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Sophia Cradle IncorporatedPresident Blog : 2006年04月

2006 年 04 月 16 日 : Quite something

ベンチャー故に、絞り込んだ領域でソフトウェアに関する研究開発事業を営んでいる。

常に心掛けているのは "something" という雰囲気かもしれない。

何を意味するのかと言えば、さまざまな障壁を乗り越えて生まれた作品が、瞬間的に分かるようなものじゃつまらない・・・という発想である。

何か得体の知れぬもの。

世界を観察していると、ロングセラーと言われるものほどそんなオーラに満ちている。

誰にでも分かり易くプレゼンすべきなのかもしれないけど、"quite something"なものはきっと一筋縄ではいかないのだろう。

何故なら使う人の環境によって、それは生き物のように七変化するからだ。

そんなものがひとつでも創造できれば、心の充足感は計りしれないほどと思う。

だからこそベンチャーをする意義があるのかもしれない。

2006 年 04 月 16 日 : Virtual reality

ネットからダウンロードした曲に耳を傾けながら、同じ曲なんだけれどそのときの心の様相によってさまざまな仮想現実が時々刻々と生まれては消えている。

これといって物理的で素敵な何かを求めるわけではない。漠然と想像力豊かにしてくれるものを自然と探し求めている。

21 世紀という新しい時代は、なんとなくそんな方向に動き出している実感を得ている。

   y=F(x)

同じ関数 F でも x の値が異なれば、F の作用による x の結果 y の値もさまざまに変化する。

数学的にはそんな F のようなモノを創り出すことが僕の目標の一つでもある。

できれば結果である y の値は、それぞれのオリジナルとも言える x にとって最高にしたいという思いが確かにある。

2006 年 04 月 15 日 : Resonance

インターネットの時代で、最も心せねばならないのはスピード感ではないだろうか。

アインシュタインの特殊相対性理論によれば、物体は光のスピードを超えることができないと言う。

物理学での物体には質量が伴うが、人の意識や感情にはそれに相当するものが無い。

だからひょっとすると、そこには超光速の SF 的な世界がひろがっているのかもしれない。

インターネットビジネスの例ではこんな感じだ。

ネットの世界では、場所を異にする複数の人々が、同時にある情報を見て感じ思考し判断する。

その瞬間起こる興味深いことは、物理的に離れた人と人が共感するという現象である。

インターネットは、世界中遠くに離れた人々の意識が、光速を超えて共鳴し得るという事実を示唆しているように思える。

新しい時代では光速を超えたスピードで世界が変わるのかもしれない。

それだけにネットにおける情報発信の意義は高まるだろう。

2006 年 04 月 12 日 : 不易流行

「不易流行」という言葉がある。

かの有名な松尾芭蕉の俳諧理論を集約した概念で、芭蕉が創った言葉といわれている。

『去来抄』では、不易と流行に分けてこんな風に解説されている。

「去来曰く、蕉門に千歳不易の句、一時流行の句と云ふ有り。是を二つに分けて教へ給へる。その元は一つ也。不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず。不易は古へによろしく後に叶ふ句なる故、千歳不易といふ。流行は一時一時の変にして、昨日の風、今日よろしからず。今日の風、明日に用ひがたき故、一時流行とはいふ。はやることをする也。」

簡単に言えば、不易とは不変、流行とは変化を意味し、それらの根本は同じということらしい。

ご存知の通り、俳句は季語を含む五七五の三句十七音からなる定型詩である。

ともすれば、マンネリしがちな俳諧の世界にあって、どうやって道を切り拓いてゆくべきかという芭蕉の悟りが「不易流行」に込められているのかもしれない。

俳句ほどではないにせよ、携帯電話向けソフトウェアの世界にも、「不易流行」に通じる何かがあると考えている。

携帯電話では PC やサーバーといったような無尽蔵なハードウェア資源を期待できない。

けれども、十七音からなるたったひとつの俳句によって新たな境地が切り拓かれて人々の心に刻まれるように、携帯電話向けソフトウェアでもそれが充分に可能だと考えている。

未来永劫に変わらぬ原理原則のようなモノなくして何も始まらないし、そこから出発して一風変わったモノなくして普遍的な知の体系がひろがることもない。

不易から出発した流行の中から新たな不易なものを発見する。

そして不易なモノを系統立てて、コンパクトな携帯電話向けソフトウェアとして、ステップバイステップに積み上げてゆく。

僕たちの仕事は概ねそんな風に芭蕉の「不易流行」というスタイルを目指しているのかもしれない。

結論として言えるのは、僕たちの創っているものは日々変化に富むものかもしれないが、その基本は携帯電話に限らずあらゆるコンピューターに応用できるというコンセプトである。

2006 年 04 月 11 日 : 時空

昔、宮本武蔵は素手の柳生石舟斎に挑んだものの、全く歯が立たなかったという。

その時、石舟斎は武蔵に訊ねたらしい。

「鳥のさえずり、小川のせせらぎ、風の奏でる音 ・・・ これらの音が聞こえていたか」と。

武蔵には石舟斎しか眼中に無かったけれども、石舟斎は二人を取り巻く空間全体を把握していたということである。

石舟斎は大自然という偉大な力をも自分のものとしていたのだろうか。

これは、たとえば 2 次元と 3 次元の差に近い概念なのかもしれない。 3 次元の世界は 2 次元のそれを完全に覆い尽くし、遥かに広々としたイメージがある。

平面内では線で遮られていて向こう側に行けなくとも、3 次元空間ならば、その線をちょっとジャンプするだけでいとも簡単に向こう側に行けるという寸法だ。

何か素敵なモノを探している時。

次元を一つ増やして時空の場をぐっとひろげるなら、新しい発想というものはどこからともなくきっとやってくるだろう。

2006 年 04 月 10 日 : アプローチ

起業した当初最も思考を巡らせたことは、どうすれば如何なる競合が現れても生き残れるかという戦略と戦術であった。

自然界と同じくビジネスの世界も弱肉強食の厳しいルールに従って動いている。

強くなければ生きていけないのである。( 優しくなければ生きる資格がないとも言われるが … )

そのために己の力を付けなければいけないし、戦い方も裏の裏まで見通して考え抜かなければならない。

基本的な戦法というのは、競争相手が現れても一対一の戦いに持ち込むあたりにあると考えた。

ソフトウェア業界でのそれに相当する発想は、音楽の例から示唆される、曲のトータルなイメージが一人の作曲家から創られるごとくトータルな設計思想のようなもので勝負するということだ。

それで、多人数よりも一人で作業する方が圧倒的に秀でた結果が生まれるイノベーションとマーケティングのコンセプトにかかわる分野に集中特化した。

こうすればベンチャー企業以外は基本的に競争相手はいない。

何故ならば、大企業には僕と同じくらい土日もなく寝食を惜しんで働いている者も滅多にいない。そもそもそんなモチベーションも持ち得ないだろうし、自分の身に迫る危機や危険を感じることも少ないと思うからだ。

ベンチャー企業だけは競争相手として注意を払うべきである。

けれども全体的な傾向として言えるのは、直ぐに現金化できるビジネスに走るベンチャーは多いが、3 〜 5 年しないと結果が見えない気の長い事業に取り組む者は少ない。

そのような背景から僕が狙ったのは、世間で持てはやされる短期間で株式公開するようなベンチャーではなく、長期的なスパンで永遠の発展が望める堅実な事業であった。

2006 年 04 月 09 日 : Shield

村上龍氏の「シールド(盾)」という本が話題らしい。読んでいないけれど、TV で紹介されている様子を興味深く観ていた。

起業すれば何でも自由に決めれる代償として、自分の身は自分で守らなければならない。

大企業で働いていると、自分に迫る危険や危機は全くといっていいほど無頓着になる。

何故なら、大企業という SHIELD が安全地帯を形成して自分を守ってくれるからである。

それでは自然界はどうだろうか?

あらゆる生き物は自分の身は自分で守っていると言えないだろうか。

外敵から身を避けて命を守らねばならない、厳しい環境にある野生の生き物ほど周囲のあらゆる動きや気配に鋭敏である。心であらゆることを察知しているようにも思える。

21 世紀の高度情報化社会では、人の心に深く共鳴する何かが求められるに違いないと思う。そもそも僕自身がそんなモノを求めている。

それを実現するのに絶対に必要なのは、研ぎ澄まされた感性そのものであると考えている。

どうすればそんな感性を自分のものにできるのだろうか?

そのヒントは、 SHIELD が外された大自然に生きる生命と同じ境遇にこの身が置かれるあたりに隠されていると思う。

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