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2005 年 10 月 27 日 : 無→有

ベンチャーとは、無から有を生み出すもの、という印象がある。それでは、どうすれば無から有を生み出すことができるのかという疑問が起こる。無から有への移り変わり。実は、それがささやかなものであったとしても偉大な出来事なのだ。

1999 年 2 月。携帯電話がネットに接続されるようになった。それは携帯電話を一種のコンピューターと見なせる瞬間と言えた。歴史のそういう瞬間をどんな風に解釈して行動するかで未来は劇的に変化する。

1990 年代に入り、"ダウンサイジング"というキーワードがコンピューター業界で流行語になっていた。IBMの大型コンピューターで処理されるプログラムはパソコンのようなコンピューターでも実現可能であることを指して"ダウンサイジング"と呼んでいた。

だから1999 年 2 月を、パソコンから携帯電話へのいわば"ダウンサイジング"の変曲点として位置付け、新たなビジネスチャンスを見出そうとしたのだった。その時点では一般に利用可能な携帯電話用ソフトの開発環境は何も公開されていなかったが、いろんなシーンの想像はできた。

様々なシナリオを思い描きつつステップバイステップの歩調で現在に至る未来への道筋を明確化していった。そこで重要な発想は、"何故パソコンが大型コンピューターにとって変わるほどの発展を遂げたのか?"という問いかけにある。

パソコンもマイコンと呼ばれていた時代は、プログラミングするための道具に乏しく、ハード自体の性能にも難点がありその進歩はゆったりとしたものであった。しかし 1980 年代の 10 年間でその形勢は一気に逆転するほどまでになった。

それは、ハードの進化と共に安価で速いコンピューターが入手できるようになり、世界中のプログラマーが便利で使いやすいソフトを開発したことが最大の要因ではなかっただろうか。

今、携帯電話はパソコンの 10 分の 1 以下の価格で手に入れることができる。表現を変えればそれくらい安い持ち運びのできるコンピューターとも言える。

携帯電話でパソコンのソフトが使えればと思う人は少なくないだろう。何故ならノートパソコンを持ち運ばなくても済むからだ。ここでもう一歩掘り下げたのがソフィア・クレイドルのビジネスの発想の原点なのである。

パソコン用ソフトと同じ手軽さで携帯電話用ソフトを開発するにはどんなものが必要なのか?という問題意識を具現化したものが、現在のソフィア・クレイドルの製品のオリジナリティである。

現在ではさらに発展させて、携帯電話サイズのコンピューターならば…という風に視野をひろげて事業に臨んでいる。

追記:

老子の第 40 章にある、「天下の万物は、有より生じ、有は無より生ず」という、"無"こそが全てを生み出す根源であるとする文章は実に味わい深い。実は、ベンチャーとは老子の「道(TAO)」に最も近い世界なのかもしれない。