2005 年 10 月 12 日 : 希少価値
ダイヤモンド、プラチナ、金といった鉱物資源は希少価値があるからその値段もそれなりに高い。一般に、ベンチャーが開発する製品やサービスは過去に存在しなかったものが多い。言ってみれば希少性がある。だからその希少性を活かす戦略や戦術が重要なポイントとなるだろう。
ベンチャーが創り出した製品やサービスが威力を持つものであればそれを手にする顧客は得をしたと思うだろう。ものごとの価値判断の尺度は人によって様々であるけれどそんな希少価値のあるものを開発しようとする姿勢が重要だ。
また、単純に考えれば製品やサービスはたくさん売れば売れるほどよいかに思えるかもしれない。しかし 100 円のものを 100 個売るのも、10000 円のものを 1 個売るのも売上高という観点からすれば同じだ。もしそれが同じものであったとするならば 100 円で売れるよりも 10000 円で売れた方が良い。
創業間もないベンチャーはヒト、モノ、カネといった経営資源が限られる。であれば、100 円の製品やサービスでも 10000 円の価値があるものに変えてしまうマジックある発想は欠かせないだろう。そのひとつは販売する数量を限定する方法である。オリジナリティのある商品やサービスの販売数量を限定するとそれに応じて価値は上昇する。広告や宣伝をする必要もなくなる。
販売数量を 100 分の 1 にすることで、その製品やサービスの価値が 100 倍以上になることもありうる話である。そういったアプローチを採ることで、ベンチャー企業は利益率の高い経営が現実のものとなり会社にキャッシュが残り健全なかたちで総資産が増えてゆく。それはベンチャーが成長するためのひとつの方法である。
2005 年 09 月 19 日 : V / P
人は何を以って判断しモノを買うのか、ということをベンチャーを創めてから考えるようになった。
シンプル&ロジカルに考えるなら、製品やサービスの価値を V 、価格を P とした時に V ÷ P の値が 1 より大きければ買いだ、という当たり前の結論に達する。
厄介な問題は、製品やサービスの価値 V を金額に換算し表現するのが、新しいコンセプトのモノほど難しい点にある。突き詰めればベンチャーのマーケティングとは、自社の製品やサービスの新しい価値 V がその価格 P を上回っているという事実を、お客様に分かりやすく具体的にプレゼンする過程であろう。
新しい製品やサービスは実際に試してみると判るものが多いのではないだろうか。だから最初にどういう理由でどのようなお客様に試してもらうか、のシナリオ・プランニングが重要だ。
とりわけ大切なのは"値付け"になってくる。
今は全ての製品について30万円、50万円、100万円という、3種類の価格で販売している。
その考え方の基本は、どんなお客様に対しても
V ÷ P > 1 (敢えて理想をいえば 10 以上の値になることを想定してデザインしている)
を押さえた上で、実際に購入してその V の値を実感してもらうところにある。
年収数百万円の人が 3000 円の CD を買う日常の生活シーンを想像してほしい。音楽に興味のある人ならば、少し試聴してなんとなく良さそうに思えばその CD を購入するだろう。
それと同じ感覚で考え値付けした。年に数億円以上の予算がある企業や組織にとって 30 万円のソフトを買うということは、ごく普通の人が 3000 円の CD を購入するのに近い。
製品やサービスを初めて使ったときに、価値 V と価格 P の関係は明白になる。
V ÷ P の値が1を大きく超えれば超えるほど、そのビジネスは安定した上昇気流にのってゆくことだろう。
お客様が V ÷ P の値をどう実感するかにそのビジネスの未来は委ねられる。
2005 年 09 月 15 日 : All-in
アイザック・ニュートンはリンゴが木から落ちるのを見て"万有引力の法則"を発見した。
"万有引力の法則"はアイザック・ニュートンが創り出したものではなく、この宇宙に存在していただけなのである。
ベンチャー起業では創造した製品やサービスをマーケティングし広く普及させるのが最大の難関であると言われる。
アイザック・ニュートンの逸話が示唆するものは、もし製品やサービスが人々に受け入れられるとするのならば、そもそもそのマーケットが存在していたという事実ではないだろうか。
であるとすれば、存在するけれどまだ人々の目に触れていないマーケットをどうやって発見するかが勝負の分かれ目となるだろう。
ポーカーの専門用語で、自分の持ち金すべてを賭けて最後の勝負に挑むことを"All-In"と呼ぶらしい。ベンチャー起業というのは一種の"All-Inの連続"に近い話だな、とふと思ったりする。
何故なら、自分の財産と時間のすべてをベンチャー事業に投入する話だから。そうなれば必然的に365日24時間年中無休で、手掛ける事業のマーケットの存在を無意識のうちにも意識してしまう。
その結果、ある日突然そのマーケットが自分の前に姿を現すといったところであろうか。
2005 年 09 月 15 日 : リニューアル
今月はホームページのリニューアルで忙しい。営業活動はWebのみなので自然と力が入る。製品のマーケティングばかりでなく、デザインや色調の修正などにもこだわりを持って探究している。
これで5回目のリニューアル。リニューアルするたび売上と利益もアップしているので今回も努力したい。
10月から第5期が始まる。それと歩調を併せるようにして新製品のβリリースを"新月"の日の2005年10月3日から開始する。
2005 年 08 月 27 日 : Infinite
「おいしい牛乳はどうやったらできるのですか」
ある人から訊かれて牧場主は答えた。
「幸せな牛はおいしい牛乳を出しますよ」
至極シンプルなお話ではあるが、そうなんだ、と素直に共感した。大自然のなかひろびろとした牧場にて、気の合う仲間と語らいながら幸福に過ごす牛たちから美味しいミルクというものは生まれるのである、と。
この言葉にあらゆるものに通じる汎用性と普遍性が含まれているように感じた。一般に成功するのが難しいと思われているベンチャー起業にも当てはまると思う。
人々から喜ばれる製品やサービスを提供できるならそのベンチャーには確かなレゾンデートルがあるわけで、理論的に間違いなく存続できるし自ずと成長曲線を描くものである。
「人々から喜ばれる」ということが大切なのであるが、そうなるためには商品やサービスを提供する側が幸福であること。それが必要十分条件といっても良い。
その仕事をしていて幸福感が得られているかどうか。充実した人生を送るための秘訣なのだと思った。
2005 年 08 月 24 日 : Threshold
"閾値(Threshold)"という言葉をご存知だろうか。"閾値"は生理学の専門用語らしい。感覚器は刺激によって静止状態から興奮状態へ変化する。学術的には、その変化を惹き起こすのに必要な刺激の最低レベルのことを"閾値"と呼んでいる。"閾値"以下の刺激は何の意味も成さないということである。
ベンチャーを経営し事業を成功させるつもりならば、この"閾値"の問題は避けて通れない。なぜ人は製品やサービスを買うのかという根源的な問いの解を発見し行動・実践すれば、ベンチャー事業は間違いなく成功する。人は製品やサービスを買う時にそれぞれに基準があり、基準を超えるものであるから買うといっても良い。衝動買いというのもあるがそれは基準が見失われた時であって、それ以外では製品やサービスを買う時に自分の基準に照らし合わせて判断している。
判断の基準は、メジャーな例として挙げてみるライブが分かりやすいかもしれない。例えば、ケツメイシのライブには行くけれどもオレンジレンジのには行かない人もいる。当然その逆もあるだろう。またどちらのライブにも行かない人もいる。(反対に"絶対値"というのもありそうだ。例えば弊社のスタッフにはそれぞれ絶対に行くライヴがある)
人によって閾値の値はさまざまである。けれども閾値を遥かに上回る製品やサービスを提供することができれば、それは爆発的なヒットという現象に繋がると理論的に考えられる。逆に言えば、多くの人々の閾値を下回る製品やサービスはどんなに努力したとしても意味が無い。ほんの僅かの差なのだけれどもその差が致命的となって全く売れない結末を迎えてしまうからだ。閾値を超えることによって初めてその努力も報われるというのが現実のビジネスシーンである。
だからビジネスを形にするためにはなんとしてもその閾値を突き抜けなければならない。
極めてやっかいな問題がある。製品やサービスの"閾値"を定量的に図る道具や手段が無いことである。閾値まであと一歩のところにいるのに、それが具体的に見えないから折角の努力が無駄になることが多いのではないだろうか。
ソフトウェアビジネスで印象的なのは、ほんの少しある機能を追加したり、ある部分を使いやすくするだけで製品が急に売れ出すという局面の移り変わりである。0℃で水が固体から液体に、100℃で水が液体から気体に変化する様にそれは似ている。ほんの1℃しか違わないのに結果は全く異なる様相を示すのだ。
それではどのように取り組めば、閾値を遥かに超えたビジネスを展開できるのだろうか。最終的に自分の目標設定を出来る限り高く設定し、それを実現すべく常に真剣な眼差しで打ち込む姿勢が大切なのではないかと自分自身を戒めている。
2005 年 08 月 22 日 : Value
事業によって本質的な価値はさまざまだと思う。それぞれの事業でその価値について考えてみるといろんな発想が浮かんで来るものである。ソフィア・クレイドルの製品を購入してくださっているお客様は、携帯電話向けアプリケーションを開発している企業である。
お客様はソフィア・クレイドルの製品をなぜ購入されたのか、或いは購入しなければならない本当の理由は何か?
というようなことをよく考えてみると、意外と次の展望が開けてくる。当社製品の本質的な価値は『時間短縮』である。例えば、携帯電話向けアプリケーション開発のある工程に何人日かの工数を要していたとする。それが当社製品を使うことで、その工程の必要性そのものが無くなるのである。それ故に、これまで6ヶ月の期間を要していた開発作業が5ヶ月で済んでしまったりするというような価値をお客様に提供しているわけだ。
お客様に当社製品を買うだけの価値があるということを簡単に理解してもらうにはどうすれば良いだろうか?製品を販売する単位は"円"であるのに対して、その製品の価値の単位は"時間"である。これでは単位が異なるので、瞬間的に比較することはできない。小学校で単位を同じにして二つのものを比較したようなアプローチを採る必要がある。
少々複雑なのはお客様によって時間の金額的な価値が異なるということである。時給800円で働く人もいれば、時給5000円で働く人もいる。状況はそれと似ている。
ある携帯電話向けアプリケーションをビジネスで使うことによって、例えば月に100万円の利益が出るとする。もしその携帯電話向けアプリケーションを1ヶ月早く提供できるとすれば100万円多くの利益を得ることができる。そうであれば、それに対して30万円のコストを費やしても充分に元が取れる。
ネットのサービスであればタイミングも重要である。例えばそれが業界初のサービスであれば、一番最初にそのサービスを提供することで得られる顧客獲得の価値というのは、サービスを前倒しにすることから得られる利益の増加分以上に大きいものである。
ヨーロッパやアメリカなど海外に仕事で行く場合、50年以上前ならば移動手段は飛行機ではなく船であったが、今は船ではなく飛行機を利用するのが常識だ。何故ならば、現代は飛行機の方が安く時間の価値がますます高まっているからである。