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2005 年 04 月 18 日 : Core concept -3-

企業の利益というものは社会、顧客、社員、会社等など、さまざまな存在の成長や進歩の源泉となりうる。重要なポイントは、それが短期ではなく長期的に継続して増加傾向にあった方が良いということだ。時を経るにつれ確実に成長しているのを実感するのは働く側の立場として達成感がある。顧客の立場としても、継続して以前の製品の性能を上回る新製品を手にするのは一つの大きな喜びであろう。

問題はどうやって長く継続して利益を出し、しかも常に増やし続けるかというところにある。短期的に利益を出すのはテクニックでなんとかなりそうだ。しかし利益が単調増加するような繁栄を築くには根本的な原理や原則となるものがその企業に備わっていないと難しいのではないだろうか、という風に考える。

単純に考えれば、粗利益率の高い商品を扱い、それをたくさん売れば利益の額は大きくなる。しかも効率的な仕組みを導入すれば社員一人当たりの利益の数字も大きくなろう。大事なのはどうやって粗利益率が高く、しかも売れる商品を仕入れるかという点であろう。ライセンシングビジネスは確かに粗利益率は高い。けれども、それを採用する人がいなければその価値は事実上ゼロである。「確実に売れる」という前提条件が必要なのだ。

「フォーカル・ポイント」という言葉がある。日本語では「焦点」という意味だ。太陽光線を虫眼鏡で焦点を合わせれば紙は燃え始める。フォーカル・ポイントにはそんな偉大な力が隠されている。一般に人間というものは弱い生き物なので、なかなか一つに絞り切れずに人生を無為に送りがちだ。寝食を忘れて何かあることにひたすら情熱を傾け、ライフワークともいえる仕事に取り組んでいる人は少数派なのではないだろうか。

不思議なもので、真剣かつ客観的に世界を眺めていると、その中に隠された本質的なある一点を必ず発見できる。私たちのようなベンチャーはそのポイントにフォーカル・ポイントを合わせ集中し、その一点にだけ全精力を投入し、結果的に「傑作」といえる新商品を創り上げる。

その商品が売れるか否かは、その商品を創ろうと思った切欠や創る過程における姿勢に全てはかかっているといってもよい。どれくらいの思いをその商品に抱けるかで全てが決まるのだ。だからこそ、大切になってくるのは、その商品が本当に社会的に価値があるものかということ、それから何よりも私たちの才能が十分に発揮され、面白く楽しんでその仕事に取り組めるかという点に尽きるであろう。

あわよくば世界を変革するような歴史的な出来事に遭遇し、それを自らの力で成し遂げることに喜びを見出せることができそうなのであれば、きっと売れる商品は創れる。そんな信念がベンチャー経営では外せないポイントなのではないだろうか。それこそが長年にわたるそのベンチャーの成長の源になるような気がする。

実際にハイテクベンチャーの経営していた分かってきたことが一つある。それはある新商品を開発する時、そのスケールが大きければ大きいほど、その開発やマーケティングの過程でそれだけ大きな難関が待ち構えているということだ。ベンチャーの場合、人材や資金、設備は限られる。大きなプロジェクトに取り組もうとすれば、最悪の事態に備えて予めいろんな手を打つ段取りが必要だ。折角いいところまで進んでいるのに、開発資金が尽きて終わりになるベンチャーは数え切れないくらいある。

この問題に対する、私なりに考えた対策は創業期から多少なりとも利益をあげるような企業体質にし、その利益をフラグシップともいえる新商品の研究開発に投入するという経営方針である。そうすれば、外部から資金調達をする必要はないので、他人の思惑に左右されず、あらゆる面で落ち着いて自由度のある意思決定ができる。これが売れる新商品の研究開発に向けてポジティブフィードバック的な効果を及ぼす。

このやり方の場合、肝心の商品が出来上がるまでに多少時間がかかり、その分業績の曲線が右にずれることになる。しかし、その新商品が本当に売れるならば寧ろそのように取り組むべきだと思う。何故ならば、たとえその新商品が無かったにしても利益は出ているわけで、最悪その新商品の全く売れなくとも経営上問題は全くない。幸運にも売れた場合は、ライセンシングビジネスであるため、売れた分はすべて利益になる。

新規性のあるハイテクベンチャーの新商品というものは発売と同時に爆発初的に売れるものは稀で少数派だ。一般にそれが社会的に意義のあるものであるならば、ある程度の時間を経て徐々に売れていき、クリティカルマスというポイントを超えた時点で爆発的に普及する傾向にある。それはその商品の性質によって異なるだろうが、そのかたちはどんな分野にでも共通するものだと思う。時間軸上に展開される、時代の潮流をどうやって見極めるかが勝負の分かれ目となろう。

経営者は勝負すべき商品とタイミングを自由に取捨選択できる。未来の空間において、いろんな新商品について売れるピークポイントを考えてみる。現有のスタッフで経営的に現業で黒字を維持しながらそのピークに合わせて研究開発し、マーケティングできるならばその新商品を選択すればよい。そのようにすれば成長は確実に見込める。もしその新商品が当たれば、ライセンスビジネスは粗利益利は100%なのだから高収益性を加速しながら急成長をも期待できるかもしれない。

(つづく)