2005 年 10 月 14 日 : The long tail
インターネットビジネスを考える時、米 Wired 誌の編集長である Chris Anderson が提唱したロングテール(The Long Tail)という現象を観察すればその中から新しい発想が浮かんでくるかもしれない。
縦軸の販売数、横軸に商品をその販売数の多いものから順番に並べてプロットする。その曲線は恐竜の尻尾のようにどこまでも果てしなくのびてゆく。その軌跡を指して"ロングテール"というらしい。
リアル店舗であれば店頭に置かれることの無い商品も、ネットのバーチャル店舗であれば情報は物理的ではないので無限に並べることができる。このとき、リアル店舗では販売不可能だったニッチな商品のマーケットポテンシャルが実際には無視できないほどの規模がある。80 対 20 の法則とは一見矛盾するように思える。しかしそこに新たなビジネスチャンスを見出しているのがアマゾンでありグーグルであるというのだ。
この話で関心をひかれたのは「80 対 20 の法則とは一見矛盾するように思える」ということである。いくつかの BLOG でもそう言っているのを読んだ。
本当のところはどうなんだろうか?
現実の世界の数は有限である。天文学的数字というのはオーバーかもしれないが、その数も限りなく大きくなれば、その数字を "∞(無限大)" として扱ってもそれほど誤差は生じないのではないだろうか。
∞ × 20 % = ∞ ⇒ 実は無限大の 20 % も無限大なのである。
ニッチなものも数え切れないほど集めると無視できないくらい巨大な数字となる。人知を超える情報量を無限にオートマティックに、そして規則正しく処理する性質が、コンピューターとインターネットの最大の特長である。
コンピューターのみならず、携帯電話、ゲーム機、自動車などもネットに接続されるようになってきた。その数は時間の経過と共に加速する勢いで増加している。ネットで繋がれた、ありとあらゆる情報機器と人間とのあいだで交わされるコミュニケーションに秘められたマーケットポテンシャルは計り知れない。
コンピューターとインターネットがあるからこそ実現された不思議な世界でもある。
2005 年 09 月 15 日 : リニューアル
今月はホームページのリニューアルで忙しい。営業活動はWebのみなので自然と力が入る。製品のマーケティングばかりでなく、デザインや色調の修正などにもこだわりを持って探究している。
これで5回目のリニューアル。リニューアルするたび売上と利益もアップしているので今回も努力したい。
10月から第5期が始まる。それと歩調を併せるようにして新製品のβリリースを"新月"の日の2005年10月3日から開始する。
2005 年 08 月 23 日 : Concentration
http://www.google.co.jp/ と http://www.yahoo.co.jp/
グーグルとヤフーの URL である。ホームページだけであればヤフーがグーグルを遥かに凌駕しているかに見える。
今朝、新聞( 2005 年 8 月 23 日発行日本経済新聞 13 面)でグーグルとヤフーに関する興味深い記事を発見した。それはグーグルとヤフーに関する、2005 年 1 − 6 月期の売上高と純利益、8 月 19 日付けの時価総額の数字である。従業員数は半分以下でしかないのに、今やグーグルはヤフーをこれら三つの指標で超える存在となっている。
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グーグル ヤフー 単位
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売上高 2,641 2,427 百万ドル
純利益 712 381 百万ドル
時価総額 778 479 億ドル
従業員数 3,021 7,600 人
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最近、グーグルも検索エンジン以外に手を広げているようだが、依然として経営資源の7割は検索エンジンの精度向上のための研究開発に投入しているという。元々、ヤフーはインターネットの検索エンジンでスタートし、この分野では圧倒的な No. 1 の地位にあった。しかしいろんなビジネスに手を広げるうちに、いつの間にかその地位をグーグルに譲る結果に陥っている。
ほんの一つの例に過ぎないが、これは 21 世紀の新しいビジネスモデルの典型的な成功パターンを示唆しているように感じる。ヤフーが創業した10年前は、ネットに接続している人は珍しい部類に属していた。けれどもいまではネットを使わない人の方がむしろ例外となりつつある。
この傾向は日本国内に止まらず、中国、インド、ロシア、ブラジルなど世界中のあらゆる国において目撃できる事実である。今日、世界人口は64億とも言われるくらい、世界のマーケットのポテンシャルは計り知れないほどに巨大である。
ネットはその巨大マーケットに光速のスピードで接続することを可能にしてくれる唯一最強の武器とも言える。現代そして未来の利用者にはネット上に用意された高速コミュニケーションと高性能コンピューターのポテンシャルを駆使できる環境がある。自分が求める商品やサービスを瞬間的に手にすることができる世界である。
利用者の立場に立てば自明のことと思う。同じ価格なら世界 No. 1 のクオリティのものを選択するだろう。また、売れれば売れるほど儲かるという収穫逓増のビジネスモデルが成立する領域においては、売れる数が桁違いに多ければその価格は他よりも低く設定しても利益に何ら影響はない。むしろ逆に利益は以前にも増して膨らむだろう。
グーグルとヤフーの記事を読んで、できるだけ少ないスタッフで、自社が世界 No. 1 と誇れる商品またはサービスの一点に絞り、それに全てを賭ける姿勢は 21 世紀のビジネスを駆け抜ける上で外せない条件に思えた。
2005 年 06 月 30 日 : MSN & Yahoo! にて
MSNとYahoo!の検索エンジンがリニューアルされたようだ。それらのエンジンには最新の検索に関するソフトウェアテクノロジー(アルゴリズム)が採用されているとのこと。(詳細はよく知らないのだが。)
「C++」というキーワードでこの二つのエンジンに検索をかけてみた。すると、MSNでは9,329,369件中第13位、Yahoo!では45,500,000件中第15位にソフィア・クレイドルのサイトがそれぞれランクイン。
「BREW」の場合、MSNでは3,523,740件中第8位、Yahoo!では 9,390,000件中第5位。
それから、「携帯 Java」(J2MEのこと)の場合、MSNでは277,982件中第1位、Yahoo!では3,060,000件中第2位。
これはソフィア・クレイドルが選択し集中する事業領域でその認知度が上昇しつつあることの証左なのかもしれない。
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2005 年 06 月 01 日 : Core concept -18-
生前は全く見向きもされないのに、その人が亡くなってから何十年、何百年の時を経て、彼或いは彼女のアウトプットが世間から高く評価され、その名を歴史に刻む一角の人物は数え切れない。
情報が氾濫するインターネットの時代だからこそ、世の中のトレンドから距離を置いたところにあるものに貴重な価値を見出せる。誰もが知るところの情報は古典のように尽きない深みのあるもの以外は、それが皆に知られた時その価値が消滅する場合が多いように思う。株価などの情報はまさにその典型的な例とも謂える。
確かに流行というものを追うことは大切だ。しかし大概それは最低限知っておくべき常識にすぎないものかもしれない。
世界は狭いように見えて広い。高度情報化社会の中に埋もれている情報の中から、真に価値あるものを見出せるかどうかのセンスが問われる時代にいま差し掛かっている。
所謂、ランキングなるものにリストアップされた情報から他を差別化する独創的なものを創造しようとしても、それは難しい。誰もが見向きもしない埋もれた情報の中にこそ偉大な発明や発見が隠されている。
(つづく)
2005 年 04 月 13 日 : Asymmetric information
情報の非対称性(Asymmetric Information)とは売り手と買い手の間で持てる情報量に格差がある状態のことをいう。インターネットの発展と共に、両者の情報格差は縮小し、場合によっては逆転現象すら発生しているという。そんな世の中の傾向のエッセンスをどのように解釈し、それを経営に応用し実践できるか、それによって戦略シナリオの道筋とその展開も異なってくる。
インターネットが普及する以前は、売り手が買い手よりもたくさんの情報を持っていた。だから、営業員が顧客に商品について分かりやすくプレゼンテーションし、啓蒙する活動は必要不可欠であった。
時は移り変わり、いまは買い手がありとあらゆる必要な情報を瞬時にインターネット経由で入手できる時代だ。もし仮に買い手が事前にその商品情報を持っていれば、売り手はその商品の説明すらしなくてよい。極端な話、買い手が売り手以上の情報を掴んでいる場合さえある。
商品がオートマティックに売れるのならば営業員がいらなくなる場合もある。だから、売り手としてはこれ以上有難い話はない。こんな美味しい話には当然前提条件があるものだ。その商品が何故必要になるのか、インターネットだけで買い手が本当に理解し買う気になるのかということである。この問い掛けは極めて重要だ。
肝心なポイントは、どのようにしてインターネットというツールを駆使して、できるだけたくさんの買い手に短時間でその商品の良さを正しく理解してもらえるかという話に尽きると思う。
確率的な話からすれば、母数が多ければ多いほど当たりの数も増える筈である。そのためには、先ずはできるだけ多くの買い手にホームページを閲覧してもらう発想が重要になるだろう。
そのためには、まったく同一のモノなんだけれども、それを表現する方法は無限にあることを認識する必要があるだろう。同じことを異なる表現で延々と限りなく繰り返し説明するのは問題あると思う。けれども、適切にそれをやることでより多くの人びとにその商品の価値を理解してもらえるのではないだろうか。
分かり易い例でいえば、同じ商品について日本語と英語のホームページを用意していれば、国内だけでなく海外からも問い合わせや注文が入り、それだけ多く売れる仕組みができる。
当たり前のような話かもしれない。これと同じ考え方を日本語のホームページの中においても展開する発想がプラス方向に作用してくれるのではないだろうか。そのように仮説を立て、いま新しいホームページの構想を練っている。
同じ商品の説明でも、まずは商品の概要を知りたい顧客と、その商品の購入を真剣に検討している顧客とではすべき説明の内容、深さやトーンも随分と異なってくるはずだ。更に言及するならば、新しくかつ深みのある商品には、いろんなメリットがあって、顧客によってその商品を買う理由は異なるものだ。その顧客の思惑に沿ったシナリオでホームページが個別に構成されていればそれだけ売れる確率も高まるのではないだろうか。
ホームページ上に同じ商品について無制限に何通りも表現するのは事実上不可能であり、ある最適値を過ぎると逆効果になるであろう。肝心なポイントはその最適化プロセスにおけるバランス感覚にありそうだ。限りなく思考に思考を重ねたにしても、最終的にはそのプロジェクトチームの感性に依存する問題に帰着してしまう。それを考えれば日頃からいろんな素晴らしきモノに触れ、超一流を目指して感性を磨く習慣がとても大切に思えてくる。
……Glenn GouldによるJ.S.Bachのピアノ演奏を聴きながら、あんな風に洗練されたクールさでホームページが創れればと憧れを抱く。そこに辿り着くまでの道程は険しく曲がりくねっている。
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2005 年 03 月 14 日 : ネットワーク外部性
インターネットやITの業界にいると『ネットワーク外部性(Network Externalities)』というキーワードをよく耳にする。『ネットワーク外部性』とは『ネットワークに参加する利用者の数が増えれば増えるほどそのネットワークの価値は高まる』というネットワーク効果のことである。
電話、FAX、インターネットなど世の中の様々なものに関してこのネットワーク効果が働いている。例えば、インターネットに接続することによって既にインターネットに接続しているすべての人とメールなどでコミュニケーションを取ることができる。その価値はインターネットそのもののテクノロジーよりもそれに加わっている利用者の数の方が大きくものを言う。
しかし、『ネットワーク外部性』そのものが機能するためには、ネットワークの利用者の数が『クリティカルマス(Critical Mass)』と呼ばれるある一定の普及率を超えなければならない。その普及率は経験的に潜在全利用者の10〜15%程度といわれている。そのネットワークに参加している利用者の数がクリティカルマスを超えると共に『ネットワーク外部性』は顕著に現れる。
インターネットにしても携帯電話にしても、それらが世の中に初めて導入された初期の頃は利用者数の伸びは緩やかだった。ある時点を境にして急激にその普及が進んだ。その普及のペースが一気に変わる変極点のようなポイントがクリティカルマスだ。
ソフトウェアビジネスを展開する上で、『ネットワーク外部性』と『クリティカルマス』の概念を抑えておくのは極めて重要である。自分が所属する業界の利用者が確実に増え、かつ普及の面でもそれを超えるであろうことが十分に見込めないと、折角のベンチャービジネスも頓挫する可能性が高くなってしまうからだ。
『ネットワークの価値はその利用者数の2乗に比例する』という有名な『メトカーフの法則(Metcalfe's Law)』も『ネットワーク外部性』に由来している。ネットワークの価値が利用者数の2乗に比例するのかどうかは経験則によるらしく定かではないが、利用者数が増えれば増えるほど、それだけ加速してネットワークの価値が高まるのは簡単に理解できるだろう。
ベンチャービジネスの場合、ネットワークの人口がゼロの状態からそのネットワークに参加することもよく聞かれる話である。私たちがBREWのビジネスに参入した時点では、日本国内でのBREW人口はゼロだった。その時、重要なポイントが一つあって『ネットワーク外部性』が表面化するにはそのネットワークに関わる人口の普及率がクリティカルマスである10〜15%を超えなければならない、ということだった。それまではこのジャンルで頑張っていてもなかなか思うように成果は現れない。
また、クリティカルマスを超えなければ、その事業は一時的な現象か流行といったものに終わってしまうので、本当にそれを超える確証があるのかというような考察も十分しておいた方がよいだろう。
例えば、2005年2月末時点でBREWが搭載されたKDDIの携帯電話は870万台となっている。KDDI全体としての携帯電話の普及台数は1900万台であるから、KDDI内ではBREW普及率は45.8%であり、KDDI内でBREWはクリティカルマスを既に超えている。KDDIに関する限り、いまBREWの『ネットワーク外部性』が急激に上昇していると予想される。日本全体では携帯電話の普及台数は8600万台であるから、国内のBREWの普及率は10.1%である。国内では、BREWはクリティカルマスに到達しているかもしれない位置にあるといえる。
NTTドコモは2005年末からBREWを採用する意向表明をしているので、2006年以降、NTTドコモでもBREWを採用する携帯電話の機種が増えれば、国内全体としてもBREWはクリティカルマスを突破し、『ネットワーク外部性』が飛躍する可能性がある。
BREWは国内だけでなく米国、欧州、アジアでも急激にその普及が拡がっている。『ネットワーク外部性』はネットワークに加わる利用者の数が大きな影響を及ぼすだけに、世界レベルでその普及率の推移を見守る姿勢は欠かせない。
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