2005 年 04 月 06 日 : Imaginal
ソフィア・クレイドルのビジネスはミュージシャンの世界に近いといえる。直感と洞察により新たなソフトウェアをゼロからデザインし創作する。そしてそのソフトウェアはソフィア・クレイドルを起点にして世界中のワイヤレスな空間へとひろがり多種多様なモバイル機器に配信される、というビジョンを現実の世界に写像している。いろんなお客さまからのリクエストに応じるモデルではない。
そういうわけで、いまミュージックシーンがどんな風に動いているのかいつも興味津々で見入ってしまう。多くの人びとに親しまれている音楽にハズレはなく、アタリの曲はヒットすべくしてヒットしているような気がする。さらにモーツァルトのCDが現在数千円で購入できるからといって、ではそのソフトの価値や演奏家や、モーツァルト自身の価値がそれだけとは決して単純に計れないところも似ている。
退路を断ってベンチャーをするからには、奇蹟が必然になるようなメカニズムを予め組み込むことも重要である。これも音楽の世界から学べそうだ。9割以上が失敗するというのがベンチャーの宿命であるようにいわれるのはこんなところにあるよう感じる。それは、永き時間軸と広き空間軸から構成される「場」の中で展開されゆく理想郷の景色全体を色彩豊かに鮮明に思い描いた上で、そこへ至る道筋を明確化しつつ実際にその道を歩む人が少ないからではないだろうか。
音楽の場合、実にさまざま要素から構成される。ボーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボード、ピアノ、作詞、作曲、レコーディング、プロデュース等など。爆発的にヒットしている曲ではすべての要素が偶然にも調和を保ってパーフェクトになっているように見えて、実は、必然的にそうなっているのだと思う。一発屋というのもあるようだが、長らく第一線で活躍しているミュージシャンには、偶然という言葉は存在しないように思えてくる。
まるで生き物のように神秘的なそのかたちを頭の中に空想し眺めていると、ヒットするような曲にはあらゆる要素に超一流といったものが感じとれる。そのグループでしか演奏できない音楽に、必要な各要素がベストにパフォーマンスされるような最適化プロセスが働いているような気がする。その根本にあるのはそれを演じているその人の使命と役割だろう。その人が、そのバンド、グループがまさにその曲を演奏するからこそ、多くの人びとから親しまれる素晴らしい音楽が生まれる。
私たちは、それと同じようなことをソフィア・クレイドルというベンチャーという枠組みの中で実現しようとしている。シナリオ通り、必然といえるほどに事が運ぶようにするにはどうすべきか。これが肝心なところだが、この時一番大切な考え方は、まずはミュージシャンがグループを結成する時と同じように、その音楽を構成するボーカルやギター、ベース、ドラムを担当するいろいろな人的な要素を、妥協することなく集めるところからスタートするように思う。
イメージした構想をこのメンバーでなら為しえるのかどうかを、真剣に自問自答しながらグループを結成する。最初は一人だけのグループかもしれないが、思いが強ければ時の経過と共に運命の偶然や必然といったものに作用されて、いつしか自分たちにしか為しえないものを創造するためのグループが自然発生する。
いろんなミュージシャンの曲にそれぞれのカラーがあるように、グループが結成されれば、そのグループにしか為しえない新たな価値の継続的創作が求められる。最終的には売れるかどうかで、そのグループが存続できるか否かが左右されてしまう。従って、時代の潮流に揉まれながらも、トレンドを感じてあるいはあえて逆らいながら、それぞれのメンバーの才能を良き方向に顕在化させ、さらにそれを無限に伸ばしてゆく仕組みを発見し実践することが大切になってくる。