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2005 年 06 月 14 日 : 新しいかたち

昨年あたりからiPODを始めとするデジタルオーディオプレイヤーが爆発的に売れているらしい。それに連られるようにしてインターネットによる音楽配信もスタートしている。一曲あたりのダウンロードの価格は210円とのこと。インターネットによるソフトウェア配信時代の幕開けと謂えるかもしれない。

着うたフルなどの音楽配信ビジネス拡大を背景にして、この秋にはハードディスクが内蔵された携帯電話が東芝から発売される。USのモトローラからはiTune搭載携帯電話が間もなく発売されるとも聞く。隣の韓国ではハードディスク内蔵のMP3搭載携帯電話は既に販売されている。

デジカメがカメラ内蔵携帯電話に取って代わられたように、デジタルオーディオプレイヤーもそんな道筋を辿ってゆくのかもしれない。とにかくソフトウェア的なものをワイヤレスにダウンロードできるというのは便利というより他にない。

いま世界には20億台近くの携帯電話が日常生活における必需品として使われている。いまはインターネットに接続し、音楽やゲームなどいろんなソフトウェアをダウンロードできるタイプのものは世界マーケットではほんのごく僅かかもしれない。ほとんど全てのパソコンがインターネットに接続しているように、携帯電話がそのようなスタイルになるのはきっと時間の問題だろう。

一曲210円の音楽といえども、もし仮に世界中に点在する20億台全ての携帯電話にネット配信されるのならば、その曲だけで4200億円のマーケットが創造されたことになる。これがインターネット時代の一つの典型的なビジネスのモデルではないかと10年くらい前からずっと考えていた。

僅か5分程度に過ぎない一曲の音楽にも、極論すればそれだけ膨大なポテンシャルを有するということを意味するのだ。それでは、どうすればそのビジネスを具体的に顕在化させ得るのか?この問い掛けに対する答えが全てといっても良い。それは、その作品のパーフェクトさや、人間が生まれながらにして共通に持っている感性の何かに自ずとシンクロするようなものを創作できるかどうかではないだろうか。

ワイヤレスインターネットのビジネスを始めるにあたって、最も大切にした視点の一つは戦国時代の鉄砲に相当するものは何か?というような発想だった。携帯電話に組み込まれるソフトウエアも、その基本はプログラミング言語によって記述される。それは単純明快、明白な事実であるので、実はこの分野にこそ全人生を賭けるだけの価値のある巨大なビジネスの種が隠されていると考えた。

戦国時代は鉄砲の性能やその使い方の優劣によって勝負が決着していった。それと同じように、他と一線を画するアプリケーションが創造されるか否かは、企画力以外にプログラミング言語の優劣に大いに関わる問題であると捉えた。しかしながら、その言語自体が機能的にも品質的にも他を圧倒していない限り、無名のベンチャーにその資格はない。それ故に、機能と品質に関しては一切妥協することなく仕事に取り組んでいるつもりだ。

そのような地道な努力を継続する過程においてのみ、最高傑作と呼べるような作品は生まれるような気がしてならない。プログラミング言語とは簡単にいえばコンピューターに対する命令(言葉)の集まりともいえる。これに対して私たちが日常当たり前のように使っている自然言語は、人に対する言葉である。これら2種類の言語の相違を対比して、想像することでいろんなアイデアが浮かんでくる。この言語の相違についてはまた後に考察したい。

世界でビジネスするのであれば英語という言語は欠かせない存在になっている。一方では10億人以上という人口を有する中国語もその数からビジネスをする上で将来は重要な言語になるのではないだろうか。

そんな風にして考えると、いまソフィア・クレイドルでデザインしているプログラミング言語が、携帯電話やそのほかのワイヤレス機器のソフトウェアを開発するためのデファクトスタンダードになれるかどうか、それによって未来は全く異なる結末を迎えることになる。

数年先の未来では、携帯電話の中で動作する大半のソフトウェアはインターネット経由でダウンロードされる形式で販売されるだろう。一つ一つのソフトウェアの単価は安くとも、ダウンロードされる数が桁違いに巨大であること、そしてそれらのソフトウェアのほとんどがソフィア・クレイドルのデザインするプログラミング言語で記述されているというイメージがこの先5年後の私たちのビジョンであり、ビジネスのかたちである。