2005 年 02 月 13 日 : ブレークスルー
フェルマーの最終定理とは、
「3以上の自然数nについて,
(Xのn乗)+(Yのn乗)=(Zのn乗)
を満たす自然数(X,Y,Z)の組み合わせは存在しない」
という定理である。1637年頃、フランスの法律学者にしてアマチュアの数学者ピエール・ド・フェルマー氏が、ギリシア時代の数学者ディオファントス氏の「算術」という数論の本を読んでいた時に思いついた定理らしい。
それから350年以上の時を経て、この定理の証明は1995年5月にプリンストン大学のアンドリュー・ワイルズ氏によって初めて完璧に証明される。
フェルマーの最終定理は「ある楕円方程式のE系列は、どれかの保型形式のM系列である」という「谷山・志村予想(1955年9月)」という問題に帰着され、それを証明さえすれば良かった。アンドリュー・ワイルズ氏はこの「谷山・志村予想」を証明したと言うことになる。
世界的に有名な数学の定理の証明に、日本人が立派な貢献を果たしているのが感慨深いが、偉大なブレークスルーを生み出すヒントのようなものをこの証明の連鎖から学ぶことも可能である。
詳しくは知らないが、おそらく「谷山・志村予想」を発表した志村五郎氏と谷山豊氏の2人は、「フェルマーの最終定理」を証明するためにこれを発見したのではないと思う。しかし、偉大な「フェルマーの最終定理」を証明する上では必要不可欠なものであった。そのことを発見した(1984年)のはゲルハルト・フライ氏で、さらに「フェルマーの最終定理」が「谷山・志村予想」に帰着できる(1986年)ことを示したのはケン・リベット氏という人だったらしい。そして、1995年にアンドリュー・ワイルズ氏が「谷山・志村予想」を証明することでフェルマーの最終定理を証明した。
このように、ブレークスルーというものは、後から考えてみると、一見無関係に見えるもの同士の融合から生じているのかもしれない。いろんな色の絵の具の配合の仕方次第で、様々な美しい色を創り出すのとなんとなく似ている。それには配分や調整も必要と思う。
ハイテクベンチャーの場合は、その事業の根幹とも言えるテクノロジーのブレークスルーを生み出せるかか否かでその未来が決まってしまう性格を持っている。ブレークスルーというものは、単に長時間労働をしていれば生まれるものではなく、何らかのセンスとか感性といったものが何よりも大切になってくる。
その条件とは何であるかを、ハイテクベンチャーの経営者は常に自分に問わなければならないだろう。今のところ、ソフィア・クレイドルは、携帯電話向けのソフトウェア研究開発事業を展開している。まず第一に、所属するスタッフが自ら好んで、自分の研究開発テーマを見出すスタンスが重要ではないかと思っている。それから融合という意味においては、単にソフトウェアという分野だけにとどまらず、さまざまな分野の学問や芸術、遊びに興味を持っていることも大切と思う。実際に、仕事や技術の話だけでなく、映画や音楽やサイエンス・フィクションや世界の不思議な話なんかが飛び交っている。そして、いろんな文化背景をもった尊敬できるスタッフたちとの交流は、お互いに刺激的な新しい何かを見出せる可能性が高い。