2004 年 12 月 11 日 : コンピューター細胞
ものが豊かに満ち溢れている 21 世紀。今ほど、創造性や独創性といったものが重視される時代はない。実際、何か新しいもので、凄く良い!と思うものしか受け入れられなくなってきている。
創造性や独創性といったものは何処からやってくるのだろうか?
何故か日本の学校では、最も必要とされる、能力や才能を伸ばすような教育や訓練がなされていない。与えれた問題をパーフェクトに解答できるか否かで、個人の評価が決まるシステムである。
大切なのはインビジブルな新しい問題に気付くことだ。
お年寄りから子供まで誰もが簡単に使えてしまう、Windows などのコンピューターのユーザーインターフェイスはどのようなきっかけで発明されたかご存知だろうか?
グラフィカルに表示されるので、コンピューターのユーザーインターフェイスを指して、グラフィカルユーザーインターフェイス、略して GUI と専門用語では呼ばれる。
GUI の基本的な原理を発明したのは、アラン・C・ケイ氏である。ジェームス・D・ワトソンが書いた『Molecular Biology of the Gene』という遺伝子生物学に関する書物からインスピレーションを得たという。
生物の仕組みは、想像できないくらい複雑である。しかし、細かくみてみると、細胞や遺伝子という極めてシンプルな単位に還元されることがわかる。
アラン・C・ケイ氏は、時の経過と共に複雑化してゆくコンピューターシステムへの問題に対して、生物が複雑性を対処する方法を応用することを思いついた。
ソフトウェアを、生物の細胞のような小さな独立した単位(モジュール)で作るような手法で解決できると考えたのだ。この単位(モジュール)のことを、コンピューター用語では「オブジェクト」と呼び、この考え方を「オブジェクト指向」と言ったりする。複雑な構造を持つ GUI も単純化され、短期間のうちに実現された。
本当に画期的な発想だった。
アラン・C・ケイ氏が遺伝子生物学からヒントを得なければ、コンピューターも今日のようには発展していなかった。
この事例から多くの示唆が得られるだろう。
「Creativity is just connecting things. (創造性とは物事を関連付けて考えることに他ならない)」。アップルコンピューターの創業者 スティーブ・ジョブズ氏は”WIRED”という雑誌で簡潔にこう発言している。
創造性や独創性があると言われる人は、他の人より様々な体験や経験、学習をして知識を得るとともに、そこで物事を深く感じとったり、洞察したり、新しい視点で見たりする習慣がある人なのではないだろうか。
簡単なことに思えるが、これができない人が多い。子供の頃からの型にはまった受験勉強が、創造性や独創性の阻害要因となっているのかもしれない。
追記:
創造的な仕事をするためのヒント:
Windows の GUI のような大規模で複雑なシステムをそのままダイレクトに実現しようとすれば、大半の人がその複雑性の壁に跳ね返されることになる。
アラン・C・ケイ氏が、複雑な生物の仕組みが遺伝子や細胞などの根元的には極めてシンプルなメカニズムからなることにヒントを得たように、複雑なものほど、シンプルに考える癖をつけるべきだろう。
ものごとを 100 倍簡単に考えることができれば、パフォーマンスは 100 倍となる。1 人の人間が普通の人の 100 倍以上の働きをするためのコツはここにある。
シンプルに、クールに思考する習慣が大切だと思う。