2005 年 04 月 26 日 : Style
これはベンチャー起業家として非常識な習慣の部類に入るのかもしれない。社外の人と会う機会が滅多にない。寧ろ今は極力会わないようにしている。営業のためにお客さまを訪問することもほとんどない。その分、未来に備えた戦略立案のための調査や研究、思索など、限られた貴重な時間をその一点に集中投入している。
サラリーマン時代、毎日のようにお客さまと顔を合わせるような仕事も経験した。100名を超える組織のマネージャーをしていたこともある。それなりに評価される業績を上げていたと思う。しかしそれは自分が真に望むスタイルではなかった。ある意味では多少無理をして自分を偽った人生を送っていた。
どちらかといえば、気心の知れた仲間たちと何処かに籠って、何か新しいことを企画したり構想したり創造するのが自分には合っている。結果的にそうする方がいいものが生まれる。そんなスタイルで思考することが自分のパフォーマンスを最大化してくれる。そのために起業したともいえるだろう。ベンチャー起業家といえば、多種多様な人々との多くの出会いの機会を大切にしてそれを糧にして成長するイメージが圧倒的に強いのではないだろうか。
私の場合、寧ろその逆で本当に親しく付き合える極少数の人たちの絆を大切にしてその分その絆を確かなものとすることで、他とは一線を画した成果を上げようとニッチな方向に努力している。さらに、多くの人と会わなければ、それだけ自分だけの時間を持てる。一人の人間が長く時間をかけてやった方が結果的には良いものが生じる仕事もありそうだ。最終目的はお客さまに喜ばれる新しい付加価値を創造するところにある。より良いもの創るところに今は精神を集中している。
常識というものからは、こんなベンチャー起業のやり方には間違いなく『×』印の烙印が押されるのであろう。しかし創業して3年以上経過するが、創業当初こそ売るべき商品が何もなくて苦戦したものの、このスタイルでベンチャーを経営していても売上と利益は増加基調にある。
ベンチャー起業家が出会いの機会を大切にすることを否定しているわけではない。またお分かりいただけると思うのだが、出会った個々の人々の価値を認めないのでもない。それは、仕事のスタイルの問題である。人付き合いが億劫なベンチャー起業家は、逆にそれを大きな強みに発想転換するような方向で戦略を練るのも一つの方法である。自分にあったスタイルが、自然な経営に繋がりそれが好循環をもたらしてくれるだろう。
勿論、今も閉ざされた環境ではなく、またもっと様々な人と会って刺激を受けるのが好きなスタッフがいれば、そのやり方も歓迎するべきと考えている。スタイルは人それぞれにあり、その人の個性を最大限に活かすようにして経営することが何よりも大切なポリシーであるように思う。