2005 年 02 月 24 日 : イノベーション
過去に存在しなかった、「新しい価値」を創造し、それを世界マーケットに広めていくのは非常識なほどの困難が伴うものだと実感する。それが無名のベンチャーであれば尚更だ。だが偉大な遣り甲斐や人生最高の目標に向かって進むことができる。
全てオリジナルな発想で事を進めることも一つの手ではあるが、歴史に学ぶのも賢明な手段だと思う。創業の時に既に所有していたものの最近になって読破した良書がある。それはクレイトン・クリステンセン著の「イノベーションのジレンマ」だ。もっと早くに読んでおけば廻り道も少なかったと思える書物だった。
この本の中でも特に注目すべきところはこんなところにあると私は思った。それは世の中に受け入れられる「新しいテクノロジー」というものは、「機能性」⇒「信頼性」⇒「利便性」⇒「価格」といった尺度の順番でそれらが実際に採用されるという箇所だった。最初はその機能があるだけで売れる。しかし、次第に信頼性が求められ、使い勝手が良いものが支持され、最終的に値段(コストパフォーマンス)の勝負となる。
創業初期の頃は、慣れない営業トークでコストパフォーマンスを強調するような最悪のマーケティングを展開していた時期もあったので、挫折感を味わうことでマーケティング戦略の誤りを速やかに理解することができた。
例えば、SophiaFrameworkという製品は、米国クアルコム社のBREWというプラットフォーム上で、マルチウィンドウのGUIを提供する世界で唯一のソフトウェアだ。これをコストパフォーマンスでお客さまにプレゼンするのはいかなる天才であっても苦戦を強いられるだろう。
実際にこの製品を採用されるお客さまは、BREWでGUIでクールなアプリケーションを手間暇かけずにエンドユーザーに提供できそうだという理由で、コストパフォーマンスを精緻に評価せずに採用する場合が大半だった。これは新しいテクノロジーが有益であるのならば、先ずは突出した機能そのもので売れるという実際の証明と思う。
ソフィア・フレームワークも開発を始めてからまもなく3年が経過したが、この過程においてさまざまな先進的アプリケーションの開発をお客さまと共に推進してきた。そして、実際の現場からソフィア・フレームワークに不足している機能や改善すべき点、不具合、スピードやサイズに対する要求などいろんなマーケットニーズを次のバージョンに吸収する努力を欠かさずに継続した。
結果として、ソフィア・フレームワークの信頼性というものが時間の経過と共に格段に飛躍したのだった。機能だけで売れるフェーズが過ぎれば、次は信頼性の基準でその製品は売れてゆく。だからこそ、機能だけで購入されている間に、信頼性を高める努力を怠ってはならない。できれば、使い勝手といったような利便性や低価格で提供するための段取りまで含め、先回りして戦略的に事業を展開できればベストであろう。