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2005 年 04 月 10 日 : 予兆

「地層が地殻の割れ目に沿ってずれて食い違う現象」のことを「断層」と呼んでいる。辞書にはもうひとつの意味として、「環境の相違による考え方の食い違い」とも記されている。断層というのは地震によって引き起こされる。ある日突然、地震は襲ってくる。時にそれは為す術がない大自然の脅威や怒りに思えてしまうこともある。とにかくその瞬間、人は本能的にエピステーメー状態になってしまう。

地球上のあらゆる生命には、本能で悟って地殻変動を予知し、難を逃れたりする才能が、本来備わっているらしい。大きな自然災害の後に動物たちのそういった行動を報道で知ると、生命の神秘さに愕然とする。科学的には、地震発生の前後にはその辺りの磁場が変化し、何らかの電気的なイオンらしきものが観測できるという。動物はそれを本能で感知するのであろうか。(太古の昔、人間にもそんな能力はあったに違いない。だとすれば、それを喪失してしまった原因は…?)

世の中の移ろいゆく無常な風景もそれに等しい。歴史には変曲点のようなポイントが確かに存在し、人類は過去さまざまな変革を経験した。第二次世界大戦、明治維新、関が原など、挙げれば切りがないほどそんな断層を経て私たちの今日の姿があるのだ。

断層を境界線として世界の構造が天と地ほどに激変する。人びとの生活や社会のあり方、そして個人の生きる術も、過去に当たり前のように通用していたルールやシステムは全く意味をなさなくなる。人は水中で暮らせないが魚は何の問題もなく生きていける。地上と水中では生存するためのパラダイムが異なるのだ。時代を振り返れば、それに似たようなパラダイムシフトが時折訪れ、その度に人々の生活が変化したことが分かる。

新時代にはそれに相応しい、今までとは異なる仕組みやシステムが要請される。それまで既得権益にあぐらをかいてきた人びとにとっては都合の悪い話なのだが、それ以外の人たちにとってはまさに絶好の機会でもある。これまでエリートコースと持て囃された、一流大学、一流企業などでの過ぎ去りし日の輝かしき経歴なんていうのも文字通り単にそれだけのこと。これからの時代、きっとその人自身の未来へと繋がるポテンシャルだけが信じれる拠り所となるだろう。そんな予感がする。

地震と同じで何の備えもなければ震災に飲み込まれる可能性が高いと思う。何かが起ころうとしている前触れのような予兆を敏感に感じ取って、未来に備えることが大切な習慣になるのではないだろうか。ベンチャー起業家であれば、そういった微弱な変化を捉える能力を研ぎ澄まさなければ、と思う。

最近、過去の時代を飾った巨大組織が次々と崩壊している。そして偉大と称された、去りゆく今は昔のカリスマたち。時代の流れは大組織よりも機動性のあるチームに味方しているにも感じ取れる。ヤンキースではなく、松井。マリナーズではなく、イチロー。人びとは何よりもユニークさで際立った個人やグループの直向さや活躍に、期待を寄せ注目しその推移を見守っているかのようだ。

精神的な一体感がチームのパフォーマンスをマキシマイズしてくれる。21世紀はそんな時代だと感じている。たったひとつのある才能の開花によって世界が良い方向に化学反応しそうな、そんな夢と希望を抱いている。だからこそ、巨大な組織や権威に迎合せず、正しく自分を主張するポリシーを貫きたい。しかしそれは、間違った信念や固定された観念を守るのではない。自らも学び変化しつつ、長く優しい眼差しを持ったり他者の考えの違いも受け入れることができたら。まさに新しい世界に向けて自ら脱皮できる柔らかさやしなやかさを養いたいと願っている。チームが小さければ小さいほど、それは成し遂げやすいだろう。

いま時代は曲がり角に差し掛かっている。そして一歩一歩着実に変わりつつある。それだけは確かだ。