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2005 年 02 月 21 日 : 小さな組織にて

1980年代、表計算と言えば「ロータス1−2−3」のことだった。2005年の今、表計算で「ロータス1−2−3」を使う人は珍しく、大半の人は「マイクロソフトExcel」を利用している。

1988年のころの興味深いデータがある。同じ表計算ソフトの開発チームの規模なのだが、「マイクロソフトExcel」は15名で、「ロータス1−2−3」は100名の組織で製品開発がなされていたという。最終的には、圧倒的に少ない人数のチームで開発された「マイクロソフトExcel」が、「ロータス1−2−3」を駆逐してしまった。(「私がマイクロソフトで学んだこと」、32ページ)

これは「大きければそれで良いのだ」ということが通用しない典型的な例といえるだろう。特にソフトウェアの開発では、できる限り少ない人数でチームを構成するのが重要だと思う。他の仕事でもそうかもしれない。

その理由はいろいろと考えられるが、人数が少なければ一人当たりの責任の範囲や度合いが大きくなり、それだけ頑張れるし、仕事の達成感を実感できるからではないかと思う。人数が少ないといろんな創意工夫もなされる。

人数的な制約があれば、創れるものにも物理的な限界がでてくる。本当に欠かせない機能だけに絞って重点的に開発することになる。よく考えてみると当たり前のことかもしれないけれど、利用者が普段使っている製品機能はほんのごく僅かだ。こんなところにもパレートの法則(80対20の法則)は有効に働いている。

「シンプル・イズ・ザ・ベスト」ということかもしれない。シンプルな製品は売れるパターンの一つだ。人数が少なければ必然的にシンプルな構成の製品を創らざるを得ない。大規模な組織になってしまうと、誰もが余分だと感じているのに新機能を付けてしまおうというような発想も起こるかもしれない。こんなことをすれば、逆に製品そのもののトータルシステムとしての価値が低下してしまう。

ボトルネックの法則によれば、ソフトウェア製品のクオリティというものは、その製品を構成する数多くの部品やパーツの性能で最も低いところで決まると一般にいわれている。少人数なら、なるべく同じレベルの人材を集めることも可能となる。そのチームの範囲内でできる仕事を見つけて、だんだんとクオリティの高い成果をあげることができる。

マイクロソフトがロータスよりも一桁下回るくらいの規模のチームで、同じような製品開発することで得られるもう一つの大きなメリットがあった。それはチームを構成するスタッフたちの成長だった。少ない人数で大きな仕事をしようとすれば、真に重要なことは何かということを自問自答したり、短時間で集中して仕事をこなす術を考案したり、無駄な仕事をしない習慣が自然に備わってくるそうだ。プロフェッショナルなアスリートたちがオーバーフローするような訓練や練習をすることで、自分の筋力を鍛えるのと同じようなことが現実の仕事においても求められる。

同じ仕事をできるだけ少ないチームでやる方法について、真剣に考えている人は意外に少ない。