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2005 年 01 月 09 日 : Bootstrap

ブートストラップ」というコンピューター用語がある。全く別々の存在である「ハードウェア」と「ソフトウェア」とが一体となって、コンピューターが稼動し始めるまでの一連の処理手順のことだ。

最初は「ROM」にハードウェア的に記憶された「ブートローダー」と呼ばれる、ごく小さなプログラムがメモリーに読み込まれ、ハードウェアの初期設定がなされる。そして、「ハードディスク」に記憶されている「オペレーティングシステム」が読み込まれ、コンピューターは動作可能となる。

昔、初めてコンピューターを勉強し始めた頃、鶏と卵の関係みたいなコンピューターの根本的な動作原理に興味を持って、このことを熱心に研究したのが懐かしい。

ベンチャー起業というのも、経営が安定するまでの一連の出来事はコンピューターのブートストラップに似ているように思える。製品とお客様、どちらが先かはっきりとしないが、会社がある程度軌道に乗ってくると、なんとなく製品とお客様とがハーモニーを成すように感じる。

お客様から必要とされるもの、欲せられるものが製品として提供される様が、次第次第にパーフェクトに近づいてゆく。

コンピューターも ROM に記憶されたブートローダーと呼ばれる極々小さなソフトウェアが無ければ動作しないわけで、コンピューター全体からすればそれが最初の重要なキーとなっている。

ベンチャー起業においても、コンピューターのブートローダーに相当するような、キーとなる小さなきっかけが掴めるか否かでその後の道のりは大きくことなってくるのではないだろうか。

創業して 3 年が経過し、お客様の数もまもなく 100 件を超えようとしている。しかも、時の経過と共にお客様の数の増加の勢いは加速している。最初はなかなかペースが上がらず、歯痒い日々を過ごすことも多かった。

幸いなことに、ある日を境として世界が変わったかのようにお客様が増えている。これも最初のお客様から始まっているわけで、最初のお客様から注文書をいただいた感動は忘れえぬ思い出として脳裏に強く刻まれている。

スタッフがこの時の感動と感謝を忘れない限り、きっとベンチャーを弛みなく成長を続けるんだろうなと思う。

ここまで来るには地道なマーケティング活動が続いた。もともと押し売りのようにして、製品を販売する性質ではないので、営業的には苦戦することが多かった。逆に言えば、それが良かったといえるのかもしれない。

これまで特に意識してやってきたことは、お客様との対話だ。販売代理店網を創って、製品を販売するのではなく、当社がお客様に製品を直接販売する道を選択したので、必然的にお客様との対話が続いた。

製品が完成すれば、メディアに流す、プレスリリースの文章は、丁寧にどの仕事よりも力を入れて努力した。そして、いろんなメディアに掲載されることが叶った。製品開発で多忙な時期でも、携帯 JavaBREW の技術情報の文章を寄稿したり、情報発信に努めた。

それらをきっかけにして、お客様との対話が始まったように思う。最初は製品の無償評価版の提供をし、お客様から評価版を試用した感想や印象、評価といったものを根気強くヒアリングした。お客様も忙しいので、なかなか本音を話してくださらないが、次第に製品のどこを改善すれば、お客様に受け入れられるのかが分かってくる。同時に、お客様との信頼関係も深まっていった。

要はお客様との対話を繰り返しながら、製品の機能をゆっくりとバージョンアップしていった。閾値とはこういうことをいうのかもしれないが、感覚的なのだが、製品のレベルがある段階を超えた時点で注文が増え出したように思える。インターネットや i モードの利用者がある時点を境にして、急増したあの感覚に近いように思える。

お客様との対話を根気強く続け、それをフィードバックし製品を育てる。そして、お客様からの注文をいただいた時の感動と感謝を大切にし、堅実、着実な商売を継続することこそがベンチャー起業の王道のような気がしてならない。

追記:

日本では KDDI が、そして今年の末からは NTT ドコモも採用するBREW

最近、Qualcomm 社の「 BREW の今日」というページを見ながら、世界に向けた経営戦略を構想することが多くなってきた。このページは定期的に更新されているようで、時の経過と共に BREW が世界中に広がっているのをよく実感できる。

この世界地図を見ると、世界の中で日本はほんのちっぽけな極東の国に過ぎないのがよくわかる。逆に言えば、世界マーケットの広大さが分かり、一生を賭けてやるだけの価値ある仕事と思え、働く英気が養われる。

いま、間違いなく、BREW の渦は日本を中心に世界へと拡がっている。この分野の仕事だからこそ、私たちが世界へ羽ばたける、滅多にない千載一隅のチャンスでもあるわけだ。

いまは私たちのようなちっぽけなベンチャーでも一瞬のうちに世界の桧舞台で活躍できるためのマーケティングの手段がある。

それは「インターネット」に他ならない。飛行機というもの出現により、時間的に、地理的にも世界は狭くなった。そして、世界が変わった。

飛行機を遥かに凌いで、「インターネット」は時間と空間の壁をなくしてくれる。しかし、意外なことだが、これだけもてはやされている「インターネット」なのだが、未だに「インターネット」が持つ潜在能力は利用しつくされていないと思う。

これからの時代、「インターネット」をどうやって活用するかで、そのベンチャーが世界に羽ばたいていけるかどうかが決定付けられるだろう。