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2005 年 04 月 19 日 : Core concept -4-

既に上場し成功しているネット系ITベンチャーの多くは今から10年ほど前に創業した。それはWindows95が発売された頃で昨今のインターネット時代の夜明け前後といえるかもしれない。当時インターネットはダイヤルアップ接続で使うのが普通で、現在のように常時接続で利用していたのは大企業か大学くらいだった。

重要なポイントは、1995年当時に10年後には今日のようなかたちでインターネットが当たり前のように普及するという確信に満ちた明晰なビジョンを描き得たベンチャーのみが成長し、稀有な存在として生き残り隆盛を極めたという点にあるだろう。今からこの世界でベンチャー起業をしようとしてもその参入障壁は高く、視点を180度切り替えなければ成功は覚束ない。逆にいえば、10年前なら何をしても今より成功する確率は格段に高かった。だからこそ、ベンチャー起業家は時代の先を読む才能や能力を常に磨く訓練が欠かせない。ベンチャー起業家にとってタイミングを見計らった先見力といったような慧眼は最も欠かせない資質の一つといえよう。

最近、経営破綻若しくは経営が行き詰まっている、かつての超優良企業が数多く見受けられる。10年前なら想像すらできなかった出来事や事件が現実に次々と連続して発生している。そんなつもりで入社したわけでないのに、想いもしない最悪の境遇の中で時代の波に飲み込まれそうな人が増えてきている。新しい時代に向かっていま世の中は変革を遂げつつある。

人は未来の世界を肉眼で確認できない。どうしても自分の目でいま確かめられる材料だけでものごとを判断しがちだ。学校で未来へのビジョンを描くような教育や訓練を受けてこなかったからだろうか。そんな才能や能力に長けた人が極端に少ない。それ故、想像力と行動力さえあればそれを活かそうとするところに新たなビジネスチャンスを見出せそうだ。もしベンチャー起業というニッチビジネスが成功するならば、理由の一つはそんなところにあるのではないだろうか。

ソフィア・クレイドルが創業したのは2002年2月。その当時、ベンチャー起業を成功させるために最も考えたのは10年後のビジョンであった。ずっとコンピューターに関連する業界で働いていたので、この業界が時間軸を切り口にしてどのように姿を変化させてゆくのかについてルーペで覗くようにして深く思索に耽った。

その結果、10年後に極めて有望だと自信と確信を持って言えるベンチャービジネスを一つ発掘できた。それは、モバイル機器を対象としたソフトウエアのインフラ或いはプラットフォームに関連する事業である。その当時、携帯電話や無線LAN、ブルートゥースを始めとして、ワイヤレスコミュニケーションの環境が整備されつつあった。年を追う毎に通信速度も向上し、しかも利用料金も急激に低下してゆく傾向にあった。ワイヤレスコミュニケーションそのものが水道、電気のようなインフラとして機能する兆しがあった。

ITの世界において、ハードウェアとソフトウェアは車の両輪のように表裏一体のものである。いくら機能や性能が充実していても、どちらか一方が欠けると全く使い物にならない。当時、ハードウェア的なインフラは整備されつつあった。しかし依然としてソフトウェアの面はほとんど手付かずの状態だった。謂わば未開の荒野だった。私たちのようなベンチャーでも入り込める隙間は確かに存在した。だからそのチャンスを逃さないように最善の努力をした。

創業間もないベンチャーである以上、人材、資金、設備は限られる。それだけに、事業領域の選択だけは絶対に失敗は許されない。そのためには、その事業が社会から必然的に要請されるであろう明確な理由を探すのが何よりも先決だった。それはソフィア・クレイドルというベンチャー経営の拠り所にも成り得る。そのロジックに従ってベンチャーは成長してゆくと考えた。孫子で謂うところの「百戦百勝」をそんな思いで実現しようと目論んだ。

ソフィア・クレイドルのビジネス的な発想の原点は「パソコンが携帯電話サイズに収まったらどうなるだろうか?」という問い掛けにある。外部の人には分かり易いので、携帯電話向けのソフトウェアを開発している会社と言うことにしていつも自社のことを紹介している。正確に言えば、10年後にはパソコンが携帯電話サイズになることを視野に入れて、そのために必要となるであろう、ソフトウェアのプラットフォームを研究開発しているドリームチームがソフィア・クレイドルなのだ。

いまは有線で繋がっているディスプレイやキーボード、マウス、ハードディスクも永遠にそうである必要性は全くない。必ずワイヤレスで接続される時代が来ると考えた。理由は単純で、その方が圧倒的に便利だからである。パソコンも携帯電話サイズになって困ることは、盗難や置忘れなどセキュリティ的な問題くらいしかない。自分のコンピューティング環境を手軽に持ち運びできる。こんな便利な世界はこれにまでになかった。必ず人びとから必要とされる。そんな風に推論して、この事業の未来における有望性を期待から確信へと変化させた。

パソコンが携帯電話サイズで手軽に自由に持ち運びできる、便利なモノになれば、それに応じて利用するための多種多様なアプリケーションが世の中からいままで以上に求められるであろう。その時、必須となるのはそういったアプリケーションが簡単かつ迅速に開発できるソフトウェアプラットフォームではないだろうか。そんな未来へのビジョンを起点として私たちは夢を次第に膨らませていった。

(つづく)