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2004 年 11 月 19 日 : 売れる商品を創る

誰もが会社設立に必要な資本金を準備し、決められた手順で処理さえすれば、代表取締役社長という地位に就くことができる。けれども、この状態を永続させることは至難の業である。ほとんどの会社は設立数年後に消え去っている。なぜ消滅してしまうのか?理由は簡単である。サービスや商品が売れないから資金が底を尽き、倒産もしくは廃業に至るのだ。

末永く存続するような会社を設立しようとすれば、どうやって売れる商品やサービスを創るのか?システムを予め真剣に考えておくべきだろう。

創造力や個性を伸ばすような教育が全くといってよいほどなされていない。そのため、新たなるものを創る、ユニークなものを考案するのが苦手な人が多い。ワクワク、ドキドキするような何か面白そうなことを創造する経験や習慣になかなか巡り合えない。

何も考えずに起業すれば、苦戦が予想される。自分自身の創造性を養うような努力をすると成功する道は一気に拓ける。

売れる商品が必然的に生まれる方法論はないだろうか考えることが多かった。何故なら会社が自ずと存続する結果に繋がるからだ。

「原因」があるから「結果」がある。商品が売れる「原因」を見つけることができれば良い。

ソフィア・クレイドルは携帯アプリに必要なソフトウェアテクノロジーを提供する会社である。日本人の誰もが知っているような有名な携帯ゲーム着メロなどでも利用されている。

最近、コンテンツ以外に携帯電話向けの地図やグループウェア、金融決済、認証などのような生活やビジネスに密着した携帯アプリにも応用されている。

無意識のうちにコンピューターが生活の中で使われている状態を指して、ユビキタスコンピューティングという。ソフィア・クレイドルはユビキタスコンピューティングを現実としている会社なのである。

過去があって、現在があり、そして未来がある。未来は過去から現在へと続く軌跡の延長線上にあるといえる。現在の傾きと与えられた初期値から微分方程式を解くことで未来を予測しようとする発想は「売れる商品を創る」ためには大切だ。

手掛ける事業は携帯電話のソフトウェアテクノロジーである。売れる商品を探し出すために、先ず最初に考えたのは携帯電話で最も使う、或いは使われてきたアプリケーションは何かということ。パレートの法則の応用である。経営資源に限りがあるベンチャーにとって、この法則の重要性、偉大さは語り尽くせない。

ダントツに最もよく活用されている携帯アプリは「電話帳」である。「電話帳」というアプリケーションは未来も確実に存続する。その過程で生物のように進化が起こるであろう。どのような進化を辿るのかというイメージに、ビジネスチャンスが隠されている。

何事もそうかもしれないが、進化した携帯電話の未来を的確に予測する上で、似たような他の分野の歴史や事実を研究することはヒントになる。今後十年で、半導体集積技術や無線通信技術の革新により、パソコンも携帯電話に収まるサイズになると予測した。そこから、学べることは現在パソコンにあるようなアプリケーションを携帯電話向けに変形させることが確実なビジネスになるのではないかということだ。

携帯電話の場合、未来の電話帳は、パソコンでいえば、インスタントメッセンジャーのようなものに発展し、単に、電話番号を記録するだけでなく、相手の状態が分かり、メールや電話、メッセンジャー、ブログなど様々な手段で適切にコミュニケーションがとれるようになるだろう。

2002 年 2 月の創業と同時に、未来の電話帳の研究開発プロジェクトをスタートさせた。研究開発型ベンチャーでよく押さえておかないといけないことは研究開発資金をどうやって捻出するかだ。

ベンチャーキャピタルなどの外部の投資家のようなものに頼ることも一つの方法だろう。しかし、できれば自前でやりくりする方が良いと思った。なぜなら、株式公開のような余計なことを一切意識せずに、研究開発をマイペースで進めることができるからだ。独創的な研究開発を成功させるためには「マイペースでやれる環境」はものすごく重要だ。主観的には確実に成功すると信じているのだから、その方が想像を絶するくらい努力した社員らに大きく報いることも資本政策上とりやすい。社員の年齢構成も 19 〜 26 歳と若いので、何も急いで焦って株式公開でなくとも良いと考えた。

研究開発資金を捻出する際に思いついたアイデアがある。未来の電話帳なるものを構成するために必須となる要素技術を商品化し、販売するというアイデアだ。創業当時は携帯電話のアプリケーション開発環境は、コロンブスがアメリカ大陸を発見したときのように、全くの未開拓地帯だった。当時はどんなものでも創れば商品になりうるチャンスがあった。

最初に手掛けたのが、携帯電話向けのプログラム圧縮技術。大学生の頃、Z80 という CPU が搭載されたマイコン用のプログラムの構造を解析して、そのプログラムを変換し小さくする仕事で、お客さまから大変感謝され、儲けたことがあった。もう 20 年近く前の話だ。その当時のマイコン(今で言うパソコン)は主記憶が 64 キロバイトしかなくメモリの制約は大きな問題だった。その時の問題が携帯電話でも発生していたのである。

不思議なことに、携帯電話向けにこの問題に取り組んで製品化までしている会社は世界中どこを探しても無かった。今は携帯電話だけかもしれないが、将来的には情報家電も含め、膨大なチャンスがあると確信し、このソフトウェア技術を研究開発し、製品化した。競合製品が無いため、比較的順調に、大手ゲーム会社、大手コンテンツプロバイダ、大手電機メーカーなどに導入が進んでいる。勿論、このソフトウェア技術も世界中で利用可能なように開発した。現在、国内市場だけの販売である。世界市場進出に向けて、これから先が楽しみだ。

その他にも、これと同じような発想で、携帯電話向けにパソコンで言えば、Windows のようなもの、アプリケーション開発ライブラリのようなものも研究開発し、製品化している。競合が全く存在しないため、市場開拓は自力でやらざるを得ず、とても大変ではあるが、お蔭様で時間の経過と共に売上もぐんぐんと伸びている。