2004 年 12 月 17 日 : ムーアの法則 −流線型の軌跡を描く−
ベンチャービジネスをする以上、会社に関わる全ての要素が指数関数曲線を描いて成長することを願っている。皆が幸福になるために、どうすればその成長を達成することができるのかという戦略を策定し、実践するのは経営者としての最も重要な役割だと思う。
指数関数のカーブを描くには、事業領域を定める時に、指数関数の原理原則で業界そのものが動いている領域を探し出せば良い。
いまの携帯電話向けソフトウェアビジネスを創める前に着目した要素は、i モードが発表された 1999 年頃から「ムーアの法則(Moore's law)」が携帯電話にその舞台を移して働きだしているという前兆だった。
ムーアの法則とは、「半導体の集積密度は 18 ヶ月で倍増する」という法則のことで、米国インテル社を創業したメンバーの一人、ゴードン・ムーア氏が発見した。携帯電話の場合、集積密度が毎年倍になるくらい急激なスピードで、ハードウェアは進歩している。
ベンチャーにとって毎年倍増のペースで業界が成長するのは非常に有難いことなのである。何故なら、大企業が参入をためらうような、最初は無視できるくらいニッチな市場も、ほんの数年で巨大な市場へと成長してゆくからだ。
「指数関数曲線を描く」とはどういうことなのか説明してみよう。
例えば、最初は収入が 2 円でもそれが日々倍増すれば 1 ヶ月後にはいくらになるか即答できるだろうか。
実際に電卓で計算すると次のようになる。
1日目: 2円
2日目: 4円
3日目: 8円
4日目: 16円
5日目: 32円
…
10日目: 1,024円
…
15日目: 32,768円
…
20日目: 1,048,576円
…
25日目: 33,554,432円
…
30日目: 1,073,741,824円
5 日目の時点では収入はたった 32 円だったのに、その後、数字の伸びが急激に増えて 1 ヵ月後にはその収入は 10 億円という規模にまで膨らんでいる。実はインテルもマイクロソフトもオラクルもすべてこの法則の波に乗って成長していったのだ。
これは数字の話であるけれども、偉大な「ムーアの法則」が、一種の超小型コンピューターと見なせる携帯電話の世界でも確かに働き、その波に乗ることは不可能ではないと信じて事業を展開している。
この事業はまだ始まったばかりなので、上の例でいえば、いまは 2 円とか 8 円とか 32 円の程度の市場でしかない。しかし、世界中の全ての人々が携帯電話を持つようになれば、世界の人口は 60 億とも 70 億ともいわれているだけにその市場は大きい。だが、世界で携帯電話を所有する人口が指数関数的に増加をするとは考えられず、ある一定の有限な飽和点に収束することになる。
けれども、1 台の携帯電話の中に入っている半導体に着目すれば、上で列挙した数字の如くその集積度が高まる。従って、今後、たくさんのコンテンツやアプリケーションをインターネットからダウンロードし、無尽蔵に記憶させることができるようになると考えることができる。これから 10 年間は急激な勢いで、携帯電話にネット配信されるコンテンツやアプリケーションの市場が急成長すると見通している。
以上のような目論見で、次世代携帯電話にインターネット経由でネット配信される、期待を膨らませてくれるような、次世代のコンテンツやアプリケーションを、簡単に、瞬時に、開発できるツールを提供し、個々の携帯電話のメモリに保存されているコンテンツやアプリケーション 1 個あたりに料金を課金するビジネスモデルを展開しようとしている。
現在、世界市場には 15 億台の携帯電話が普及している。3 年後には 25 億台以上にまで普及台数が増える見通しだ。「ムーアの法則」によれば、携帯電話 1 台あたりに記憶可能なコンテンツやアプリケーションの数も、年々指数関数的に増え続ける。
要するに指数関数曲線の波を捉えることが最も重要である。