2005 年 03 月 05 日 : パラドックス
ベンチャー経営していると、経営資源である「ヒト」、「モノ」、「カネ」と実際の事業内容との間で複雑でパラドキシカルな状況が多々発生する。
10年くらい昔だったか、『公理系をどんなに磐石なものにしても、その真偽を証明できない定理が必ず存在する』という万全に見える数学の不完全さを証明する『ゲーデルの不完全性定理』に興味をもって数学基礎論を勉強していたことがある。確かに、ベンチャー経営において、どのように足掻こうがなす術のない窮地に追い込まれることもあるかもしれない。しかし、矛盾するように見えて、実は正しい『パラドックス(Paradox) 』も存在するのも事実であり、実際にはそんな『パラドックス』が多いのではないだろうか。
『「クレタ人は嘘つきである」とクレタ人が言った。』という有名な『パラドックス』を例にとって考えてみよう。このクレタ人に関する文章は一体全体正しいのだろうか?なんとなく矛盾しているように思えるのだが、実はこの文章自体は正しい。
『正直なクレタ人』もいれば『嘘つきのクレタ人』もいる。その2種類のクレタ人をこの文章に当てはめて考えれば、この文章は矛盾せず正しいと解釈できる。
この例から学べることは、一見矛盾するように思えることでも、その根っこを押さえて原点に立ち返って考えれば、正しい筋道が明らかになるということではないだろうか。
これをベンチャー経営に置き換えて考察すれば、その原点に相当するものは『企業理念』や『行動指針』、そして『事業目的』であるように思える。複雑に入り組んだパラドックスのような難題も、そのような原点に戻ることで簡単に、明快に解決されよう。
『企業理念』や『行動指針』、『事業目的』といったものはベンチャー経営を支える根幹でもあり、これらそのものがパラドキシカルな要素を抱えるようであれば、混乱し自己矛盾に陥って経営が立ち行かなくなる可能性が高くなるだろう。