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2005 年 10 月 12 日 : 胡蝶の夢

荘子の斉物論篇に"胡蝶の夢"という話がある。

荘周(荘子の著者)が夢の中で我を忘れて胡蝶として楽しげに心ゆくままに空を飛んでいた。けれども目覚めると胡蝶ではなくて自分は荘周そのものであることに気付く。胡蝶が夢の中で荘周でいるのか、あるいは荘周が夢をみて胡蝶であるのか。その区別がつかないのは何故だろう。

荘子ではあらゆるものついて差別や区別はなくてすべてが等しい価値を持つという万物斉同という思想が一貫して流れている。

胡蝶の夢の話で面白いと思ったのは夢も現実も等しく同じとする考え方である。そんなことは現実離れした夢幻だと最初から諦められていることが多いのではないだろうか。

夢が現実なのか現実が夢なのか荘子によれば定かではない。等しく同じものと見なすこともできる。そんな風にとらえる方が希望が持ててなんとなく元気がわいてくる。

客観的にはソフィア・クレイドルが創造しようとしているモノは夢の話かもしれない。逆に現実と夢を同一視して現実から覚醒して夢の中へいってみるのもひとつの発想の転換ではないだろうか。

  

2005 年 10 月 12 日 : プログラミングのかたち

近頃、何千年もの時を経て現代にまで伝わる中国古典をよく読む。流行のビジネス書を読む感覚では全然進めない。一字一字、象形文字のかたちに込められた趣向を凝らした文章は読んでいて味わい深い。読む度に新しい発見がある。今の時代にも通用する中国古典には想像を超える何かがありそうだ。

ソフィア・クレイドルで創っているのはコンピューターへのメッセージであるプログラムである。プログラムも一種の著作であり読み手がいるとするならば、その中には中国古典のようにクラシカルなものとして永続性を保つものもあるかもしれない。そんなものを創造できたら最高だろう。

中国古典を読んでいて気付くのは、時を超えて通用する普遍性、様々な場面に適用できる汎用性、無駄な部分が一切ない簡潔性、首尾一貫した論理性、面白いストーリー性、そして何よりも文章に美と調和がある。論理性などは文学作品や詩と違いプログラミングと共通する要素であるかもしれない。

プログラミングの世界においてもこんな風にクラシカルな存在として次世代に遺すことができればと願う。様々な分野において真にプロフェッショナルな仕事にはそういった雰囲気があると思える。

  

2005 年 10 月 10 日 : svHacker by Sophia Cradle

英国にある ARM 社をご存知だろうか。携帯電話やPDA、ゲーム機、デジカメなどの組込み機器向けマイクロプロセッサを製造販売している会社である。アップルのiPOD、ソニーのPSP、Nintendo DS のプロセッサも ARM 社製である。組込み機器の分野ではそのシェアは全世界が約 80 %を占めるほどメジャーな存在だ。

ソフィア・クレイドルでは、ARM 社が提供するマイクロプロセッサが携帯端末の急激な普及にともなって世界中にひろまると見込んでソフト事業を展開している。そのひとつのテクノロジーが近日中に発表を予定している"svHacker"なのだ。

それでは"svHacker"とは何なのだろうか?

AUの携帯電話には ARM 社のマイクロプロセッサが搭載されていて、その上に米国 Qualcomm 社の OS があり、BREW というソフトプラットフォームがその OS の上に載っている。携帯電話に ARM のマイクロプロセッサが載っていることは極めて魅力的である。何故ならば、iPOD、PDA、PSP、NintendoDSなどで動作するソフトが携帯電話で使えるようになるかもしれないからである。(NTTドコモや vodafone の携帯電話も大半の機種で ARM 社提供のマイクロプロセッサが利用されている)

それを阻む障害が AU の携帯電話の BREW の仕様にあり致命的なものであった。それは C 言語で利用が認められている大域変数(static variable)が使えないこと。それから ARM の浮動小数演算などの標準組込み関数が使えないのだ。

BREW の仕様を超えて大域変数を利用可能にするのがsvHackerである。ARM の標準組込み関数へのアクセスは SophiaFramework という製品によって実現された。

BREW の仕様の範囲外の話なのでソフィア・クレイドルとしては保証の限りではない。けれども iPOD、PDA、PSP、NintendoDSなどで動作するソフトが 携帯電話に移植され利用可能になれば携帯に新しい視界がひらけるような気がする。

  

2005 年 10 月 06 日 : テレポーテーション

テレポーテーションとは物体がある地点から別のある地点へ距離の隔たりを超えて瞬間的に移動する現象のことをいう。このSFめいた話が現実のものと空想してみた時、私たちのビジネスの価値はまさしくこれじゃないのかと思った。

x,y,z軸から構成される3次元空間に状態s軸を導入して4次元空間へと拡張してみる。もしお客様がソフィア・クレイドルの製品を手にすれば、例えばプログラムの圧縮作業とかユーザーインターフェースの開発作業とかをショートカットして瞬間的に次の状態に移り変わる。

ある意味でこの状態遷移は一種のテレポーテーションというわけで、視点を変えれば夢のような出来事を私たちは実現しているんだと自負することもできる。

その時注意が必要なのは、テレポーテーションする際の安全性ではないだろうか。『ザ・フライ』ではテレポーテーションの際のささいなバグが悲劇を招いた。それは私たちの製品の未来にとって重要な教訓になりそうな気がする。

想像以上に便利なツールであるからこそ、安全性というものに細心の注意を払わなければならない。

  

2005 年 09 月 28 日 : +∞ のソフト技術

SF 作家の George Johnson 氏の的を射たコメントからもうひとつ。

"コンピューターは自分自身をてこにして進化発展を遂げる性質を持つ。言い換えれば、未来のコンピューターは現代の進化したコンピューターを使って創られるということだ。このサイクルは停止することなく永遠であり無限にポジティブフィードバックのスパイラル曲線を描く。"

過去の歴史を紐解けば、George Johnson 氏が述べるプロセスを経てコンピューターは進化発展し今日に至っている。職人によって施される幾重にも重層的に漆塗りされた漆器に味わい深さを覚えるあのフィーリングに近いかもしれない。そんな無限大"+∞"に通じる流れに身をゆだねる姿勢から未来への理想の結果が生じるのではないだろうか。

未来にタイムトリップして世界を展望した時。多層的な構造を織り成すユビキタスなソフトウェアについて願うこと。そのソフトを構成するいくつかの層は、ソフィア・クレイドルのソフト技術によるものであってほしい。

携帯電話向けソフト技術で重層的な構造を持つものはほとんどないが、過去のコンピューターの潮流から洞察すればそうなることは自明のことのように思われる。何年先かと時期を特定することは叶わない。けれども早かれ遅かれそんな時代は自ずとやってくるだろう。

  

2005 年 09 月 27 日 : +0 のソフト技術

無限小 Infinitesimal の値 +0 は、0 よりは大きいけれども如何なる正の実数よりも小さな数として数学的に定義される。

SF 作家の George Johnson 氏が興味深い発言をしている。

"情報には質量や重さといった概念がない。だからコンピューターは実体のあるモノを扱う従来の機械とは違い何処までも無限に小さくできる。"

ムーアの法則は「半導体の集積密度は 18 〜 24 ヶ月で倍増する」という法則である。換言すれば"同じ機能のコンピューター"が 18 〜 24 ヶ月ごとに 2 分の 1 だけ小さくなるということだ。

ムーアの法則が永遠に成り立つとは一般には思われていない。いつか限界が来るとほとんどの人は思い、そこに思考の壁を自ら作っている。半導体を前提としたコンピューターについては当てはまるかもしれない。しかし"コンピューター"と"半導体"は独立した事象と捉えた方が思考そのものが自由に解き放たれ発想がひろがる。

ソフィア・クレイドルの究極のビジョンは、George Johnson 氏がいう無限小の値 +0 のサイズにまで超小型化されたコンピューターにおけるソフトウェア技術面でのブレークスルーである。だからこそ" +0 のコンピューター"向けソフトを記述するためのプログラミング言語とその言語によって記述されたソフトを圧縮する技術に非常にこだわりがある。

肉眼では見えないほど微細な生物細胞の核にあるといわれる遺伝子 "DNA" には、現代のコンピューターでも瞬時に解読できないほどの情報が内在する。

無限小 +0 コンピューターの謎を解く鍵はあらゆる生命が持つ玄妙な本質にあるのかもしれない。

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2005 年 09 月 24 日 : Blog検索エンジン考

BLOGを書く人が増えている。

それに伴って膨大なBLOG情報がインターネットに溢れるようになってきた。自分にとって価値のあるBLOGを見つけ出せないジレンマに陥る傾向に拍車がかかる。BLOG 検索エンジンが次のビジネスチャンスになりそうだ

BLOG 自体はシステム的に複雑でなくて、それなりの人が取り組めば実現可能なソフトウェア技術である。その証拠に世界中でいろんな人が様々なBLOGシステムを開発し発表している。

しかしBLOG 検索エンジンに関しては従来のソフトウェア技術をブレークスルーするものをいまだ知らない。自分のフィーリングに合ったBLOGを検索する術がない。

新しいBLOG検索エンジンに関してひとつ思うことがある。BLOGというのはひとつの著作であり、一般的な傾向としては自分にとって読む価値のあるものは、文体や言葉、その連なり、その音の響きが自分のとって何処となく心地よいものではないか。

SPAMメールを排除するシステムには学習させることによってメールの内容からSPAMと判別するものがある。個人的に利用しているSPAMメールフィルターにはこの"ベイズ理論"という数学の確率理論が使われている。その精度に満足している。

ネットで調べると、Thomas Bayes氏は18世紀に生きた、聖職者兼数学者のイギリス人だったらしい。何百年も前の数学的理論が現在のコンピュータに応用されているだけに、Thomas Bayes氏の偉大さが窺い知れる。

"ベイズ理論"によれば、ある事象が発生する確率は過去の同じ事象の発生頻度によって概ね予測できるという。言い換えれば、その原因から起こる結果についての確率が分かれば、その結果を引き起こす原因が分かり未来を見渡せるということである。

この理論を応用し、自分のフィーリングの尺度でBLOGを数値化できれば、その人にとって心地よい新しいBLOG検索エンジンが創造できるかもとふと閃いた。

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