理想とするビジネスは、スタッフの才能が潜在能力も含めてフルに活きるという形態である。スタッフが会社で過ごす時間を有意義に思い、安心して生活できる財産を築けるようにすることは、社長のスタッフへの大きな責任と思う。
そのために売上を極大化し経費を極小化する。利益を最大にするビジネスモデルを創らなければならない。儲かるビジネスモデルを創るには少しは考えないといけない。楽して儲かるビジネスはその辺に転がってない。
ソフトウェアビジネスには、受託開発型と製品開発型という 2 つのビジネスの形態があって、それぞれに一長一短がある。(ソフィア・クレイドルのビジネスは製品開発型)
受託開発型ビジネスでは、顧客の仕様に合わせてソフトウェアを開発し納品して収益を得る。
利益が見込める案件を受注できれば経営は安定する。事業を拡大するためには多くの案件を処理する必要がある。人手と設備がそれに比例して増えてくる。製品開発と比較して、受託案件には創造性や独創性が要求される割合が低い。
開発したソフトウェアの特許や著作権などの知的所有権は顧客に帰属する。それらをストックしてビジネスを効率化する手法がとりにくい。
製品開発型ビジネスでは、自社のオリジナル製品であるソフトウェアを開発し顧客に販売して収益を得る。
自ら製品仕様を決め、開発計画を立案し、創造力と独創力を頼りにしてアウトプットする。そこに仕事に対する生き甲斐を見出せる。ソフトウェアは、一度開発すれば、全く同じものをインターネットで世界の人びとに何度も繰り返し販売できる。やり方次第では、事業拡大するのに人や設備を増やさずに儲かるビジネスに繋がる。
製品開発型ビジネスの場合、次の式が成立する。
利益 = 製品単価 × 販売本数 − 経費
ソフトウェアの場合、製品が完成するまではたくさんの研究開発費用がかかる。一旦完成して販売するとなると、仕入れは発生せず、人手も販売本数に比例して必要という訳でもない。経費は固定である。
ソフトウェアをネット配信すれば、製品を記録するメディアも運送も不要。販売本数を増やすことで、損益分岐点を越えた時点から利益は果てしなく伸びゆく。
しかし、製品開発型ビジネスは、音楽や映画などのビジネスと同じで駄作であれば売れない。たとえ素晴らしい作品であったとしても、売り方が悪ければ売れない。
ほとんどのソフトウェアは失敗作である。世の中には販売本数ゼロという製品がところ狭しと転がっている。成功する確率が極めて低いビジネスである。それはミュージシャン志望の人が成功するのと同様なのである。
製品が売れる原因や理由を慎重に検証してからでないと、手痛いしっぺ返しを食らってしまう。
製品を研究開発するために投資したとしても、製品が売れなければ資金を回収することはできない。何も考えずにするのは無謀な賭けというもの。ベンチャーは資金が限られている。売れなければ倒産である。売れる要因を作ってから製品開発に入るべきだろう。
それで重要なことは次の 3 つ。
- 製品ジャンルの将来性
- 売れる製品を創れる才能
- 製品の売り方
ニーズがなければ創っても製品は売れないし、売れる製品でも欠陥があれば売れない。イメージで買われてゆく製品も多い。
好きなことをするためには、何はともあれ、売れるように製品をうまくプロデュースしなければならないのである。
2005 年 11 月 14 日 : プロダクト ストラテジー
最終利用者が使うアプリケーションやサービスは具体的なイメージがつきやすい。アイデア次第ですぐに爆発的に売れる可能性を秘めている。それ故にビジネスを短期的に伸ばすには、アプリケーションやサービスの世界で勝負するのがベストである。
実際に使えるのでビジネスの感触をつかみやすい。ビジネスモデルが直感的にイメージできるから、多くの企業はアプリケーションやサービスの切り口からソフトウェアビジネスに参入する傾向が強い。
携帯電話向けソフト業界も例外ではない。ほぼ 100 % の企業がアプリケーションを開発するところから事業を展開している。アプリケーションの開発と保守の、生産性の向上を目指した開発ツールや開発環境の製品開発を専業している企業は、見つけるのが難しい。
要するに競合企業が存在しない世界である。このような"場"にこそベンチャーに相応しいビジネスチャンスが潜んでいたりする。
このビジネスは製品を研究開発して、マーケティングして、製品が売れ始めるまでに少なくとも 3 年の歳月が必要である。しかも製品が売れる保証はどこにもない。
アプリケーションやサービスの場合は、3 〜 6 ヶ月で結果は出る。大抵はある企業のニーズに応じて作られる。少なくともひとつは売れる可能性がある。従ってそれは堅実なビジネスモデルと言える。
最近は景気も回復し、IT を駆使した企業の情報化投資は活発に見受けられる。尚更のこと、アプリケーションやサービスのビジネスは、優秀な人材をできるだけ多く動員できれば儲かるようになっている。誰もがそこに集中しても何の疑問もない。
そんな背景があるから、少なくとも数年経たないと換金できないし、何の保証もないから誰も手掛けない、携帯電話ソフト向けの開発ツールや開発環境のビジネスにチャンスが自然と生まれてくる。
製造業において、製品を作るためのツールや設備は無くてはならないものである。生産性や製品の品質を向上させるためには必要不可欠といってよい。マーケットは必ず存在する。
開発ツールや開発環境はあらゆるアプリケーション開発に関わるものである。マーケットが顕在化した時、ポテンシャルは計り知れぬほど巨大だろう。
2005 年 11 月 06 日 : 収益の構造[海外へ]
ベンチャーといえども事業である以上、収益構造の戦略策定は経営者の役割として最も重要だと思う。
収益の式は至極シンプルで単に
[利益] = [売上] − [費用] ・・・ (1)
に過ぎないけれども、意外とこの式が頭から消去されている経営者も多いのではないだろうか。ソフィア・クレイドルというベンチャー事業を推進する際、収益に関するこの式が片時も意識から離れること無きようにしている。
利益はベンチャー事業の未来への扉、源泉でもある。利益によって未来が決まるだけに、どのように事業を展開すれば利益が最大化されるのかという思考プロセスは、いくら真剣にやったとしても十分とは言えない。
ソフィア・クレイドルでの収益構造の戦略をまとめてみよう。
国内と海外の 2 つにマーケットを分割すると、売上は次の式で表現される。
[売上] = [国内売上] + [海外売上] ・・・ (2)
(2) を (1) に代入すると、
[利益] = ( [国内売上] + [海外売上] )− [費用] ・・・ (3)
となる。(3) の右辺の項の順番を入れ替えると、
[利益] = ( [国内売上] − [費用] ) + [海外売上] ・・・ (4)
となる。[費用] は大雑把に研究開発費や販売管理費などを含めたすべての経費のことを指す。
ここで、研究開発した製品の販売を国内に留まらず、広く全世界にグローバル展開することを本命としている。何故ならば、国内のマーケットを 1 とすれば、海外のマーケットは 10 〜 20 と圧倒的に巨大だから。
更にいえば、国内は少子化が進みマーケット全体がシュリンクしているけれども、世界全体では人口は今も増加傾向にあるからだ。何十年後かの将来には国内 1 に対して、海外が 100 ということも十分に予測される。
海外マーケットの開拓は国内以上に難航を極めるかもしれない。しかし企業が生き残り永遠の繁栄を築くには、海外への展望無くしてそれはあり得ない。
さて、(4) の式で注目して欲しいのは、( [国内売上] − [費用] ) の部分である。この項が"プラスの値"になるように心掛けている。つまり、国内事業だけで利益を上げて海外事業は全て利益になる収益構造である。
製品販売はインターネット 1 本に絞り、効率的なグローバル展開のためにインターネットで完結する受注・出荷・決済システムも視野に入れている。
海外マーケットは国内の 10 倍以上ある。この方式にしたがって国内と同様に海外でも製品販売の仕組みが実現したとする。簡単な算数で 90 %を超える利益率の単純明快なビジネスモデルが出来上がることが分かる。
現在、全世界で携帯電話や携帯ゲーム機は数十億台以上普及している。たった 1 本のソフトでも、1 本あたり 10 円で世界中の全ての携帯端末に普及させれば、それだけで数百億円の利益が見込める。
利益を事業の未来への投資と考えるならば、それは資金調達という見方もできる。株式上場をしなくとも資金調達はできるということだ。株式公開する必要性もなくなる。