2005 年 10 月 10 日 : ハイテクベンチャー
「マイクロソフトシークレット―勝ち続ける驚異の経営」(日本経済新聞社)に、マイクロソフト( 1975 年創業)の 1975 年から 1995 年までの成長の軌跡が記載されている。その中でも注目すべきなのが最初の 5 年間のデータではないかと思う。最初の 3 年間の数字を見る限り、ごく普通の零細中小ベンチャー企業に過ぎない。しかしマイクロソフトはいまや押しも押されもせぬ時価総額世界 No. 1 の大企業である。
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年度(年) 売上高(千ドル) 伸び率(%) 従業員数(人)
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1975 16 − 3
1976 22 38 7
1977 382 636 9
1979 1,356 256 13
1980 2,390 76 28
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※ 売上の伸びと比較して、従業員数の伸びは著しく低い。
一般に、マイクロソフト 、オラクル、アップルなどハイテクベンチャーの場合、ひとつの製品の研究開発に 18ヶ月、そしてマーケティングに 18ヶ月、少なくとも計 36ヶ月の時間がかかるといわれる。マイクロソフトもその例に漏れず、創業 4 年目以降、破竹の勢いで業績を伸ばしていった。
ハイテクベンチャーの場合、事業の着想を得てからそれが現実のものとなるまでに、少なくとも 36ヶ月の期間が必要であると想定して起業するのが重要なポイントだと思う。気長な話かもしれない。ネット系の IT ベンチャーであれば 36ヶ月もあれば株式上場すら不可能な話ではない。しかしハイテクベンチャーでは 36ヶ月経って初めてそれが事業として成立するか否かが実証されるといった状況なのである。
しかも 36ヶ月経つまでに事業が立ち行かなくなるベンチャーも多い。また持ちこたえたとしても、飛躍的に成功を遂げるものは指折り数えるほど珍しい存在でしかない。一方、ネット系 IT ベンチャーの場合、結果は数ヶ月で出るものも多く 12ヶ月もあれば概ね結果は見えてくる。創業して 36ヶ月以内の株式上場も全然夢ではない。
そんな背景もあってか、世界マーケットを視野に入れたハイテクベンチャーを志す起業家が周囲に極めて少ないと感じる。時間を要し成功率も低いのであればそれが最大の参入障壁になるのだろうか。現在の事業を創めてまもなく 4 年になろうとしているがいまだにソフィア・クレイドルと競合するベンチャー企業は現れていない。
ネット系 IT ベンチャーを創めて手っ取り早く稼ぐのもひとつの手段であり、実際のところその道の選択もあり得た。敢えてその道を選ばなかった。その理由ははっきりしている。客観的な成功確率は低く時間はかかるかもしれない。けれども自分の思いが実現したとすれば、マイクロソフトのごとくテクノロジーは世界中にひろく影響を及ぼすことができるだろう。それは人生において一度経験できるかどうかといえるほどのワクワク&ドキドキ感なんだと思う。