ホーム > President Blog : Sophia Cradle Incorporated

Sophia Cradle IncorporatedPresident Blog

2005 年 01 月 04 日 : Entrepreneurship

2000 年を境として「モノ余り現象」が急激な勢いで進展している。そして、過去の歴史を振り返っても現代ほど個人が期待されている時代はないだろう。その個人に秘められた潜在的な才能や能力を、遺憾なく発揮できる場所、環境を提供できるかどうかで、その会社の未来が決定づけられるのではないだろうか。

こと細かく仕事の指示をすることは余りない。懇切丁寧に指図しないので、将来展望のようなものが見えないといって去る者もたまにいる。しかし、ソフィア・クレイドルでは、若きスタッフたちが、常識では考えられないほど、仕事を任せられ、自由闊達に活躍している。彼らの創作したソフトウェアは、数え切れないほど多くのアプリケーションで、実際に利用されている。

前途有望な若いスタッフたちの可能性を、できる限り伸ばそうとするならば、彼らが自ら機会を創り、自分の才能を切り拓いてゆくのがベストだと思う。これは私が起業した一つの理由でもある。

世間一般でいうところの大企業に勤務していたことがあった。その時に苦い経験をした。別に会社が悪いというのではなくて、私という存在がたまたま大企業で働くということに向いていなかっただけなのだが…。その会社自体は立派な会社だと今でも思っている。

大企業の場合、大きくなればなるほど、業務プロセスと個々の社員のミッションというものが細かくマニュアルに記載されていて、その範囲内で仕事をすることが求められる。範囲外の仕事をすると、業績評価の対象にもならないし、動こうにも制約が厳しくやりたいことがあまりできない。例外はあると思うが、だいたいそんな傾向にある。もしソフィア・クレイドルが大企業になった場合は、その例外の部類に属したいものだ。

コンピューターテクノロジーの進歩は早く、技術的な仕事をするのに、どうしても組織の定められたミッションを遂行するだけでは無理があって、その頃、やりたい仕事が全くできない日々が長く続いていた。組織の問題ではなく、そのミッションと私のやりたいことが合わなかったということだ。組織のルールに従えば、それで万事済むように思えるが、自分の才能や能力といったものを、潜在的なものまで含めて完全燃焼するくらいに頑張ることはできなかった。

ノーベル賞にしても、その評価の対象となるのは 20 代の頃の業績によるものが大半であるようだが、ソフトウェアのような仕事も、20 代の時にこそ世界を変革するような画期的な成果が生まれるものだ。

大企業にいた頃の職務内容は、既成概念のもとに作成された事業計画をトップダウンに展開し、その一部をある社員が受け持ち、それを計画通りうまくやれば、「A」や「SA」というような最上位の業績評価を受けることになる。成績が良いのは、ボーナスや昇給、昇格に繋がり、個人的な生活の上では満足できるかもしれないが、与えられた職務範囲外や計画外のことまでやれば、社会にもっと大きく貢献するような仕事ができた可能性も否めない。

そのような仕事ができる場を求めて、いろんなところを探したが、発見できずにいた。最終的には、今のように起業という手段で、ソフィア・クレイドルのスタッフたちと共に、私たちがやりたいことを自分たちが決めたルールで、自由に楽しく充実した人生を過ごそうとしている。

そんな経緯や背景があるので、スタッフたちには自己の潜在能力を思う存分に発揮してもらうため、できるだけ細かい指示はせずに、自由にのびのびと仕事をしてもらうように配慮している。だから、自ら計画し、ものごとを組み立てて仕事をすることに不得手な人にとっては働きにくい職場かもしれない。しかし、クリエイティブな人にとってはとても居心地の良い職場のようだ。彼らの素晴らしいアウトプットを見ていればそれがよく分かる。

例えば、29 歳の G 君は、あるフリーソフトの作者として日本全国にその名を轟かせるくらい、知る人ぞ知るような存在だ。H 君、Y 君の中高校の科学部の後輩でもある。つい最近、彼は、ある大手企業の中央研究所から依頼された PDA 向けのソフトウェアを、携帯電話に自動的に移植するシステムを1ヶ月足らずで完成させている。通常、このような仕事は、手作業で数ヶ月かけてプログラムを組みなおす、超面倒なかったるい作業だ。しかし、彼は、どんなソフトウェアでも自動的に携帯電話に移植できてしまうような汎用的なシステムとして、それを大変、エレガントに創った。

22 歳の E 君は、大学では理論物理学を学んでいる。プログラミングは趣味でやっているようだが、驚くほどアルゴリズムに強い。携帯電話で搭載されている CCD カメラを通して漢字を文字認識するようなシステムは、未だ発表されていないと思う。いま、彼はそのようなものを研究開発している。入社して間もないが、そのシステムはまもなくプロトタイプが完成する見込みで、とても楽しみだ。

(ある上場企業が同じようなシステムを開発している。しかし、それは文字のバリエーションの少ないアルファベットと数字、簡単な記号までしか認識できない。E君のシステムでは携帯電話で何千ものバリエーションのある漢字まで認識できる点が画期的だ。韓国語、中国語など多種多様な言語の文字認識にも汎用的に横展開できる凄い発明へと発展するかもしれない。ある意味でその未来にワクワク、ドキドキするような気分を抱かせてくれる。)

主に開発系スタッフについて述べてきたけれど、ソフィア・クレイドルでは、そんな風に、20 歳前後のスタッフたちが、一般企業のベテラン社員と遜色のないくらい素晴らしい成果をあげている。

しかも自律的に自ら機会を見つけ、自分で目標を設定している点がとても評価できると思う。そういう次第で、ようやくこのような日記を書く余裕を持てるようになってきた。