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2005 年 11 月 09 日 : ポジショニング

生物と生物、また生物とそれを取り巻く環境との間には切っても切れない複雑な構造がある。生物と環境の間にある相互作用を研究する学問が生態学である。

生態学で興味深いことがいくつかある。縄張りがあって生物の個体はほぼ等間隔で均等に分布すること。それから、食べ物が豊富にあり生育に適した地では、最初は個体の数が指数関数的に増加する。次第に伸びは緩やかになる。やがて定常状態になりしばらくその状態が続く。そして死亡率が出生率を上回り始め個体数は徐々に減少してゆくという。

企業活動でも生態学の智慧を活かせそうな気がする。ベンチャーを起業する場合、先ず最初に考えるべき事は自分の居場所、すなわちポジションである。生物が縄張りで自分の住処を確保するのと同じく、ベンチャーでもそれに相当する"場"がなければ直ぐに消滅してしまうであろう。

ソフィア・クレイドルはソフトウェア業界に属する企業である。その中での自社のベンチャー事業のポジションを明確にすることが生存のためには必須だと最初に考えた。

それではポジショニングをどのようにして行ったのか?

先ずソフトウェア業界を 2 次元平面のマップとして捉えた。横軸は受託開発、人材派遣、アプリ開発、システムソフト、開発ツール・・・ などの[仕事]の軸である。縦軸は 汎用機、ワークステーション、サーバー、PC、携帯端末 ・・・ などの[コンピューター]の軸である。

その 2 次元平面の中で横軸が"開発ツール"、縦軸が"携帯端末"という位置にソフィア・クレイドルというベンチャー事業をポジショニングした。何故ならば、その事業ドメインを手掛けている企業が存在せず、横軸が"開発ツール"で縦軸が"携帯端末"以外である事業領域は既に巨大なマーケットとして成熟していたからである。

将来的には"開発ツール"×"携帯端末"の事業領域も巨大なマーケットに成長するのは自明に思えた。しかもどの企業も手掛けていないのである。この領域で勝負を挑んで事業を展開する企業を発見するのはいまだに難しい。それはマーケットは小さいけれども競争が無くて、シェア 100 % を意味する。

やがてこの領域も巨大なマーケットへと育つ急成長期フェーズに突入するに違いない。そうなった時、生態学の示唆するところは、この領域に多数の競合企業が参入してくるだろうという予測である。未来に備えて、自分たちのポジションをより明確にする姿勢は今後も欠かせないと思う。