2005 年 08 月 11 日 : Ocean
「行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しく止まる事なし。世の中にある人と住家と、またかくの如し」
鴨長明による「方丈記」の有名な冒頭の一節である。オフィスから徒歩で数分のところに世界文化遺産として有名な下鴨神社がある。その近くを加茂川と高野川が合流し鴨川として北から南へと走っている。調べてみると、鴨長明は下鴨神社の神官の次男だったらしい。著名な文章は鴨川が合流する辺りの風景を眺めながら想い浮かべたものかもしれない。
いつも眺めている川は同じだけれど、その川を流れる水は決しては同じではないという意味らしい。何でも良いのだけれど、会社でもその存在そのものは何ら変わらないのに、それを構成するスタッフは時間の経過と共に変化する様がこんな感じである。
新しい世界を期待してソフィア・クレイドルにジョインする者もいるし、たまたま通過するものもいる。スタッフ自身も物理的に精神的に時の移ろいとともに確実に変化している。人それぞれに個人的な思いがあり、それを正確に捉えようとすれば正しく複雑系の科学なのかもしれない。複雑系の学問では、個々の構成要素をバラバラに分解しようとしても逆にますます複雑性を増すばかりで理解が困難になるが、複雑なものも全体の概念として把握に努めればその実像が明らかになると言われている。
会社についても複雑系的な発想でものごとを考えるのが良いのかもしれない。
大切なのはきっと創業以来存続している「ソフィア・クレイドル」という川のような存在が全体として何処に向かって流れているかではないだろうか。川の水が流れの方向に進んでいくように、会社のスタッフもその方向に向かって進むように。肝心なのはその川の流れの行き先は一体何処なのかという一点に集約されるように思う。
そんな事情もあって「方丈記」のこの文章は私にとってお気に入りで、ものごとの発想の原点でもある文章なのだ。名前に川のつく者も多くこれがまったくの偶然であるのも不思議な事ではある。京都には海がない。けれどもセルビアからはるばるやって来た外国人スタッフが活躍している。そのせいか流れの先にある海に共に憧れを抱いている。