2005 年 09 月 01 日 : 見えざるもの
飛行機の速度は毎秒 250 メートル。人間が目視できるレベルの速さである。一方、光は 1 秒間で地球を 7 週半、即ち 30 万 km / s で空間を駆けるということらしい。速度もこれくらいに桁違いの差になると人間の目で捉えられる限界を超越してしまう。
目には見えないけども、誰かが光のスピードを測定したから 30 万 km / s という数字が弾き出されたのである。最初に光の速度を測定しようと試みたのは、デンマークの数学者オーレ・レーマーで、1676年のことであったという。それは誰かが光は直進していると思い、イマジネーションしたのが切っかけとなったのであり、決してその彼が光に加速度を与えたわけではない。
個人的には光の速度の測定やニュートンによる万有引力の法則、アインシュタインの相対性理論など、人々の目には見えないが故に偉大なものの発見に驚きを感じると共に、その背景にあるものに好奇心を奪われる。
誰しもが直ぐに凄いと分かるものは確かに優れている。過去の歴史から学べる真理がある。時代を変革するような真に偉大な発見というもの。それはあの有名な"エネルギー = 質量 × 光速の 2 乗"という物理学の方程式を挙げるまでもなく、大抵の場合、人々の目には見えない。しかしこの世界に確かにそれが存在するのも明白な事実である。宇宙の時間軸で考えればほんの一瞬でしかない人生であったにせよ、その中で何かそんなものを遭遇できるチャンスほど"感激"という言葉で表現できるイベントはないだろう。
同じように"幸せのかたち"っていうのも素敵なものであればあるほど、それはすぐそこにあるのに目にしたり形にすることができない漠然としたもののようにも思える。単純な発想だけれども、"幸せのかたち"を意識してイマジネーションを働かせる習慣こそが感動的なシーンにめぐり逢うためのコツといえるのかもしれない。
2005 年 08 月 30 日 : Idea
ベンチャーを創めるまではクリエイティブな発想の大切さを実感できなかった。自分をお客様の立場に置いて冷静に考えてみれば当たり前のことなのだが…。同じようなモノやサービスであれば、お客様は名が知れたブランドの方を迷わず選択するだろう。
だから無名のベンチャーが独立独歩で生きていくためには、他と一線を画するオリジナリティが必要不可欠である。要するにクリエイティブな発想が求められるのだ。「クリエイティブ」とは単にありふれた言葉に過ぎない。残念ながらクリエイティブな人に巡り合える機会は滅多に無いのが実情ともいえよう。
日本の学校ではクリエイティブな発想をしてもほとんど評価されないから、その訓練が疎かになっているのかもしれない。既に定められた平凡な解に誰よりも早く辿り着く能力が際立って評価される制度である。高い評価を得ようとして、そんな能力の開発に専念し無駄な時間を過ごしていることはないだろうか。
ベンチャーを創めてから痛感した事実ではあるが、近年のモノあまりの世の中では大企業においてさえも、クリエイティブな発想が希求されるようになってきたと思える。
クリエイティブな発想をどうやって磨くかが最大のキーである。異なる分野のものごとや考え方を組み合わせることによって、偶発的に新しい発見や発明が生まれる場合が多い。しかし、その組み合わせの中でもほんの一握りのものだけが偉大な発見や発明に繋がる。
人の意識には意識出来るもの"顕在意識"と出来ないもの"潜在意識"の2つがあるという。呼吸や消化活動、心臓の運動などは潜在意識が休むことなく働くことによって可能となっているらしく、どんな仕組みで動いているのか本人ですら分からないほど秘めたパワーを有するようだ。
さまざまの分野の多種多様なものごとを、広く深く学んで潜在意識の中に蓄積すること。無数の組み合わせの冒険と意外性の発見をイマジネーションに委ねる才能。その才能を育むのは仕事に賭ける自分の熱情である。それこそがクリエイティブに生きるための条件であるような気がする。
2005 年 08 月 07 日 : Engine performance
ネットでF1のドライバーズポイントを調べてみると、今シーズンは昨年まで数年間にわたって連戦連勝だったフェラーリに所属するシューマッハの成績が振るわない。それに代わってルノーのアロンソがトップを快走している。
ドライバーのテクニックやパフォーマンスなど相対的な変化による影響もあるかもしれない。けれども、マシンに搭載されているエンジンや乗り心地などのハードウェアやソフトウェア的な性能の差にもきっと何かがあるに違いない。トップF1ドライバーにしてもマシンが思うように走ってくれないと、チェッカーフラッグを一番に受ける栄誉を手にする願いは叶わない。逆に、たとえそんな高性能マシンに素人ドライバーが乗り込んでみても、百戦練磨のドライバーたちの遥か彼方の後塵を拝するだけだ。
プロフェッショナルにはプロフェッショナルにしか使いこなせないツールやシステムがあるわけで、感性や才能とツールとの一体感というのが最も重要なファクターなのだと思う。いくら才能に恵まれた偉才がいたとしても、その才能を発揮するためのツールがなければ折角の才能も永久に眠ったままだ。その才能に相応しいツールがあって初めて、この地球上に新しい創造に伴う感動も生まれる。
コンピューターは人間の知性や感性を増幅させるために生まれたツールである。最初はソフトウェアの概念が無くて、ハードウェアだけのコンピューターで柔軟性は無かった。しかしソフトウェアという概念の創造によって、今日のようにコンピューターは発展を続けている。ソフトウェアはハードウェアと違って柔軟に変化する性質を帯びている。だから"ソフトウェア"という名で呼ばれる。それは生物が何十億年もの期間にわたって進化を遂げてきた姿に似ている。
しかしそのソフトウェアの進化発展は、プログラマーという人間の知性と感性によって成し遂げられるのである。その先に待つ夢のある未来の創造は、超一流のプロフェッショナルなプログラマーの腕にかかっている。そんなF1ドライバーのようなプロフェッショナルプログラマーに必須の高性能エンジンともいえる"プログラム開発環境"を提供できる誇りや自信を持ちたい。そんな使命感に基づいて、ソフィア・クレイドルのチームはソフトウェア研究開発に取り組んでいる。
2005 年 07 月 27 日 : Identity
スポーツ、音楽、絵画などのアーティステックな分野では、"超一流"と言われるものほど、概してそれぞれに他と明確に異なる何かが必ず存在するものだ。例えばモーツアルトに似た誰かのことを聞かないし、イチローと同じような人も見たことはない。"超一流"という概念は真似が及ぶ範囲外の世界であるかに思えてくる。
ビジネスの世界でもきっとそれと同じことだろう。"超一流"の仕事を成し遂げようとするならば、真っ先に心掛けるべきは自分独自のオリジナリティを発掘し育成するという視点からものごとに臨む姿勢ではないだろうか。
ベンチャービジネスを創める動機としてお金儲けから入った場合、自分を取り巻くマーケットの情勢に否応なく従う傾向が拭い去れないだろう。ビジネスという観点からそれは至極当然なことではある。しかし、マーケットに流されて単に儲かるからという理由だけで創めたビジネスで、歴史にその名を刻むまでになった偉大なサクセスストーリーは未だ聞かれない。
創業当時から感じていたことは、現在のマーケットがどんな構造になっていようが、自分の才能が最大限に発揮できるジャンルに特化して拘り、それに徹して没頭するのみというアプローチこそが、"超一流"のアウトプットを生み出すコツに違いないという確信だった。
それでは時代のトレンドを超えた領域に踏み込んでしまって、現在の人々のニーズやウォンツとシンクロしないかもしれない。だが、自分のミッションを果たし有意義な人生を全うするという目的を達成するためには、他と一線を画すオリジナリティの発揮は欠かせない。それは必ず自分自身の中に存在しているのだと信じ、発見しようと試みるのも、ある意味では有効な方法だろう。
"時"は過去から現在、そして未来へと果てしなく永遠に流れゆく。その潮流には無限大のひろがりがある。だから自分の感性が人々のそれとシンクロする"時"が何時か訪れるだろうという予感だけは確かにある。
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2005 年 06 月 08 日 : Core concept -21-
今日(6/8)の日本経済新聞(朝刊)の3面に、純利益上位100社に関する興味深いデータが掲載されていた。利益率の高い企業には「唯一・無二」の製品やサービスがあるという。その結果として、利益が生まれ、財務体質が安定する。
「唯一・無二」の製品・サービスであれば、価格競争に巻き込まれることもない。もしそれが社会から求められるものであるのならば、その必要性や欲求の度合いに応じて結果的に売れるという現象に繋がる。
基本的な発想として、そういった他では絶対に得がたいものを創造しようとチャレンジするのがベンチャーのあり方だと思う。これまでに無かったものだけに人々から受け入れられない確率は高いかもしれない。いかなる製品であれサービスであれ、もし仮にそれが結果的に売れるのであれば必ずその理由がある。それを発見しさえすればよい。そのポイントさえ外さなければ必然的に売れるんだという信念が大切であろう。
どんな組織でもそうかもしれないが、企業の成長というのは生物が育つ過程に似ている。生命が誕生した瞬間からしばらくの間は著しくその姿は変貌を遂げる。しかし一旦基本的なかたちが形成されればその相似形で成長してゆく。個人的には企業もそんな風に成長するものだと思っている。創業直後の頃は激動の連続で、そのプロセスを経て、ある一定の枠組みが生まれ、その形が次第次第に大きくなるように。
ソフィア・クレイドルを出来る限り高収益な企業体にしたい。そのために大切にしている指標は売上高経常利益率50%以上、株主資本比率90%以上という数字である。会社の規模が小さい頃ほど、この種の数字は達成しやすい。だからこそ、今の段階からこれらの数字の達成がごく自然になされるような経営(企業体質)を目指したい。
(つづく)
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2005 年 04 月 23 日 : ハイブリッド・パワー
今日はいま話題の「ビジネスを育てる」ポール・ホーケン著を読書していた。これから起業される方にとって参考になる書籍として推薦できる。著者が創業したのはいまからかれこれ40年近くも前の話らしい。
いまでこそエリートだからその多くがベンチャー起業への道を選択する米国もその当時、日本と同じようにベンチャー起業を志す人は変わり者だったようで…。どの世界も時代は常に移り変わっているようだ。
この本の中に興味深い一節があった。
植物や動物が混血すると、時に「ハイブリッド・パワー(雑種の力)」というものが生まれることがある。混血する種それぞれよりも優れた特性を持ちはじめるのだ。…(P.252)
これを読み、ソフィア・クレイドルという組織は「ハイブリッド・パワー」を推進力にしているかもしれないと感じた。
スタッフの国籍はルーマニア、中国、セルビア・モンテネグロ、日本とさまざま。学生時代の専攻は文学、数学、物理、情報、電気・電子等など多岐にわたる。お互いに刺激を受けながら相乗効果を増しながら成長できるチャンスがあるというのは恵まれている。
2005 年 03 月 23 日 : 創造のために
日常生活において、整理整頓しないと時が経つにつれ部屋のモノは無秩序に乱雑に増え続ける。いつしかその部屋は飽和状態となり、新しいモノを全く受け付けなくなるだろう。だから、あるタイミングで私たちはいらなくなったものを捨てる。そうやって新しいモノを部屋の空いたスペースに入れるようなことをしている。
古いモノを捨てることによって新しいモノは自然に生まれるという教訓のようなものかもしれない。多くの人がずっと慣れ親しんできたモノや自分自身の固定的な観念をきっぱりと拭い去れないでいる。その結果、閉じられた世界から永久に脱却できず、いつまでも同じ地点を堂々巡りするかのように人生を過ごしがちだ。
ベンチャーであれば、新規性のあるビジネスの創造こそが突破口である。人びとにとって意外で新鮮な満足感をどうやって創り出せるかがその存続や発展を占うカギといえるだろう。
人間の脳細胞は数え切れないほど無限にあるように思えるが、実際は有限な存在でしかない。新しい何かを生み出すためには思い切ってこれまでの過去を全て捨てる去るのも一つの方法だ。
脳の中にある海馬には不必要なものは自ずと忘れさせてくれる仕組みが備わっているらしい。それによって人間は精神的なバランスをとっている。それをあるテレビ番組で知り、『忘れる』という一種の才能や能力みたいなものが興味深く思えた。
ベンチャー起業するにあたってたくさんのモノを捨てた。その結果、何か新しいモノを受け入れる余地を自分の中に創ることができたように思う。以前はできなかった大胆な発想もできるようになったりもした。
しかし、そんな風に生きていても過去の出来事はどんどん積み重なってゆく。なので、たまには過去を整理整頓し、新しき未来を展望するための段取りをせねばと思う。それによって、別の新しい世界が見えてくるような予感がする。
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