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2005 年 02 月 01 日 : オリジナリティ

受験勉強なんていう例外もあるのかもしれないが…。多くの人は学校を卒業するまでは比較的自由にのびのびと好きなことをして楽しく過ごす。しかし、社会人として一歩世の中に踏み出した、その瞬間から次第に笑顔が無くなってゆく人が多いのではないだろうか。

旧態依然とした大きな組織ほど融通が利かないものだ。その組織の都合に合わせて人が働いているという、本末転倒な矛盾がよく発生している。そんな事情があるから、仕事に生き甲斐を見出せず、現代社会にも完全燃焼できない、ニートやフリーターといった若者が増えているのかもしれない。

けれども充実した人生を送っている人がいるのも事実だ。そんな人たちはきっと自分の好きなこと、得意なことができる恵まれた環境にあるのだと思う。

そんな天職というものに就いて生涯にわたってずっと楽しく愉快に暮らせれば、どれほど素晴らしいことか。そんな希望を描いて、私はソフィア・クレイドルというベンチャーを起業した。だから、原則としてソフィア・クレイドルのスタッフたちは、好きなことや得意なことを仕事にする。そうすれば、きっとそこから生まれる商品やサービスは人の心に響くに違いない。これからの未来は「感性」というものが主役になる時代だ。これこそが、ソフィア・クレイドルという会社のレゾン・デートル、存在理由でもある。

実際のところ、それでちゃんと生活できるのかという疑問が生じるかもしれない。だが、経営者の責任は、それが確実に実現できるように、慎重でありながらも大胆に事業の領域を定めて計画し展開することではないだろうか。勿論、さまざまな障害や問題も発生するかもしれない。そんなことも楽しむようにできなければベンチャー起業は適わない。

いろんな壁を乗り越えるたびに、それだけ自由を獲得し、達成感や充実感といったものが増してゆく。自分自身の成長を実感し、確かめながら限られた貴重な人生を生きる。私たちはそんな生き方の価値感を大切にしている。

趣味でも、スポーツでも、仕事でも、どんなものでもよい。寝食を忘れて心の底から没頭できるものに打ち込んでいるときの自分を想像してみて欲しい。何の苦痛も時間の経過も努力しているとすら感じない。やりたくないことをやらされているときの対極の姿がそこにあるはずだ。

京セラという会社は 1959 年に稲盛和夫氏によって創業された。しかし、国内では、それ以来 40 年以上にわたって、京セラに匹敵する或いは凌駕するくらいの、偉大なベンチャーは誕生していないのではないだろうか。

その意味において、稲盛氏の経営哲学というものは極めて貴重であり、それを 21 世紀風にカスタマイズできれば、そのベンチャーは大いに発展できる余地があるのではないかと考えている。

いろいろと勉強した結果、その経営の神髄は経営の原点 12 ケ条にあると思った。この 12 か条の中で、最も注目すべきなのは第 4 条ではないだろうか。

第 4 条 誰にも負けない努力をする

この上なく含蓄のある言葉のように思える。多くのベンチャー起業家は全財産を己の事業に賭けるわけだから、当然、サラリーマンの何倍も、何十倍も、真剣に必死に努力する。しかし、現実問題として 10 年以内に 94 %のベンチャーは経営破綻しているのだ。この事実から分かるのは、絶対に成功するという、強靭な精神力や信念、気概を持って真摯に努力をしない限り、無限に成長しつづけるようなベンチャーを創り得ないということだろう。

本能的にごく自然な振る舞い、即ち、努力を努力と感じないレベルにまでに昇華させないと…。言うまでもなくこれは非常に厳しい事態だ。

しかし、自分の好きなこと、得意なことならば、いつでもどこでも、全く苦にならずにできるというものだ。自分の特性、或いは才能を潜在的なものまで含めて大いに発揮することもできよう。そんな風にしてごく自然に仕事ができるか否かが、大成功できるかどうかの分岐点になるような気がして仕方ない。