2005 年 01 月 05 日 : Viewpoint
年明け早々なのに、新たにカナダ、ポルトガル、タイ、ベトナム、デンマークといった意外な国々からも問い合わせが来るようになってきた。恐らく日本で利用されているような高性能な携帯電話が、きっとそういった国においても普及の兆しがあるに違いない。
昨日、今日と、会社は休みなのだけれども、インターネットを駆使して、米国のある会社とソフィア・クレイドルの製品導入の検証をしている。問題となる箇所も特定できたので、多分うまくいくことだろう。ここに導入すれば、ソフィア・クレイドルにとって初めての海外進出ということになる。(こういう時、インターネットの偉大さや有り難さといったものを痛感させられる!)
今年は期待が持てる楽しみな一年だ。これまで努力して研究開発してきた製品の成果が現れ、拡がってゆく。さらにより高い目標を打ち立てて、ひたすら努力することが大事ではないかと考えている。そして、一歩一歩自分たちが成長することに、人生の意義を感じるようでありたいと願う。
ベンチャービジネスで成功するためのキーとなるポイントの一つは着眼点ではないだろうか。天才的な頭脳を有する会社であるのに、伸び悩んだり、倒産、吸収される会社が後を絶たない。戦略的に間違った選択をすれば、いくら戦術に長けていようが軌道修正のしようが無いということなのだろう。だから、何かものごとを始める時は、それに将来性があり、自分たちの強みを発揮でき、自分たちにしかできない事業かどうか、それをよく洞察することが何よりも大切だ。
いくら将来性があっても、大手企業などの他社が参入しえないような、特別な理由や条件が無ければ、その事業は始めない方が良い。自分たちにしかできないことは何かをよく見極める必要がある。そのためにも創業する前に、自分たちの好きなこと、得意なこと、強みは何かということを冷静に、真剣に見つめ直すことだ。
i モードが導入された時点で、直ぐに携帯電話というものの将来性を非常に感じたが、どこから入っていけば良いのか、その突破口をなかなか見いだせずにいた。3 年という期間を費やして、ようやく『未来の携帯電話=ネオ・タイプの超小型モバイル PC 』という方程式に確信が持て、この分野に入るべき道を発見することができた。
しかし、何れ多くの競合他社がこの分野に参入することは予想された。そこで、結論から言えば、携帯電話のソフトウェアであっても、「どう転んでも 時間の掛かってしまう ビジネスの分野」を探し出す努力をした。それが現在製品となっている携帯ソフト圧縮ツール「 SophiaCompress(Java) 」と携帯ソフトフレームワーク「 SophiaFramework 」である。何れの製品も、天才的な一人のプログラマーが設計し、ごく少数の有能なプログラマーのチームでプロジェクトを構成して、実現していった場合の方が、格段と質の良いものをアウトプットできる。
携帯電話向けソフトは、メモリ容量や CPU の性能の問題があって、いまは量よりも質が重視される傾向にある。さらに、他のジャンルのどんな製品でもそうかもしれないが、ソフトウェアのクオリティというものは、それを構成するパーツの中で最も劣る部分で決定されると言われている。所謂、ボトルネックのことだ。多人数からなるプロジェクトの場合、どうしても様々なプログラマーが混ざってしまい、部分的にはすごく優れていても、ある部分が欠陥となり、総合的には陳腐なものになっている、という残念なことが往々にしてある。
そこに目をつけて、ほんの数名の少数精鋭のプロジェクトで、3 年というベンチャーにしては比較的に長い歳月をかけて、自社製品の完成度を高めつつ、実績を積み重ねていった。現段階でこれといった競合他社を見いだすことはできない。同じくらい天才的なプログラマーを擁して、いまからこの分野に参入したとしても、これまでの3年という歳月を挽回することは至難の技だ。
ベンチャーといえば、「スピード」というものが重視される傾向にあって、意思決定においてスピードはとても重要だと思う。しかし、反対に、製品開発においては、どのように頑張っても、例えば 3 年かかるような分野を選択し、3 年後にピークになるものにフォーカスを絞り、それを見計らって目立つことなくこっそりと研究開発を進めることも一つの重要な考え方だ。直ぐに実現できてしまうような、簡単な製品やサービスは、当たることもあるが瞬間的に消え去ってしまうのことの方が案外多い。
有り難いことに「時間」というものは、大企業にも零細企業にもすべてに対して、平等で最も貴重な経営資源だ。
追記:
桶狭間の戦いで一桁上回る軍勢を擁していた今川義元が織田信長に敗れたのは、その戦場があまりにも細長く一箇所に大軍を集結できず、量より質の戦いとなったからに他ならない。ベンチャービジネスで勝機を得るにはそのような発想がヒントとなる。