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Sophia Cradle IncorporatedPresident Blog : Strategy & Tactics

2005 年 10 月 13 日 : 定員限定

2002 年 2 月の創業以来、スタッフの定員は 16 名限定で"ソフィア・クレイドル"というベンチャーを経営している。将来、しかるべき条件が整えばその定員を増やすことは充分にありえるけれど、当分の間は定員 16 名で事業運営しようとしている。

ベンチャー事業にはその内容に応じて適正規模があると思う。要は 16 名という規模に押さえることで必然的に事業内容を絞らざるを得ない状況を創り出そうとした。そうすると一緒に仕事をするスタッフも自ずと少数精鋭となる。適正規模を維持することで、その集団が生み出すアウトプットが自然に極大化するシステムが重要だと考えた。

先日の BLOG で紹介したマイクロソフト創業時の成長の奇跡を見てほしい。著しい売上の伸びを遥かに下回るペースでしか人員は増えていない。

ソフトウェアビジネスの場合、結果が具体的な数字として現れるには少なくとも 3 年かかる。表の場合、1979 年に 1,356 千ドルの売上の数字と 1975 年の従業員数 3 名という数字。1975 年に 3 名で開発したソフトウェア( BASIC というプログラミング言語)が 1979 年に売れ始めて 1,356 千ドルと読むこともできる。 3 名で年間 1,356 千ドルの売上というのは決して悪くない数字だと思う。それにマーケティング理論の S 字形の売上曲線をたどればしばらくは何もしなくとも売上は増える一方である。これがソフトウェアビジネスの真髄といえよう。

[マイクロソフトの成長の軌跡 : 1975-1980 のデータ ]
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年度(年)  売上高(千ドル)   伸び率(%)   従業員数(人)
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 1975                     16                     −                         3
 1976                    22                    38                          7
 1977                382                  636                        9
 1979             1,356                  256                      13
 1980              2,390                 76                      28
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          ※ 「マイクロソフトシークレット」より

プロフェッショナルな世界ほど定数というものが限られている。それによってオートマティックにクオリティが維持される機構が働く。J リーグならその最高峰である J1 は 12 チームでありプロ野球でも 1 軍は 12 チームである。さらに各チームで正式な選手として登録できる人数にも定数が決められている。

だからこそ個々の選手が切磋琢磨しながら自分に秘められた潜在能力をできる限り顕在化させようとする。すると感動的なプレイが生まれ観客は満足する。そういったプロフェッショナルなメカニズムは、ソフトウェアを開発し販売するというベンチャービジネスでも有効である。

ビジネスという観点からは、ソフトウェアビジネスの儲けの本質とは一体何かという問いかけはとても大切だ。そのヒントは単純である。既にソフトウェアビジネスで成功を収めたベンチャーの歴史をたどってみると良い。

マイクロソフトはプログラミング言語( BASIC )、オラクルはデータベース、グーグルは検索エンジンといった例を挙げることができる。ソフトウェアビジネスで顕著な成功を果たしたベンチャーは何れも勝負を賭けたソフトウェアのヒットをきっかけにして飛躍した。ソフトウェアビジネスでは、まずどのソフトウェアで勝負を賭けるのかその選択と集中をする。そして決定したそのソフトウェア開発に全力投球するというのが肝要だろう。

AだけよりもAとBという複数のソフトウェアを開発し販売した方が儲かりそうな気がする。しかしBよりもAが有望であればAに集中特化する方がソフトウェアビジネスは儲かる。なぜなら研究開発が完了すればソフトウェアの原価は限りなくゼロに近いため、

粗利益 P = 売れたソフトウェアの本数 N × 単価 @

という数式が成立するからである。

AとBの両方を手掛けために力が分散しAとB共に売上本数ゼロで共倒れになるリスクもある。成功しているソフトウェア会社を見れば明らかなのだが、売れるソフトウェアは圧倒的に売れるけれども、売れないソフトウェアは全く売れない。大抵の場合は売れない。しかし上の数式のNの値がゼロでなければもっと売れる可能性は充分にある。全世界をターゲットにすれば限界のない数字に近い場合もある。

集中特化するソフトウェアがひとつだけならそれを開発するための人数は少なくても良い。むしろ大切なのは如何にして数式のNを増やすかである。それはその組織を構成する人材のクオリティと関わる問題であり、その組織に合った人材をどうやって集めて維持し洗練させてゆくかという問題に帰着される。その一つの解としてその組織の定員を限定するという発想がある。

  

2005 年 10 月 12 日 : 希少価値

ダイヤモンド、プラチナ、金といった鉱物資源は希少価値があるからその値段もそれなりに高い。一般に、ベンチャーが開発する製品やサービスは過去に存在しなかったものが多い。言ってみれば希少性がある。だからその希少性を活かす戦略や戦術が重要なポイントとなるだろう。

ベンチャーが創り出した製品やサービスが威力を持つものであればそれを手にする顧客は得をしたと思うだろう。ものごとの価値判断の尺度は人によって様々であるけれどそんな希少価値のあるものを開発しようとする姿勢が重要だ。

また、単純に考えれば製品やサービスはたくさん売れば売れるほどよいかに思えるかもしれない。しかし 100 円のものを 100 個売るのも、10000 円のものを 1 個売るのも売上高という観点からすれば同じだ。もしそれが同じものであったとするならば 100 円で売れるよりも 10000 円で売れた方が良い。

創業間もないベンチャーはヒト、モノ、カネといった経営資源が限られる。であれば、100 円の製品やサービスでも 10000 円の価値があるものに変えてしまうマジックある発想は欠かせないだろう。そのひとつは販売する数量を限定する方法である。オリジナリティのある商品やサービスの販売数量を限定するとそれに応じて価値は上昇する。広告や宣伝をする必要もなくなる。

販売数量を 100 分の 1 にすることで、その製品やサービスの価値が 100 倍以上になることもありうる話である。そういったアプローチを採ることで、ベンチャー企業は利益率の高い経営が現実のものとなり会社にキャッシュが残り健全なかたちで総資産が増えてゆく。それはベンチャーが成長するためのひとつの方法である。

  

2005 年 10 月 07 日 : エンドレスな軌跡

販売すべきソフトウェア製品が完成した今、ソフィア・クレイドルのビジネスは単純に次の方程式で表現できる。(ライセンスビジネスなので [売上] = [粗利益] )

[粗利益] = [製品の種類] × [販売価格] × [販売数量]

この方程式の利益を最大化する目的の一種のゲームを考えてみよう。このとき、ゲームに勝利するには「製品の種類」「販売価格」「販売数量」の各パラメーターを最大化する方法を発見すれば良い。人的にも物的にも資金的にもいろんな制約条件がある。だからこれら三つのパラメーターは相矛盾し同時にプラスというわけにはいかない。それ故にアーティスティックなバランス感覚が要求される。

恐らく重要なのは経営におけるプライオリティであろう。プライオリティとはどのようにして設定するのがベストだろうか。起業家ごとに経営のスタンスは異なる。経営に対する自分の思いを表現する姿勢が問われる事柄だ。

できる限り長くソフィア・クレイドルが存続できるようにという思いが私のスタンスである。歴史を振り返った時にある事実に気付いた。どんな組織も範囲を拡大しようとするあまり却って衰退を加速するのではないだろうかということだ。ローマ帝国、モンゴル帝国、古代中国の秦など、あらゆる組織が巨大化することによって繁栄は築けても結果として必ず崩壊を余儀なくされている。だからソフィア・クレイドルの存続を願うには、できるだけ少人数で運営する仕組みやシステムこそが最もプライオリティが高いと考えている。

そのためには「販売価格」を高値で維持することが最も近道ではあるが、一般に製品価格と販売数量は反比例の関係にあって製品価格を高くするとその分製品の販売数量は減少する。

ではどうすれば良いかというと量より質を追求することである。この場合の量とは製品の種類のことである。製品の種類が多ければ多いほど開発や販売に携わる人の数は増える。だからと言って新製品は売れるとは限らない。大抵の新製品はマーケットからすぐ姿を消している。

ある種のヒット製品には限りなく売れ続けるというマーケットの側面がある。コンピューター業界ではそれが顕著である。Windows、Intel、Apple、ORACLE、Adobeなどの製品は寡占状態とも言える。販売する製品を限りなく絞ってヒットさせれば、同時に販売数量も最大化されるのではという未来が予想できる。

製品を販売し受注し出荷する業務そのものをシステムとしてIT化すれば、ソフトウェア製品なので販売数量が増えても人員を増やすことなく単純にコンピューターをグレードアップしたり台数を増やすだけで済む。至極シンプルなビジネスモデルが出来上がる。

もう一つ大切なことがある。それは絞り込んだ製品がロングレンジに渡って売れ続けるかどうかという視点だ。ロングセラーをどうやって発見するかが真の課題なのだ。IT 業界の場合、私たちが日常で使っている言語(言葉)から類推してプログラミング言語の周辺にあるのではないかという仮説を立てることができる。日本語も英語にしてもあらゆる言葉について言えるのは何百年間もその基本形は変わっていないということだ。

IT 業界では、次から次へと限りなく新製品の発売が繰り返されている。しかしそのコンピューターを動かしているソフトウェアそのものを記述しているプログラミング言語の大半は C/C++ や Java もしくは BASIC だ。ドッグイヤーとかラットイヤーとか言われて慌しい IT 業界でも、それを記述するプログラミング言語の世界では時が止まっているがごとしである。

1975年、ビル・ゲイツ氏が率いるマイクロソフトの歴史がスタートした。マイクロソフトの最初の事業は BASIC というプログラミング言語に関連するものであった。その BASIC は名こそ Visual BASIC と変われども、30年以上時を経た今も売れ使われ続けている。

果てしなくひろがるビジネスのヒントはこんなところに隠されていたりする。

  

2005 年 10 月 04 日 : 253倍のスピードアップ

従来、組込みソフトC++言語でプログラミングされることはほとんどなかった。何故ならCPUスピードやメモリ容量などのハードウェア的な制約があるからだ。しかしPCのソフトはどうだろうか?限りなく多くの人々が利用する製品レベルのソフトほどC++言語でプログラミングされている。

例えば、Javaシステムの核ともいえるJavaVMもC++言語で実装されているものが多い。Macromedia社の著名なあるソフトでもクラッシュ直後にC++のエラーメッセージが表示されるのを目撃したりする。

昨日、ソフィア・クレイドルが発表したSophiaFrameworkという製品は、組込みソフトが実用レベルでC++プログラミングできるという革新に最大の特長がある。試験的に速度の向上を計測したところ、下記レポートにあるように最大253倍のスピードアップが確認された。

飛行機の発明のおかげで人々は世界の大空を自由に駆け巡れるようになった。同じく、ハードウェア制約の厳しい組込みの世界で桁違いのスピードアップを狙うのならば何らかの抜本的なブレークスルーが必要である。前回のリリースからこの1年半以上に渡る期間というものは、ひたすらこのイノベーションに捧げられたといっても過言ではない。

スタッフの計測実験レポート。
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SophiaFramework3.0の新旧の性能比較は以下の通りです。

文字列はどのアプリケーションでも多用される基本的なオブジェクトです。新バージョンのSophiaFrameworkでは文字列処理にかかるコストが大幅に削減されました。文字列以外のオブジェクトももちろん最適化されています。例えば、コレクションクラスなどは構造自体が変化しているので、単純な比較はできません。ここでは文字列クラスを取りあげ、どの程度速度が向上しているかを示します。


■例1:文字列の追加

void func1() {
int i, j, sum;
SFXAnsiString str; // 旧バージョンではSFUAnsiString

sum = 0;
for (i = 0; i < 10; i++) { // 10回計測
int startms = GETTIMEMS(); //計測開始
for (j = 0; j < 1000; j++) { // 1000回実行
str += "abcdef"; //文字列の追加(今までの文字列に"abcdef"を追加)
}
int endms = GETTIMEMS(); //計測終了
DBGPRINTF("%d", endms - startms);
sum += endms - startms;
}
DBGPRINTF("avarage = %d", sum / 10);
}

計測された時間(単位は ms)

旧バージョン 2.2
246
691
1161
1698
2269
2802
3348
3849
4364
4909
average = 2533

新バージョン 3.0
10
11
10
10
10
10
10
11
10
10
average = 10

解説

文字列 str に繰り返し "abcdef" 文字列 を追加していく動作です。
例えば、ネットワーク通信で受信した文字列を今ある文字列に次々に追加していく場合、このようなコードが出てきます。

SophiaFramework 旧バージョンでは文字列の追加のたびに新しいインスタンスを生成したため、大幅な時間のロスとなっていました。新バージョンではこのようなロスをなくし、時間短縮がなされています。


■例2:文字列の検索

void func2() {
int i, j, sum, temp;
SFXAnsiString str; // 旧バージョンではSFUAnsiString

sum = 0;
for (i = 0; i < 10000; i++) { // 文字列の準備(abcabc... と続く文字列を用意し、途中に"SophiaFramework3.0"の文字列を挿入したものを用意する)
if (i == 5000) str += "SophiaFramework3.0";
else str += "abc";
}
for (i = 0; i < 3; i++) { // 3回計測
int startms = GETTIMEMS(); //計測開始
for (j = 0; j < 100; j++) { // 100回実行
temp += str.IndexOf("SophiaFramework3.0"); //文字列の検索(何文字目にあるか)
}
int endms = GETTIMEMS(); //計測終了
DBGPRINTF("%d %d", endms - startms, temp);
sum += endms - startms;
}

DBGPRINTF("avarage = %d", sum / 3);
}

計測された時間(単位は ms)

旧バージョン 2.2
7019
6998
7008
average = 7008

新バージョン 3.0
1281
1299
1280
average = 1286

解説

長い文字列から"SophiaFramework3.0"の文字列が何番目にあるかを探しています。
こちらも効率化により時間が短縮されています。

■例3:文字列の置き換え

void func3() {
int i, j, sum;
SFUAnsiString str; // 旧バージョンではSFUAnsiString
SFUAnsiString temp_str;

sum = 0;
for (i = 0; i < 10000; i++) { // 文字列の準備
if (i == 5000) str += "SophiaFramework2.2";
else str += "abc";
}
for (i = 0; i < 3; i++) { // 3回計測
int startms = GETTIMEMS(); //計測開始
for (j = 0; j < 10; j++) { // 10回実行
temp_str = str.Replace("SophiaFramework2.2", "SophiaFramework3.0"); //文字列の置換
}
int endms = GETTIMEMS(); //計測終了
DBGPRINTF("%d %d", endms - startms, temp_str.Length());
sum += endms - startms;
}

DBGPRINTF("avarage = %d", sum / 3);
}

計測された時間(単位は ms)

旧バージョン 2.2
3741
3741
3724
average = 3735

新バージョン 3.0
626
626
626
average = 626

解説

長い文字列から"SophiaFramework2.2"の文字列を見つけ出し、"SophiaFramework3.0"に置換しています。

以上

  

2005 年 09 月 19 日 : V / P

人は何を以って判断しモノを買うのか、ということをベンチャーを創めてから考えるようになった。

シンプル&ロジカルに考えるなら、製品やサービスの価値を V 、価格を P とした時に V ÷ P の値が 1 より大きければ買いだ、という当たり前の結論に達する。

厄介な問題は、製品やサービスの価値 V を金額に換算し表現するのが、新しいコンセプトのモノほど難しい点にある。突き詰めればベンチャーのマーケティングとは、自社の製品やサービスの新しい価値 V がその価格 P を上回っているという事実を、お客様に分かりやすく具体的にプレゼンする過程であろう。

新しい製品やサービスは実際に試してみると判るものが多いのではないだろうか。だから最初にどういう理由でどのようなお客様に試してもらうか、のシナリオ・プランニングが重要だ。

とりわけ大切なのは"値付け"になってくる。

今は全ての製品について30万円、50万円、100万円という、3種類の価格で販売している。

その考え方の基本は、どんなお客様に対しても
   V ÷ P > 1 (敢えて理想をいえば 10 以上の値になることを想定してデザインしている)
を押さえた上で、実際に購入してその V の値を実感してもらうところにある。

年収数百万円の人が 3000 円の CD を買う日常の生活シーンを想像してほしい。音楽に興味のある人ならば、少し試聴してなんとなく良さそうに思えばその CD を購入するだろう。

それと同じ感覚で考え値付けした。年に数億円以上の予算がある企業や組織にとって 30 万円のソフトを買うということは、ごく普通の人が 3000 円の CD を購入するのに近い。

製品やサービスを初めて使ったときに、価値 V と価格 P の関係は明白になる。

V ÷ P の値が1を大きく超えれば超えるほど、そのビジネスは安定した上昇気流にのってゆくことだろう。

お客様が V ÷ P の値をどう実感するかにそのビジネスの未来は委ねられる。

  

2005 年 08 月 23 日 : Concentration

http://www.google.co.jp/ と http://www.yahoo.co.jp/

グーグルとヤフーの URL である。ホームページだけであればヤフーがグーグルを遥かに凌駕しているかに見える。

今朝、新聞( 2005 年 8 月 23 日発行日本経済新聞 13 面)でグーグルとヤフーに関する興味深い記事を発見した。それはグーグルとヤフーに関する、2005 年 1 − 6 月期の売上高と純利益、8 月 19 日付けの時価総額の数字である。従業員数は半分以下でしかないのに、今やグーグルはヤフーをこれら三つの指標で超える存在となっている。

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        グーグル     ヤフー     単位
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売上高     2,641      2,427     百万ドル
純利益      712       381     百万ドル
時価総額     778       479     億ドル
従業員数    3,021      7,600     人
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最近、グーグルも検索エンジン以外に手を広げているようだが、依然として経営資源の7割は検索エンジンの精度向上のための研究開発に投入しているという。元々、ヤフーはインターネットの検索エンジンでスタートし、この分野では圧倒的な No. 1 の地位にあった。しかしいろんなビジネスに手を広げるうちに、いつの間にかその地位をグーグルに譲る結果に陥っている。

ほんの一つの例に過ぎないが、これは 21 世紀の新しいビジネスモデルの典型的な成功パターンを示唆しているように感じる。ヤフーが創業した10年前は、ネットに接続している人は珍しい部類に属していた。けれどもいまではネットを使わない人の方がむしろ例外となりつつある。

この傾向は日本国内に止まらず、中国、インド、ロシア、ブラジルなど世界中のあらゆる国において目撃できる事実である。今日、世界人口は64億とも言われるくらい、世界のマーケットのポテンシャルは計り知れないほどに巨大である。

ネットはその巨大マーケットに光速のスピードで接続することを可能にしてくれる唯一最強の武器とも言える。現代そして未来の利用者にはネット上に用意された高速コミュニケーションと高性能コンピューターのポテンシャルを駆使できる環境がある。自分が求める商品やサービスを瞬間的に手にすることができる世界である。

利用者の立場に立てば自明のことと思う。同じ価格なら世界 No. 1 のクオリティのものを選択するだろう。また、売れれば売れるほど儲かるという収穫逓増のビジネスモデルが成立する領域においては、売れる数が桁違いに多ければその価格は他よりも低く設定しても利益に何ら影響はない。むしろ逆に利益は以前にも増して膨らむだろう。

グーグルとヤフーの記事を読んで、できるだけ少ないスタッフで、自社が世界 No. 1 と誇れる商品またはサービスの一点に絞り、それに全てを賭ける姿勢は 21 世紀のビジネスを駆け抜ける上で外せない条件に思えた。

  

2005 年 08 月 22 日 : Value

事業によって本質的な価値はさまざまだと思う。それぞれの事業でその価値について考えてみるといろんな発想が浮かんで来るものである。ソフィア・クレイドルの製品を購入してくださっているお客様は、携帯電話向けアプリケーションを開発している企業である。

お客様はソフィア・クレイドルの製品をなぜ購入されたのか、或いは購入しなければならない本当の理由は何か?

というようなことをよく考えてみると、意外と次の展望が開けてくる。当社製品の本質的な価値は『時間短縮』である。例えば、携帯電話向けアプリケーション開発のある工程に何人日かの工数を要していたとする。それが当社製品を使うことで、その工程の必要性そのものが無くなるのである。それ故に、これまで6ヶ月の期間を要していた開発作業が5ヶ月で済んでしまったりするというような価値をお客様に提供しているわけだ。

お客様に当社製品を買うだけの価値があるということを簡単に理解してもらうにはどうすれば良いだろうか?製品を販売する単位は"円"であるのに対して、その製品の価値の単位は"時間"である。これでは単位が異なるので、瞬間的に比較することはできない。小学校で単位を同じにして二つのものを比較したようなアプローチを採る必要がある。

少々複雑なのはお客様によって時間の金額的な価値が異なるということである。時給800円で働く人もいれば、時給5000円で働く人もいる。状況はそれと似ている。

ある携帯電話向けアプリケーションをビジネスで使うことによって、例えば月に100万円の利益が出るとする。もしその携帯電話向けアプリケーションを1ヶ月早く提供できるとすれば100万円多くの利益を得ることができる。そうであれば、それに対して30万円のコストを費やしても充分に元が取れる。

ネットのサービスであればタイミングも重要である。例えばそれが業界初のサービスであれば、一番最初にそのサービスを提供することで得られる顧客獲得の価値というのは、サービスを前倒しにすることから得られる利益の増加分以上に大きいものである。

ヨーロッパやアメリカなど海外に仕事で行く場合、50年以上前ならば移動手段は飛行機ではなく船であったが、今は船ではなく飛行機を利用するのが常識だ。何故ならば、現代は飛行機の方が安く時間の価値がますます高まっているからである。

  
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