2006 年 01 月 04 日 : アーキテクチャ
日本語で「設計思想」と表現される、「アーキテクチャ」の重要性は言葉では語り尽くせない。
ただひとつ確かに言えることがある。それは確固たる「アーキテクチャ」を持つものはライフサイクルが長く、ロングレンジに渡って発展し続けるという事実であろうか。
例えば、Microsoft の場合。1981 年にリリースされたMS-DOS の上で動く Windows が 1985 年に初めて登場した。その上で動作するアプリケーション Office は Windows のキラーアプリケーションとして、Windows の普及に一役買った。今日、Windows は最も普及している PC 向けオペレーティングシステムとしての地位を築き上げた。
また、依然として現在の Intel の CPU も 1980 年代前半のマイクロプロセッサ 8086 のアーキテクチャの流れを踏襲したものである。
IBM にしても、1964 年に発表した Sysytem / 360 のアーキテクチャの流れを組むコンピューターがいまもなお利用されている。ORACLE のデータベースを扱う言語は今も SQL である。
IT 業界において、普遍性のある「アーキテクチャ」を発見し、それを世界初の製品レベルにまで仕上げ、マーケティングに首尾良く成功することができれば、その後に控える航路は穏やかなものとなるだろう。
ソフィア・クレイドルでも、創業期における最も重要なテーマとして掲げているのは、組込みソフト業界において欠かすことのできない「アーキテクチャ」である。
それを確実に見出すためのヒントはどこに隠れているのか?ということから事業を創めた。
最も重大な問題は、いつまでも膨らみ続けるソフトウェア開発ニーズにどうやって対処すべきか?ということ。それから、ハードウェア資源は限られた中で、どうやって小さくてしかも速いソフトウェアを開発すれば良いか?という問題であった。
そのためのソリューションとして、そんなソフトウェアが開発できる、プログラミング言語、データーベース、圧縮ツール、プロファイラーなどの開発環境を「統一されたアーキテクチャ」の下で研究開発している。
2005 年 12 月 10 日 : 時間+空間
「地球を手にとって眺めたい」というような発想は何百年も昔の人びとには有り得なかっただろう。
でも、科学技術が発展した現代に生きる人びとの中には、そんな願いを抱く人は数多くいる。古代と現代で、人びとの世界観は天と地ほど変化しているとも言える。
何がそうさせたのか?
それは飛行機であり、スペースシャトルであり、空や宇宙を高速で駆け抜けてゆく乗り物の発明ではないだろうか。
時折、大空を飛んでゆく飛行機を眺めはするものの、その可能性や意味について想像したり考えるのもたまにはいいものだ。
例えば、大阪から東京までの 500 〜 600 km の距離なら飛行機で 1 時間もあれば十分である。アバウトだけど人が歩く 100 倍のスピードである。逆に言えば、飛行機によって人の足は 100 倍になったという見方もできる。
飛行機の発明があって、人の移動距離の限界が 100 倍に延長され行動範囲が 100 倍に拡張されたということである。桁違いの能力の獲得は、人びとの生活や世界観を変革するものである。
同様に、コンピューターについてもそれは当てはまる事実である。コンピューターは人の頭脳の能力の限界を解き放ってくれるテクノロジーだと思う。そもそも人の頭脳にはムゲンの可能性があるだけに、コンピューターの果たす役割はさらに素敵なものにちがいないと確信してる。
飛行機以上に、人びとの世界観を変革するツールとしてのコンピューターの未来は永遠に果てしなくひろがっている。
2005 年 11 月 25 日 : ソフトウェアの進化
ソフトウェアとハードウェアの間には隔たりがある。
ハードウェアと違い、ソフトウェアは完成した後もメインテナンスすることで時々刻々と変化する。
要するにソフトウェアとは進化する概念なのだ。
ソフトウェア企業の明暗を分かつポイントは、これについての認識の差によるのではないかと思うほどである。
ソフトウェアの売れ方で特徴的なのは、ジャンルごとに売れるソフトウェアが決まっていて、一極集中型であることに尽きる。OS も、データーベースも、メーラーも、ブラウザも・・・すべてのソフトウェアについて実際に世界で使われているものは 3 種類以内に限られる。
では、利用者は何を持ってそれを選択しているのだろうか?
勿論、"クオリティ"である。
"クオリティ"とは、機能、スピード、使いやすさ、ルック&フィール・・・、それらを総合したものである。
ソフトウェアは時を経て進化できる。
それでは、どうすればソフトウェアのクオリティを、自ずと高まるように進化するのかを洞察すれば良いだろう。ソフトウェアのクオリティは、メインテナンスのフェーズで、プログラムコードが綺麗なものに書き換えられることによって飛躍するのである。
多くの組織では、製品を研究開発する者とメインテナンスする者が別であることが多い。
その傾向は大企業ほど顕著である。
「プログラマーの仕事」でも述べたが、ソフィア・クレイドルでは製品を研究開発する者とメインテナンスする者は同一人物。
製品の設計思想を初め、隅から隅までよく理解している者がメインテナンスするので、何処をどう直せば良いかのプロセスがスピーディであり適切だ。
しかも製品への愛着もある。製品の産みの親でない者がメインテナンスするのとでは雲泥の差が出てくるものである。
超一流の作品を創造するには、メインテナンスという泥臭い仕事も喜んで引き受けるくらいの心意気というものが求められる。
ソフトウェアというものは、メインテナンスを経て洗練されてゆくというのは事実である。
2005 年 11 月 14 日 : プロダクト ストラテジー
最終利用者が使うアプリケーションやサービスは具体的なイメージがつきやすい。アイデア次第ですぐに爆発的に売れる可能性を秘めている。それ故にビジネスを短期的に伸ばすには、アプリケーションやサービスの世界で勝負するのがベストである。
実際に使えるのでビジネスの感触をつかみやすい。ビジネスモデルが直感的にイメージできるから、多くの企業はアプリケーションやサービスの切り口からソフトウェアビジネスに参入する傾向が強い。
携帯電話向けソフト業界も例外ではない。ほぼ 100 % の企業がアプリケーションを開発するところから事業を展開している。アプリケーションの開発と保守の、生産性の向上を目指した開発ツールや開発環境の製品開発を専業している企業は、見つけるのが難しい。
要するに競合企業が存在しない世界である。このような"場"にこそベンチャーに相応しいビジネスチャンスが潜んでいたりする。
このビジネスは製品を研究開発して、マーケティングして、製品が売れ始めるまでに少なくとも 3 年の歳月が必要である。しかも製品が売れる保証はどこにもない。
アプリケーションやサービスの場合は、3 〜 6 ヶ月で結果は出る。大抵はある企業のニーズに応じて作られる。少なくともひとつは売れる可能性がある。従ってそれは堅実なビジネスモデルと言える。
最近は景気も回復し、IT を駆使した企業の情報化投資は活発に見受けられる。尚更のこと、アプリケーションやサービスのビジネスは、優秀な人材をできるだけ多く動員できれば儲かるようになっている。誰もがそこに集中しても何の疑問もない。
そんな背景があるから、少なくとも数年経たないと換金できないし、何の保証もないから誰も手掛けない、携帯電話ソフト向けの開発ツールや開発環境のビジネスにチャンスが自然と生まれてくる。
製造業において、製品を作るためのツールや設備は無くてはならないものである。生産性や製品の品質を向上させるためには必要不可欠といってよい。マーケットは必ず存在する。
開発ツールや開発環境はあらゆるアプリケーション開発に関わるものである。マーケットが顕在化した時、ポテンシャルは計り知れぬほど巨大だろう。
2005 年 11 月 04 日 : ポータビリティ
svHacker と SophiaFramework は、携帯ゲーム機や PDA など、世界のいろんな携帯端末向けソフトを携帯電話で使えるようにするソフト技術。これついて、発想の原点をまとめてみる。
私たちの身の回りには、NTTDoCoMo や au や vodafone などの携帯電話、iPod のような携帯デジタルオーディオプレイヤー、PSP や Nintendo DS、GAME BOY などの携帯ゲーム機、それから Palm や Pocket PC などの PDA など、携帯端末が数え切れないほどたくさん存在する。
そんな多種多様な携帯端末向けに、ゲーム、ビジネス、教育など無数のソフトがこれまでに開発されてきた。姿形こそ違えども、これらの各種携帯端末には 1 点だけ共通するものがあった。それは端末全体をコントロールする心臓部に相当するマイクロプロセッサが英国の ARM 社製で全く同じだという点。
現代の進化したソフトテクノロジーでもってしても、機械がソフトを自動的に製造するという夢は叶わない。魅力的なソフトほど人の手に頼らざるを得ないのが現実だ。ひとつのソフトを開発するのに何ヶ月も何年もの開発工数が費やされている。
IBM も、ORACLE も、そして Microsoft にしても、飛躍的な発展の礎になった、テクニカルな理由は他よりも抜群に秀でたソフトのポータビリティだった。膨大な費用をかけて開発したソフトを他のプラットフォームでも自動的に動作する仕組みが必ずと言っていいほど搭載されていた。
今回発表した svHacker と SophiaFramework は様々な種類の携帯端末向けソフトを携帯電話向けに自動変換する技術である。過去、偉大なコンピューター企業が採ったアプローチを単に踏襲したに過ぎない。けれども広く世界全体を見渡しても、他でこれをやっている企業は皆無だった。
ビジネスチャンスとは、大抵の場合、皆から忘れ去られた基本的な原理原則の中から見出せるものなのだ。
2005 年 11 月 03 日 : Software 2005
ソフィア・クレイドルを創業してからの 4 年間で世界 No.1 と誇れるものをいくつか創造し、製品レベルまで仕上げた。
1. Java と BREW の プログラム圧縮技術
2. BREW の ユーザーインターフェース技術
3. BREW の C++ クラスライブラリ技術
ハイテクベンチャーを経営して痛感するのは、世界を視野に入れてものごとを洞察する習慣の大切さ。世界 No.1 を創造するのは大変だけれども、それがハイテクベンチャーの宿命でもある。
最近、海外からの問い合わせが多い。それは世界に注目されている証かもしれない。
2005 年 11 月 02 日 : SophiaFramework 3.0 正式リリース