2005 年 06 月 10 日 : Core concept -23-
ソフトビジネスが成功するか否か?それはそのプロジェクトに関わるスタッフの、それに賭ける思い、潜在意識の強さとその顕在化に委ねられる。音楽、映画、出版などの業界を見ればそれは明らかであろう。CDTV によれば今週の No. 1 はORANGE RANGEの『ラヴ・パレード』。誰にでもそれができるわけではなく、彼だから、或いは彼女だからできるのだ。それがソフトビジネスの特筆すべき特色であり、ソフトウェアという商品を手掛ける起業家が心して取り組むべき最重要課題と思う。
これほど人に依存するビジネスも少ないと思うのだが、それがソフトビジネスの宿命と考えても良い。だからこそ断言できる。この世界で頂点を極める秘訣は如何にして感性、知性そして才能豊かなスタッフを数多く見出し、そんなスタッフに快くプロジェクトに参画してもらえるかが全てである、と。恐らく社長としての仕事の99%は人材発掘とその育成に尽きるのではとさえ思えてしまう。
ソフトビジネスの世界では、その作品が人々に受け入れられ売れなければ、そして世にひろまらなければ、そのアーティストのレゾンデートルは無きに等しい。真に素晴らしい作品を生み出せるアーティストは何万人に一人といった確率でしか存在しえない。広く世界を見渡せば、際立って異彩を放つアーティストに出会える機会も必然的に増える。
国籍、性別、年齢に関わりなく、類稀な存在そのものである異能に巡り合うための努力に全力を尽くしている。そのような努力なくして、競争の激しいソフトビジネスでは生き残れないと感じるからだ。逆に、このような思いを持つことで、そうでなければ得がたい人にも巡り合え、たった一人の存在によってフェーズが良い方向に急展開することだって、これまでに数多く経験してきた。
音楽業界を例に挙げれば、最も売れている国内アーティストは年間100億円程度のCDのセールスを記録すると謂われている。それは世界で最も売れるようなアーティストに置き換えれば、その一組のアーティストだけで年間にして何千億円ものビジネスになるのではないだろうか。
ソフィア・クレイドルで創作しているソフトは音楽に限らず、金融、エレクトリックコマース、ビジネス、動画配信、ゲーム、コンテンツなど様々な分野で応用がなされるものだけに、少人数ではあるが、世界的に展開出来さえすれば、それだけで年間にして数千億円規模のビジネスに発展するのは間違いない。それを為し得るか否かはソフィア・クレイドルに関わるスタッフの感性と知性のトータルな何か、そして才能にそれだけのポテンシャルが秘められているということ。そしてそれが思いの強さによってインスパイアされ開花するかが全てとも謂えるだろう。
(つづく)
2005 年 03 月 15 日 : ナチュラルな発想
先日NHK衛星放送で放映された「第19回日本ゴールドディスク大賞授賞式」の模様をビデオで観ていた。それによると、2004年に最もCDが売れたアーティストは「ORANGE RANGE」だそうで、アルバムとシングルを合わせてトータル456万5,370枚のセールスを記録したという。
「ORANGE RANGE」は2003年にメジャーデビューしたアーティストだから、たった2年で大賞に輝いたことになる。(インターネットで調べていると、デビューは2002年のようだ。デビューからしてもたった3年で日本の最高峰を極めた。)たくさんの人びとから支持されるほど素晴らしいものであれば、あたかも光速のようなスピードでひろがってゆく。それが“ソフトウェア”ビジネスの特色かもしれない。ここにも「ネットワーク外部性」が働いているかのように思えて不思議だ。
デビューして間もない「ORANGE RANGE」というアーティストはファーストアルバムである「1st CONTACT」とセカンドアルバムである「musiQ」の2枚のアルバムしか発表していないので新進気鋭のミュージシャンといえるのかもしれない。これら2枚のアルバムを聴き比べてみると、素人の判断で恐縮なのだが彼らの成長の軌跡がなんとなく感じとれる。「musiQ」の「ミチシルベ」「花」「ロコローション」の3曲が特にお気に入りなので彼らの活躍は個人的にも喜ばしい出来事なのである。
さらに数字の話で恐縮なのだが、アルバムとシングルを合わせて456万枚のCDが売れたのだから、売上金額に換算すれば100億円前後ではないかと推察される。しかし、「ORANGE RANGE」という年齢20歳くらいの、たった6名からなるアーティストのグループが、3年という短期間で素晴らしい作品を世に送り出したところに、私は希望のようなそれこそゴールドに輝く未来を展望している。
世の中の潜在的なニーズを満たし、人びとの生活を豊かに幸福にさせてくれるクオリティの高い作品をアウトプットし、時代の趨勢やメガトレンドといったものにシンクロすることによって、私たちもそんなことが達成できるのではないか。社会の潮流を眺め感じ洞察し、その流れに自然に任せるようなかたちで、真に求められるハイセンスなモノを世の中に送り出したい。
傑作といえるような作品を創作するためのヒントを、農業や栽培関係にも見出すことができると思う。例えば、これは専門用語でもあるようなのだが「間引き」もそのひとつだ。間引きとは種を蒔いた苗床で密生している苗を適度に調整しながら取り去ることであるが、それは何故かというと、一本一本の苗に充分な栄養を行き渡らせ、苗を立派に成長させるためである。
それ以外にも発芽したばかりの苗を育てる方法に関心を持っている。というのはベンチャーにおいては、製品は発芽したばかり苗であって、それを如何にして育てて栄養を行き渡らせて、世の中に役立つものとしてひろめてゆくかというのが至上命題であるからだ。
だから、その製品が利用されている現場から得られる、さまざまなノウハウは、農作物でいうところの栄養に匹敵するように思える。今現在はソフィア・クレイドルでは営業、宣伝、広告といったプロモーション活動を一切していない。そんな風なマーケティングであるので、切実にソフィア・クレイドルの製品を必要とされるお客さまからの注文が多い。そういった差し迫った状況に追い込まれたお客さまの現場に存在するニーズやウォンツを知ることによって、パーフェクトな素晴らしい製品に育てることができるのではないか。
ベンチャー創業期は人員や体制など諸々の面で経営資源が限られるだけに『選択と集中』は必須である。実はお客さまも一つの重要な経営資源である。ベンチャーの成長にとって追い風になってくださるお客さまが自然に集まってくださるようなメカニズムの確立もひとつの考え方といえるかもしれない。
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2005 年 01 月 26 日 : 光速の潮流の中で
au の CM ソング、「オレンジレンジ」の「花」は昨年の年間シングル CD 売上ランキング第 4 位を記録したらしい。自宅で仕事をするとき、「オレンジレンジ」の曲をよく流している。仕事がなんとなく捗るからだ。音楽には特別に不思議なパワーを感じる。
インターネットで調べてみると、「オレンジレンジ」というグループのデビューは 2002 年だ。私たちがソフィア・クレイドルを創業したのも 2002 年。
それ以前は、ほとんどの人は「オレンジレンジ」の曲を耳にすることは無かった。いまでは「オレンジレンジ」という名前は知らないにしても、ほとんどの人がどこかで彼らのメロディーを聴いたことがあるのではないだろうか。
初めて彼らの音楽を聴いたのは、会社近くのガソリンスタンドに設置されたラジカセから流れる「上海ハニー」という曲。2003 年の夏頃のことだった。なんとなくいい曲だなと思いながらその場を通り過ぎたのを覚えている。
2003 年の暮れの NHK 紅白歌合戦だった。そのステージで、彼らは「上海ハニー」を熱唱していた。初めて「オレンジレンジ」という名を知った瞬間だった。そして、早速、年が明けた 2004 年の正月に CD ショップで「1stContact 」という彼らのアルバムをゲットした。斬新さと初々しさと同時に奇妙な心地も感じつつ、その音楽に耳を傾けていた。
最近、少し余裕も出てきた。どんな曲がトレンドになっているのか探るべく、CD ショップに足を運ぶこともある。2002 年〜 2003 年は、会社の立ち上げで忙しくて、余力はほとんど無かった。
「オレンジレンジ」の例を挙げるまでもなく、音楽業界ではアーティストたちの浮沈がとても激しい。たった 2 年間で、国内音楽シーンの頂点を極めるほど、素晴らしい作品を創り、洗練されたプロモーションが展開されるケースもある。無論、その逆の方が多かろう。しかし、計測された年間の順位などにこだわらず、音楽の世界は、特別な醒めない夢の感じられる世界であることにずっと変わりはないだろう。
コンピューターを一種のメディアと捉えて、プログラミングを音楽でいうところの作詞、作曲のような感覚で、自分たちの思いを表現しようとしている。「カッコよさ」「クールさ」「トキメキ」「優しさ」「心地よさ」「驚き」「凄さ」などなど素敵な感嘆符をキーワードにして、それに触れる人の感情に共鳴するような作品を創りたい。ある意味では、ミュージシャンや画家、作家、詩人の思いに近い。
そして、クールさというような観点から自ら最高傑作として誇れる作品を、インターネットを介して、全世界の携帯電話に向けて配信したい。
究極の作品が完成し世界に浸透してゆく、その瞬間までは長い道のりだ。しかしインターネットの世界は、動き出せば光速のスピードで瞬く間に景色が一変する。
自ら世界を変革し、未来を創造することで、人生を生きる喜びを見出す。私たちの存在意義はそこにある。
作品が光速のスピードで世界中に拡がるか否かは、自信やプライド、愛情といったものを持って作品創りに臨むかにかかっている。