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2005 年 02 月 17 日 : 海の彼方には

創業してからこれまでの3年間は国内のマーケットを中心に事業を展開してきた。今年から始まる次の3年間で海外のマーケットへと徐々にシフトしようと計画している。国内のマーケットを1とすれば海外のマーケットは15〜20と圧倒的な拡がりがある。しかも、携帯電話の国内市場は飽和状態だが、海外は中国、インド、ロシアを中心に現在も凄い勢いで伸びている。

国内マーケットに絞ってきた理由は、携帯電話のハードウェアそのものが日本のものは、海外と比較してダントツに進んでいたからだ。しかし、昨年後半あたりから、海外でもカメラ付きやゲームができる携帯電話が続々と出荷されるようになってきた。私たちが研究開発してきたソフトウェアのニーズが海外マーケットで急激に立ち上がりつつある。ちょうど一年前は海外からの問い合わせは皆無だった。でも、最近では毎日のように世界中の国々から問い合わせが入るようになっている。昨年の秋以降、この傾向が顕著に現れている。

京セラや日本電産、SONY、HONDAなどの偉大な企業の創業の頃を研究していると、何れも海外での販売をきっかけとして大きく飛躍してきたことが分かる。しかも、海外の場合は国内とは違って一瞬のうちに重要な意思決定がなされる傾向が強く、これらの企業は何れもその一瞬のチャンスを見逃すことなく掴んでいる。そんなチャンスが訪れるであろうことを意識して、それに備えることが肝心だと思う。

ソフトウェアビジネスの場合、今やマーケットから必然的に求められているのは、「水準は世界標準」ということだ。現在、皆さんが使っているパソコンのOSにしても、ワープロにしても、メーラーにしても、ほとんどがそうではないだろうか。そんな背景があるので、その先に広がるのはグローバルなスケール感のある未来と思う。

これまでは日本語ベースで研究開発を進めてきたが、世界標準を目指そうとするならば、英語を使わざるを得なくなってくる。そうすることによって、リアルタイムに製品を全世界に同時に供給することができる。いわば、スピードを重視した世界レベルの経営がその時初めて実現されることになる。日本語と英語には、言語学的に大きなギャップがあるようで、自由に使いこなすのには苦労する。しかし、もはやそんなことも言っておれない状況になりつつある・・・。これからは、必要に迫られて英語をオフィスのスタンダードな言語にしてゆくことになるのだろう。昔は、単に大学に入るためやTOEICのために勉強した英語だが、これから暫くは実質的に英語を勉強しなければならない状況に追い込まれてきた。

英語で仕事をしていると意外に良いことがあるのが分かる。企業というのはそこで働く人によって支えられている。その会社に集まってくる人材のスキルや人格、才能といったものの集積及びそれらの組み合わせから発生するシナジー効果が全てと極論しても良い。

日本では優秀な人ほどベンチャーではなく大企業で働きたがるようだ。でも海外では全くその逆だ。優秀な人から順番に、伸び盛りの急成長ベンチャーで働く、或いはそんなベンチャーを起業する未来を選択する。日本人だと採用できないような人材が世界レベルだと採用できる可能性が高くなる。実際、ソフィア・クレイドルでも海外からのインターン生を募集すると、世界中から優秀な人材が応募してくる。

それから、もう一つ大きなメリットをあげるとするならば、ソフトウェアビジネスで最も重要なポイントは、如何にして20代前半の有能なプログラマーに活躍してもらうかということがあるように感じている。日本の場合は、中学高校とコンピューター教育を真剣にやっているところは皆無に近い。有名大学に入るための教育という名の受験勉強が熱心になされている場合が圧倒的に多い。たとえ有名大学に入学できたとしても、実社会で実際に役立つような教育がなされている例は珍しい部類だろう。

海外を調査してみると、日本とは全く異なっている事実に気が付く。それは、中学や高校の段階からコンピューター専門の学校があって、10代の頃から、将来のコンピューター技術者の育成に向けた教育がなされている。しかも、若い頃は天才プログラマーとして活躍していたような異能が教育に携わっていたりする。例えば、以前ご紹介したアラン・C・ケイ氏もその一人だ。コンピューターだけでなく、いろんな分野で、その人の人生の目的や目標に合わせた教育がなされている。だから、20代前半の年齢でも充分に実務に耐えうるようなスキルを持った人材が育つのだろう。

プログラマーの場合、20代は最も充実した年代であり、このときに世界的な業績を残した天才と称されるようなプログラマーは数え切れないほどいる。日本では、そんな天才プログラマーを発掘するのは至難の業だが、世界中から探すとなると、スキルやモチベーションも含めて採用しやすくなる。

それから、ソフィア・クレイドルで働きたい海外の若者たちのエッセイとか読んでいると、弊社の場合、何故かヨーロッパからの希望者が多いのだが…。京都にある会社というのはとても魅力的らしい。いろんな寺院や自然、文化、そして歴史が古く、極東の地ということもあって、興味深いらしい。そんな地の利を活かして、海外の人材をこれから少しずつ増やして、この3年間で海外へのシフトのランディングを完了できたらと思っている。

追記:

確かコロンブスもマルコ・ポーロの「東方見聞録」に記載されていた黄金の国「ジパング」を目指して西へと帆を進めたのではなかっただろうか。ヨーロッパの人たちの中には東の果てにある日本に対して一種憧れの念を抱く人も多いようだ。いまの日本の黄金は何だろうか。