2004 年 12 月 25 日 : Sensibility
この 1 年、主力商品をリリースアップすることなく、大幅なバージョンアップに向けて、その研究開発にステルスに没頭していた。来年の上半期には衝撃的な新商品として発表できる目処がたった。ここまで来るのに 3 年かかった。長い道のりだった。いよいよ、ワク × 2 & ドキ × 2 な新年を迎えることになる。
ベンチャーでありながら 1 年間、VC や銀行に頼らず、秘密裏にスケール感の溢れる研究開発ができた。資金繰りで奔走したことは創業以来一度もない。第 1 弾の製品 SophiaCompress(Java) がヒットしたからだ。
ベンチャーは最初のきっかけを掴めればあとはとんとん拍子でいく。ささいなことで瓦解することもあるから、何ごとも慎重に行動することも肝心ではあるが。
いま構想している携帯電話向けソフトウェアのビジネスについてまとめてみる。
今後、携帯電話向けソフトウェアの業界は 2 つの大きな課題に直面することになると見通している。それらを解決できた会社のみが大きく飛躍できるだろう。
ひとつは人の感性に響くような、新しいユーザーインターフェイス。
もうひとつはムーアの法則に従って急激に進化し続ける携帯電話のハードウェアを活かす、大規模・複雑化するソフトウェアのための次世代フレームワーク。
人の「感性」に関しては、実際に様々なことを感じたり考えたりしている。その中で、以前読んだアメリカンフットボール業界で著名な鈴木智之氏の著書「勝利者 〜一流主義が人を育てる、勝つためのマネジメント〜」に興味深い話があった。
頂点に立てる者と立てない者を分けるのは何か?
それは「感性」を磨いているかどうかの差だ。
人には視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚という五感があり、「感性」とはこの五感でものごとを感じ取ること。
「感性」の豊かな人はこの五感が鋭い。
「感性」が鋭ければ鋭いほど、観察力、洞察力、予知能力、決断力、判断力、責任感、向上心、克己心など、あらゆる仕事で共通して必要となる能力が強化される。
一流の音楽、絵画、風景、料理など五感を使うものに触れて「感性」を磨くことはどんな分野であっても一流のアウトプットを生み出すための条件となる。
感性や感覚について、単純に言うと、感性というものに磨きをかけることが、より豊かな素晴らしい人生を送るための方法なのだ、と改めて確認した。
感性とは、単なる感受性ではなく、物事を心で感じ、つかみとることのできる能力という解釈で、心の働きのひとつであり、すべてに繋がる原点でもある、とされていたのがとても納得させられた。
「未来の携帯電話に相応しい新しいユーザーインターフェイスを創造すること」を一つの大きな使命としている。ユーザーインターフェイスというものは、人間の感覚に関わる部分であるだけに、利用者の生活や人生の幸せや豊かさに関わる問題に繋がるのではないだろうか。
微妙なデザインの差に過ぎないかもしれないけれど、デザインというものは、これからの時代、とても大切な要素である。携帯電話のユーザーインターフェイスのようなもののデザインに関して、私たちほどこだわっているソフトウェア開発会社は珍しい。
もうひとつの「大規模・複雑化するソフトウェアをどうやって扱うか」ということであるが、これは以前にもお話ししたように、生物のメタファーを用いるのがベストだ。
人の体は、どの一部をとってしても、人工的に創り出せないくらい複雑で神秘的な構造をしている。その原理は、遺伝子情報に従って、個々のシンプルな細胞がお互いに信号を送りあって自律的に共存し機能するというものである。
ソフトウェアが大規模・複雑化したとしても、生物の細胞のように、自律的で、シンプルな「オブジェクト」と呼ぶソフトウェアの基本単位が、お互いに「メッセージ」と呼ぶ信号を送りあって動作するようなシステムをシンプルに構成すれば良い。いわゆる、「オブジェクト指向」的なアプローチである。
BREW というプラットフォームで、私たちのようなアプローチでソフトウェアを開発し発表している会社は、世界広しといえども、ソフィア・クレイドルだけだ。
これまではインフラ創りで手一杯だった。
これからは、このインフラ上でオブジェクトたちが自律的にメッセージを送り合いながら世界中を駆け巡ることだろう。