ホーム > President Blog : Sophia Cradle Incorporated

Sophia Cradle IncorporatedPresident Blog : etcetera

2005 年 01 月 19 日 : Paradigm shift

いくつかの会社でサラリーマンを経験した後に独立したのだが、ベンチャー創業の過程において、言葉では表現しつくせないほどのパラダイム変換があった。

昔、所属していた会社が世界でも有数の巨大企業だったせいもあるかもしれない。それと比較すれば、ベンチャー創業の日を境として、社会的に弱者としてゼロからのスタートだったわけで、天と地ほどのギャップに近かった。そこに自己の存在意義を見出せるというのも妙な話ではあるのだが…。

大企業であれば任される仕事というのは、こと細かく細分化されていて、全体からすればほんのごく一部に過ぎず、自分のすべての人生を賭けてまでやりたいといえるものに巡り合うことは難しい。平社員として過ごすことになる 20 代の頃はその傾向が強いのではないだろうか。しかし、若ければ若いほど仕事にかける思いや情熱は強いものである。私の場合、そこに大きな矛盾が確かに存在した。

あの頃は、社会や会社全体におけるその仕事の位置付けをよく理解することもなく、ただ只管、狭く、深く、なんとなく仕事をしていたことを昨日のことのように思い出す。

会社全体がどんな仕組みで動いているのかなどほとんど把握できていなかったし、それへの関心も全くもって希薄だった。自分でそう思わないにしても、実際のところ、大半の大企業のサラリーマンはそんなところなのではないだろうか。

そんな退廃的だった生活と決別するというのが、ベンチャー起業の理由でもある。

ベンチャーを創業するとなると、ある程度は商法、労働法、税法などの法律を知った上で、自らの力で行動しなければならない。創業当初は、本業以外のことでも、あらゆる必要なことすべてを短期間で猛勉強しながら、苦しい事業の立ち上げをしなければならない。

大企業のサラリーマンであれば、とあるシステムの研究開発をするだけでも良い。しかし、ベンチャー創業当初は、研究開発以外にも、経理や労務、営業、資本政策、資金繰り、人材採用など様々な多岐にわたる仕事を自分ひとりでやるしかないのが新しい現実といえよう。

最初の頃は、このパラダイムシフトへの対応に戸惑うことも多かった。チャールズ・ダーウィン進化論によれば、「生物が生き残るための条件は強さとか賢さとかではなく環境変化への対応力」ということらしい。ダーウィンの進化論を応用するならば、創業直後に激しい変化への対応を学習し、それをノウハウとして蓄積したベンチャーは、きっと凄まじいほどの生命力に溢れるに違いないと思ったりする。

ベンチャー的な生活も慣れてくると当たり前のようになってくる。呼吸するような感じで無意識に仕事をしている事実に、ある日、ふと気付く。仕事のON/OFFが存在しない。正月も、土日も、祝日も、この日記を書いているように、会社自体は休業なのだが、自分も家族も実質的に年中無休の状態が続く。

これが普段の当たり前の生活になっている。

これくらい仕事をしていると、会社の全体像や行く先が本能的に身体で分かるようになるのが不思議だ。また、こんな感じで仕事をしているからこそ、人生に充実感を覚えたり、遣り甲斐が持てたりするのかもしれない。このことは他に代えがたいベンチャー起業のメリットといえよう。 

ベンチャー起業を成功させる上で、大切な要素のひとつとして、「ヒラメキ」というものがあるような気がする。古来から、そういった「ヒラメキ」というものは、うとうとと眠りかけていたり、移動中、風呂などでリラックスしているときに浮かんでくるようである。ノーベル賞受賞者の談話などを読んだり、聞いたりしていると、大概はそんなふうにして革新的なアイデアが生まれているんだなと分かる。そのためには「潜在意識」の中でも仕事をしていることが前提条件になるらしく、そんな「ヒラメキ」が起こるか否かは自分の仕事への思い次第なのであろう。

ベンチャーの社長たるものには無意識の中でも仕事をしているような習慣といったものが要請されるような気がする。

  

2005 年 01 月 18 日 : 起業家の最終学歴

たまたま手にとった本(「ベンチャー経営論」)のあるページに興味深いデータがあった。

それは起業家の最終学歴に関するもので、1995 〜 1996 年のデータだが、いまもほとんどその傾向に変わりはないと思う。

それによると、最終学歴が大学院である起業家の構成比は日本が僅か 1.2 %に対して、米国は 26.1 %と大きくかけ離れている。(博士だけのデータがあるとすれば、その差はもっと開いていることだろう。)

だから、GoogleYahoo! など米国にはその名を全世界に轟かせるようなハイテクベンチャーが多いのかもしれない。

大学院は、専門性を核にした自己の創造性や独創性を磨くための場だと思っている。ハイテクベンチャーの起業家にとって、それは最も求められる素養のうちのひとつともいえる。

日本では大学院卒の起業家が少ない。ということは、裏を返せば、大学院で学ぶような専門知識を活かしたハイテクベンチャーが国内で成功する確率は高いのではないだろうか。それを足掛りとして、日本から世界へと飛躍できるかもしれない。

何しろ、単純に計算した競争率は米国よりも20分の1以下と桁違いに低いのだから。複雑な背景がもっとあるのかもしれないが、直感的にはそんな感じがする。

日本の場合、高学歴になればなるほど、人は保守的になるのがとても残念だ。そこに大きなチャンスがあるにもかかわらず…。

続きを読む "起業家の最終学歴" »

  

2005 年 01 月 11 日 : 携帯でもウイルスが…

携帯電話でもウイルスの問題が顕在化してきている。欧米を中心にウイルス感染被害が拡がりつつあるようだ。

ITmedia Mobileのニュース:「Skulls」の新亜種はFlashプレーヤーを装って携帯電話に感染

一年ほど前からニュースなどで時々報道されていたのだが、最近はこの種のニュースを頻繁に目にするようになった。これから、携帯電話でもウイルスが猛威を振るうことになるのだろうか。

パソコンにウイルスメールが送りつけられる度に鬱陶しさを感じる今日この頃。携帯電話でもやられるとなると堪ったものじゃない。

今のところ、SymbianOS というオペレーティングシステムが載っている携帯電話で感染するウイルスをよく聞く。SymbianOS といえば、日本ではNTTドコモやボーダーフォンの一部の最新機種に搭載されている。

一応、NTTドコモでは、SymbianOS のアプリケーションはネット配信していないし、利用者が勝手にシリアルケーブルなどでインストールできないからウイルスに感染する心配はない。しかし、ボーダーフォンの702NK などは自由にアプリケーションをインストールできるので、ウイルスに感染しないように注意が必要だ。

最近の携帯電話には「FeliCa」が搭載されるなど、財布としての機能まで果たすようになってきている。ウイルスによって携帯電話の利用者がパソコンと同じように、或いはもっと切実に悩まされることになるかもしれない。

これからウイルスのようなはた迷惑なものを、どうやって駆除するかということが、携帯電話でも重要な課題となるのではないだろうか。

今現在、キャリアなどが検証したアプリケーションしか携帯電話にインストールできないようにするのが最善策と考えられている。しかし、一般の善意のプログラマーが、自由に携帯電話向けのアプリケーションを開発し、インターネットで公開できないデメリットは甚大だ。

だから、携帯電話のウイルスを駆除する、或いは感染を予防するようなところにも、今後、ビジネスチャンスは拡がってゆくのだろう。

続きを読む "携帯でもウイルスが…" »

  

2005 年 01 月 09 日 : Bootstrap

ブートストラップ」というコンピューター用語がある。全く別々の存在である「ハードウェア」と「ソフトウェア」とが一体となって、コンピューターが稼動し始めるまでの一連の処理手順のことだ。

最初は「ROM」にハードウェア的に記憶された「ブートローダー」と呼ばれる、ごく小さなプログラムがメモリーに読み込まれ、ハードウェアの初期設定がなされる。そして、「ハードディスク」に記憶されている「オペレーティングシステム」が読み込まれ、コンピューターは動作可能となる。

昔、初めてコンピューターを勉強し始めた頃、鶏と卵の関係みたいなコンピューターの根本的な動作原理に興味を持って、このことを熱心に研究したのが懐かしい。

ベンチャー起業というのも、経営が安定するまでの一連の出来事はコンピューターのブートストラップに似ているように思える。製品とお客様、どちらが先かはっきりとしないが、会社がある程度軌道に乗ってくると、なんとなく製品とお客様とがハーモニーを成すように感じる。

お客様から必要とされるもの、欲せられるものが製品として提供される様が、次第次第にパーフェクトに近づいてゆく。

コンピューターも ROM に記憶されたブートローダーと呼ばれる極々小さなソフトウェアが無ければ動作しないわけで、コンピューター全体からすればそれが最初の重要なキーとなっている。

ベンチャー起業においても、コンピューターのブートローダーに相当するような、キーとなる小さなきっかけが掴めるか否かでその後の道のりは大きくことなってくるのではないだろうか。

創業して 3 年が経過し、お客様の数もまもなく 100 件を超えようとしている。しかも、時の経過と共にお客様の数の増加の勢いは加速している。最初はなかなかペースが上がらず、歯痒い日々を過ごすことも多かった。

幸いなことに、ある日を境として世界が変わったかのようにお客様が増えている。これも最初のお客様から始まっているわけで、最初のお客様から注文書をいただいた感動は忘れえぬ思い出として脳裏に強く刻まれている。

スタッフがこの時の感動と感謝を忘れない限り、きっとベンチャーを弛みなく成長を続けるんだろうなと思う。

ここまで来るには地道なマーケティング活動が続いた。もともと押し売りのようにして、製品を販売する性質ではないので、営業的には苦戦することが多かった。逆に言えば、それが良かったといえるのかもしれない。

これまで特に意識してやってきたことは、お客様との対話だ。販売代理店網を創って、製品を販売するのではなく、当社がお客様に製品を直接販売する道を選択したので、必然的にお客様との対話が続いた。

製品が完成すれば、メディアに流す、プレスリリースの文章は、丁寧にどの仕事よりも力を入れて努力した。そして、いろんなメディアに掲載されることが叶った。製品開発で多忙な時期でも、携帯 JavaBREW の技術情報の文章を寄稿したり、情報発信に努めた。

それらをきっかけにして、お客様との対話が始まったように思う。最初は製品の無償評価版の提供をし、お客様から評価版を試用した感想や印象、評価といったものを根気強くヒアリングした。お客様も忙しいので、なかなか本音を話してくださらないが、次第に製品のどこを改善すれば、お客様に受け入れられるのかが分かってくる。同時に、お客様との信頼関係も深まっていった。

要はお客様との対話を繰り返しながら、製品の機能をゆっくりとバージョンアップしていった。閾値とはこういうことをいうのかもしれないが、感覚的なのだが、製品のレベルがある段階を超えた時点で注文が増え出したように思える。インターネットや i モードの利用者がある時点を境にして、急増したあの感覚に近いように思える。

お客様との対話を根気強く続け、それをフィードバックし製品を育てる。そして、お客様からの注文をいただいた時の感動と感謝を大切にし、堅実、着実な商売を継続することこそがベンチャー起業の王道のような気がしてならない。

続きを読む "Bootstrap" »

  

2004 年 12 月 07 日 : 風を感じる日

ヨーロッパの IT 企業の幹部の方が来社された。ソフィア・クレイドルのソフトウェアテクノロジーに関心があったらしい。興味深い話もあった。

今、ヨーロッパでは携帯 Java や BREW のモバイルアプリケーションのマーケットが急拡大しているらしい。日本より勢いがあるかもしれない。

ハードウェアの急激な進歩に伴い、携帯電話でも、3D を駆使した高度なゲームなどが当たり前のようになってきた。

ゲーム専用機が辿っていった道筋に沿って進んでいるのだろうか。携帯電話のゲームもプレイステーションのようなものに進化していきそうだ。

ソフィア・クレイドルの研究開発しているソフトウェアテクノロジーに対するニーズも、以前よりも強くなってきている。ハードウェアとソフトウェアは車の両輪である。素晴らしい携帯アプリを制作するにはバランス感覚が大きくものをいう。

近年の目まぐるしいばかりの携帯電話のハードウェアの進歩は、追い風であり、チャンスでもある。

米国、中国、韓国など世界中の国々から、評価版提供申し込みなどの問合せ件数が、時間の経過と共に増えている。商品の操作画面、マニュアルなどが英文化されていない。海外のお客様を待たせしている状態である。

携帯 Java 専用アプリ圧縮ツール SophiaCompress(Java) に対するニーズは確かに感じとれる。世界マーケットを見渡しても、SophiaCompress(Java) には類似製品はほとんど無く、圧縮性能は世界でも最高水準である。(競合がないからという話もある)

そろそろ世界デビューのタイミングなのかもしれない。

NTT ドコモの i モードの海外市場は、国内の 10 分の 1 しかない。しかし、携帯電話向け Java や BREW のマーケットに関しては、海外は国内の 10 倍以上と桁違いに大きい。

こういう事情もあって、まずは SophiaCompress(Java) から海外マーケットへの取り組みに着手しようと考えた。

SophiaCompress(Java) に関する研究開発一筋の、いまやソフィア・クレイドルを代表するプログラマー( 23 才)に海外対応を依頼した。若くても世界の仕事ができる。ベンチャーで働く特筆すべきメリットである。

大企業の場合、特別選抜されたごく少数の幹部候補でも無い限り、20 代の頃は下積み時代となる。若い頃はなかなかビッグチャンスというものは巡って来ないものだ。

20 代前半で世界に挑戦できるということは、その後の人生に大きな影響を及ぼすだろう。ベストオブベストの結果を見出せるように、全力を尽くすつもり。ちょっとした成功体験の積み重ねが、掛け替えのない自信へと繋がってゆくのだから。

来年は動きのある一年になりそうな予感がする。

  
<前のページ |  1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7  |