ホーム > President Blog : Sophia Cradle Incorporated

Sophia Cradle IncorporatedPresident Blog

2004 年 11 月 22 日 : 時は流れる

京都を舞台に繰り広げられた、平家物語は次の一節ではじまる。けだし、永遠の真理をついた鋭く美しい箴言だ。

   祇園精舎の鐘の声
   諸行無常の響きあり
   沙羅双樹の花の色
   盛者必衰の理をあらわす
   おごれる人も久しからず
   ただ春の世の夢のごとし
   たけき者も遂には滅びぬ
   偏に風の前の塵に同じ

時の流れと共に何もかもすべてが変化してゆく。21 世紀に入り、変化もさらに加速をつけている。

いまとなっては懐かしい。右肩上がりの高度経済成長期は、ただ単純に決まりきったことを、決められたとおりする。それだけで良かった。創造性や独創性なんてものは一切求められなかった。そんな言葉は存在すらしなかった。

バブル経済の崩壊と共にモノ余りの時代が訪れた。本当に良いもの、価値のあるもの、役に立つもの、それしか人びとから評価されないようになった。いわば、"創る"ということが最も重視されるベンチャーの時代が幕開けしたといってもよい。

優良企業と称されていた大会社が次々と倒産し、吸収合併される。昨日まで誰も知らなかった会社が一夜にして誰もが知るところの存在となる。過去の歴史にたとえるならば、今は戦国時代なのかもしれない。多士済済のベンチャーが群雄割拠する時代となった。

混沌とする経済情勢の中、しばらく混乱が予想されよう。ベンチャーにとっては、運と実力、それ次第で、時流に乗り、這い上がれる。千載一隅のまたとないチャンスなのだ。

「運」というものは与えられるものではなく、自ら掴むものと悟ること。指を口に銜え、消極的にただ待ち構えているだけでは何も起きない。よくて現状維持が積の山。

17 年前、私は外資系コンピューターメーカーに入社した。コンピューターといえばその社名で呼ばれるほど、世界のコンピューター市場そのものを隈なく独占し、席捲していた。

当時、いまを時めく、マイクロソフトインテルシスコシステムズなんていう会社は零細も零細といってよいほど業界では無視できる存在に過ぎなかった。20 年の時を経て、コンピューター業界も大きく変貌を遂げた。

あの頃は人生経験も浅く、中学校で習った、平家物語の「栄枯盛衰」の意味するところなんて全然理解できなかった。世の中の変化というものを経験した今なら、少しはその意味がわかる。

巨大な企業も永遠ではなく、経営幹部らの奢りや傲慢によりあっという間に瓦解する、今日この頃。大企業であればあるほど、入社するなり、抜擢人事で経営幹部は有り得ない。

大企業に入社した場合、自分の命運はその会社の経営幹部に委ねられる。他人に自分の運命を左右されるほどリスクが大きいことはない。入社して数年後、そう思った。

30 歳前後の頃から、起業のチャンスを伺っていた。なかなか実現できずにいた。苛立たしい日々が何年も続いた。39 歳の時、ある日突然、人生において 2 度とないようなビッグチャンスが訪れたのだ。

起業するときに最も重要な要素は一緒に事業を展開するスタッフの人員構成。大企業といえども参入できないような、自分たちの強みを発揮できるニッチなエリアを見出すこと。2 つの条件が完璧に揃った。

早くも 20 代のうちにチャンスを掴む人もいるかもしれない。10 年かけてようやくチャンスにめぐりあえた。それだけにチャンスを大切にし、育てたい。