2005 年 02 月 10 日 : 吉凶の間には
これからの時代は個性というものが問われるような気がしてならない。社員数が多くなると、一見、いろんな個性があるかのように見えるが、実際にはそれらが相殺されて没個性となったりしているように思える。これもアーティストのコラボレーションのようなものかもしれない。
ハイテクベンチャーの場合、新規性のある製品を開発し、それをマーケットに広めるまで、そのテクノロジーのスケールの大きさに比例するかのように、たくさんの時間がかかるものである。
いまや世界中のほとんどのパソコンにはマイクロソフトのWindowsがインストールされている。このWindowsにしても、発売されて数年間は全くといっていいほど売れなかった。
だから、ハイテク製品の場合はそれが売れ出すタイミングを見極めることがとても大切だ。しかも、最悪の場合、売れるまでに何年間もかかるため、辛抱強さ、忍耐力といったものまでもが要求される。このハードルは意外に高いもので、やったことの無い人には理解しがたい事実かもしれない。
でも、ハイテクベンチャーといえども、運良く製品が売れ始めると急成長期に突入するわけで、その時初めて、それまでのことがやっと吉とでたり凶とでたりする。
反面、良いこともある。製品が売れなくて比較的に余力がある時期に、人手がかかる営業や事務、サポートの部分に関していろんな手をうっておけば、事業が拡大しても人数をふやさなくて済むからだ。
例えば、業務プロセスはマニュアル化し、コンピューターができる部分はシステムとして実現しておく。インターネットによる販売システムを構築する。製品のクオリティを最大化し、サポートの頻度を激減させる、などなど。
ベンチャーが瓦解する理由の多くは、急成長に伴う不適切な人材の大量採用に伴うものが多いように思う。日本の場合、もともとベンチャーで働くことに向いていない人が多いのだが、急成長期に背に腹は代えられないとばかりに、間違って採用してしまったりすることも多いと思う。
あまり人を増やさなくても、それを遥かに上回る業績をあげれるビジネスモデルを構築しておけば、人材採用も慎重に実施できる。そうすると、適材適所でない人の問題で、ベンチャー経営がおかしくなるようなことを避けることができるだろう。
2005 年 02 月 06 日 : ダイレクトマーケティング
松下電器産業、京セラ、日本電産など日本を代表する製造メーカーに共通するのは、営業の体制を代理店に頼らず直販とすることで大きく成長したところにある。これらの企業を研究して思ったことは、ソフィア・クレイドルも直販を貫き通すべきであるということだった。
直販をすることで、研究開発の部門以外にマーケティングの部門が必要となり、経営資源の乏しいベンチャーには一見不利なようにも思える。しかし、直販することによって得られるメリットは他に代え難いものがある。
メリットを列挙すると以下のようになる。
1. 値決めは経営の根幹ともいえることだ。製品の価格を完全に統制することができる。
2. お客様のニーズを直接ヒアリングすることができ、実際に売れる製品の研究開発を進めることができる。
3. お客様のクレームや喜びの声を直接聴くことができ、研究開発部門のスタッフたちにとって大きな励みになる。(実はこれはとても珍しいことだと思う。)
最初は、全く無名で実績も何も無い状態で始めたので、営業に関しては大変苦労した。しかし、類似製品が存在しなかったのと、実際にそれがなければ仕事が滞ってしまうお客様に少しずつ売れ始めた。
営業的に未熟なところが多かったが、マーケティングの研究を深めたり、製品そのものの機能をお客様のニーズに合わせてグレードアップすること、それから実績を積み重ねることで、次第に売れる数が増えていった。
営業というものは人的な要素が極めて強い。実際、自分の給与の何倍も利益をセールスであげることのできる営業マンは、非常に少ない。だから、そういうトップセールス関連の書籍が山のように出版されている。
なので、ソフィア・クレイドルでは、インターネットによる直販にこだわり、マーケティングのノウハウをWebのシステムとしてプログラミングしている。これであれば安定して、年中無休で世界市場に向けての営業が可能だ。勿論、そのための研究や努力は必要だけれども、それに楽しみを見出すことができる。
問題は、最初から売れるわけではないので、その立ち上げをどうやって乗り切るかが重要であろう。例えば、製品に不足する機能があれば、それを強化するなどの取り組みをお客さまと共に進めることも大切であろう。
事業の立ち上げというものはとても地道な仕事である。しかし、積み重ねることでいつしか効果が現れてくる。最近は意外な国々からも問い合わせが来るようになった。
2005 年 02 月 05 日 : 起業の歯車
自分で努力して得た 1 万円と他人からもらった 1 万円とではどちらに価値があるだろうか?どちらを大切にするだろうか?
答えは明らかだが、それを理解しているのと、実際に行動するのとでは違いがあるらしい。生活の中でも起業においても同様だ。
株主から預かったお金を元手にして、社会的に意義のある仕事をなし、元手を上回る収益を上げることが経営者というものの仕事の一つであると思っている。
会社のお金をいろんなことに投資する際に、そのお金の価値をどの程度重く受け止めているかで、結果は大きくことなるのではないだろうか。だからこそ、ベンチャーで成功している企業は大企業をも遥かに上回る ROI (株主資本利益率)の数字を残しているような気がする。
いろんな方々から国の助成金への申請を勧められる。その手続きが煩雑で面倒という話もあるが、これまでに助成金を申請したことはない。できる限り、助成金に頼らない経営をしたい。棚から牡丹餅のようにして、国の助成金を受け取ることで、お金に対する感覚が麻痺することを危惧するからだ。
これまでに蓄えたお金、それから創意工夫することでお客さまから商品の対価としていただいたお金の値打ちというものがよく理解でき、活きたお金の使い方ができる。
ベンチャーの場合、10 年後も存続している会社は 10 社に 1 社も無いくらいだという。だから大切なことは如何にして経営判断ミスを無くすかにあると思う。経営者のお金への考え方が甘かったばかりに経営がおかしくなる会社が多いような気がする。自ら苦労して稼いだお金の方が、他者から与えられたお金よりもよく理解でき、そのお金の使い方もよく分かってくるのではないか。
国の助成金の申請を代行することを商売にしている人もいるらしい。この本末転倒な事実を聞いて、こんなところでも税金の無駄遣いがされているんだ、と残念に感じた。(真に必要としているベンチャーに助成金が届いていないことが懸念される。)これはまた、助成金の申請がややこしく報われない労働になっているという事実の反映でもある。
それよりも、助成金制度を利用せずに、利益を出している創業間もないベンチャーの法人税、消費税などを一部免除するような制度を創るのはどうだろか。そのほうが、助成という起業の歯車になるだろう。
2005 年 02 月 04 日 : エッセンス
事業を成功裡に導くために最も大切なのは、絶対にこれだけは外せないポイントを確実に抑えることではないだろうか。即ち、その事業の本質をよく理解しているかどうかで、その事業の行方は大きく左右される。
至近な例を挙げるなら、レストランであれば「味」、航空会社であれば「安全」、ホテルであれば「快適」等など、それぞれの事業にとって絶対に外せない必須要件があると思う。
ソフィア・クレイドルは携帯電話向けソフトウェアの研究開発事業を展開している。この分野のソフトウェアテクノロジーの本質は、小さく、速く、使いやすく、しかも安くといった相矛盾する内容のクオリティをバランスよく総合的に極大化するところにある。
過去の歴史を遡れば、IT 業界というのは、大が小ではなく、小が大を飲み込むというような逆転の構図で描かれる世界だということがわかる。「 IBM の大型汎用コンピューター」をいわば踏み台ににした「マイクロソフト&インテルのパソコン」しかりである。
携帯電話サイズの小さなコンピューターで数多くの実績を残したソフトウェアテクノロジーが、パソコンやサーバー、そして情報家電のようなプラットフォームでも利用されるのは十分に有り得る話であろう。
私たちはそういった点に巨大なビジネスチャンスを見出そうとしている。そのためにも、携帯電話向けソフトウェア業界における事業の本質を抑えることは、最初に着手すべき最重要課題だった。
ベンチャーの場合、圧倒的に経営資源が限られるだけに、どこか一点に集中特化する必要性に迫られることも多い。その時、本質からずれた事業展開をすれば、目も当てられない悲惨な事態に陥ってしまう。逆に、肝心要の外せないところだけはしっかりと抑えておけば、少々やり方が拙くとも後から軌道修正できる。それくらいに本質を見抜くことはベンチャー起業家にとって欠かすことのできない必須スキルだ。
意外なことだが、日本の教育制度では、こんなにも大切な本質を捉える能力を育てるための訓練が等閑にされていると思う。
例えば、日本の学校では、あらゆる教科で万遍無く良い点をとれば、所謂、一流大学に入学し、優等生として卒業することができる。
だが、現実の世の中では、オールラウンドにそこそこできるんじゃなくて、ある特殊な能力や才能で突出した結果を残すような人こそが評価されている。いま、時代はそのように変革されつつある。例えば、大リーグで活躍しているイチローは、野球というジャンルでは誰も太刀打ちできないほど突出し、超一流のプレイヤーとして世界から絶賛されている。
学校教育で最も大切なのは、子供たちが、自分に適した、それぞれの人生の目標や目的のようなものを発見し、その道を着実に歩めるように、後押しすることではないだろうか。しかし実態は、高校や大学への進学を前提とした、画一的な教育しかなされていない学校が大半だ。
いまの学校の試験の評価制度も私にはおかしく思える。点数が高ければ良いということで、試験の時は易しい問題から順番に解答していった方が制限時間内では高得点が獲れてしまう。面白そうだからといって、最も難しい難問から入ってそれを解くだけで終わったら、それこそアウトだ!
こんな教育を受けていると、ついつい枝葉末節に足をすくわれて、ややこしくて面倒なことは常に後送りというジレンマに陥る。そんな癖がついた人間に育ってしまうのではないか。難しいけれども真に重要な問題が後回しになり、目に見えない努力が評価されなくなる。そして、ある瞬間に誰にも訪れる、素晴らしき人生を生きるための貴重なチャンスをみすみす見逃してしまうのだ。
ベンチャー起業においては、瑣末なことに囚われてしまうと、それだけで限られた資源を消耗してしまいかねない。そんな状態が続くと、肝心なゴールに辿り着く前に終わってしまう。本当に大切なポイントだけに絞ってやらなければ、経営破綻してしまう可能性が高くなるだろう。
2005 年 01 月 21 日 : ベンチャー起業の視点
5 年後、10 年後には、世界的にクールな会社として少しは知られる存在でありたいと願って会社経営している。
ソフィア・クレイドルはソフトウェアプロダクツを研究開発し、マーケティングするソフトウェア業という業種に分類される。
それでは、ソフトウェア業に分類されるベンチャーが、たゆまなく継続的に成長するための条件とは一体何なのだろうか?
どのような業種のベンチャーであれ、事業を始める時は、この問いを発することこそが、ベンチャー生存のための最優先事項であろう。この核心が分からなくて、目先の現金を追い求めたがために自滅していったベンチャーは数え切れない。
野球にせよ、サッカーにせよ、概ねスポーツにはルールがあり、表現していなくても「勝つためのセオリー」が在る。アマチュアはともかく、プロフェッショナルなレベルでは、それなくして勝利は有り得ないのだろう。常勝を掲げるようなチームは、そういう視点から真剣勝負である試合へと臨む。
ベンチャーを起業するということは、生存するための条件がプロスポーツと同じくらい厳しい現実があるかもしれないのに、そういう視座を据えない人たちがなんとなく多そうだ。
ある新卒採用関連事業会社のサイトによれば、「 94 %の会社は 10 年以内に潰れる」らしい。ほとんどの会社は 10 年以内に倒産するという事実は、おそらくどの会社にも共通する根本的なことが、等閑にされているからなのではないだろうか。
多くの起業家が、業界のルールや必勝セオリーを学ばず、真に大切なことを洞察せずに事業を始めていたりする。
ソクラテスの「無知の知」ではないけれど、自分がどこまで知っていて、どこから先は知らないのか。その境界線をまず知っておくことは、きっと万事に当てはまる大切な見方なのだろう。
ベンチャーである以上、未知の世界に飛び込むわけで、やってみないと分からないことも勿論たくさんある。しかし、過去の歴史から学べて、その現象を現在や未来に応用できることも意外に多いものだ。
ソフィア・クレイドルの場合、ソフトウェア業であるので、業界で成功した米国マイクロソフト社の歴史から多くを学ぶことができた。米国マイクロソフト社関係の書籍はほとんど揃えている。この会社の中には、ソフトウェア業におけるベンチャー経営のヒントが幾つも隠されている。逆に、失敗して消え去ったベンチャーについても、その原因を探って同じ失敗を繰り返さないように努めることができるだろう。
米国マイクロソフト社が成功した本質だが、次の 2 つが最重要なポイントであろうと考える。
1. IBM という世界 No. 1 のメジャーなプラットフォームの上でビジネスを展開していった。
2. 天才的なプログラマーのスカウトとその待遇に最も力を入れた。
米国マイクロソフト社からはこれらのことを学んだ。ソフィア・クレイドルでは、創業直後の 2002 年 4 月に、次世代携帯電話向けソフトウェア事業のプラットフォームを CDMA 技術で圧倒的シェアを誇る米国クアルコム社の BREW に定めた。そして、創業以来一貫して比類なき若き天才プログラマーの発掘と育成に全力を捧げている。
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2005 年 01 月 05 日 : Viewpoint
年明け早々なのに、新たにカナダ、ポルトガル、タイ、ベトナム、デンマークといった意外な国々からも問い合わせが来るようになってきた。恐らく日本で利用されているような高性能な携帯電話が、きっとそういった国においても普及の兆しがあるに違いない。
昨日、今日と、会社は休みなのだけれども、インターネットを駆使して、米国のある会社とソフィア・クレイドルの製品導入の検証をしている。問題となる箇所も特定できたので、多分うまくいくことだろう。ここに導入すれば、ソフィア・クレイドルにとって初めての海外進出ということになる。(こういう時、インターネットの偉大さや有り難さといったものを痛感させられる!)
今年は期待が持てる楽しみな一年だ。これまで努力して研究開発してきた製品の成果が現れ、拡がってゆく。さらにより高い目標を打ち立てて、ひたすら努力することが大事ではないかと考えている。そして、一歩一歩自分たちが成長することに、人生の意義を感じるようでありたいと願う。
ベンチャービジネスで成功するためのキーとなるポイントの一つは着眼点ではないだろうか。天才的な頭脳を有する会社であるのに、伸び悩んだり、倒産、吸収される会社が後を絶たない。戦略的に間違った選択をすれば、いくら戦術に長けていようが軌道修正のしようが無いということなのだろう。だから、何かものごとを始める時は、それに将来性があり、自分たちの強みを発揮でき、自分たちにしかできない事業かどうか、それをよく洞察することが何よりも大切だ。
いくら将来性があっても、大手企業などの他社が参入しえないような、特別な理由や条件が無ければ、その事業は始めない方が良い。自分たちにしかできないことは何かをよく見極める必要がある。そのためにも創業する前に、自分たちの好きなこと、得意なこと、強みは何かということを冷静に、真剣に見つめ直すことだ。
i モードが導入された時点で、直ぐに携帯電話というものの将来性を非常に感じたが、どこから入っていけば良いのか、その突破口をなかなか見いだせずにいた。3 年という期間を費やして、ようやく『未来の携帯電話=ネオ・タイプの超小型モバイル PC 』という方程式に確信が持て、この分野に入るべき道を発見することができた。
しかし、何れ多くの競合他社がこの分野に参入することは予想された。そこで、結論から言えば、携帯電話のソフトウェアであっても、「どう転んでも 時間の掛かってしまう ビジネスの分野」を探し出す努力をした。それが現在製品となっている携帯ソフト圧縮ツール「 SophiaCompress(Java) 」と携帯ソフトフレームワーク「 SophiaFramework 」である。何れの製品も、天才的な一人のプログラマーが設計し、ごく少数の有能なプログラマーのチームでプロジェクトを構成して、実現していった場合の方が、格段と質の良いものをアウトプットできる。
携帯電話向けソフトは、メモリ容量や CPU の性能の問題があって、いまは量よりも質が重視される傾向にある。さらに、他のジャンルのどんな製品でもそうかもしれないが、ソフトウェアのクオリティというものは、それを構成するパーツの中で最も劣る部分で決定されると言われている。所謂、ボトルネックのことだ。多人数からなるプロジェクトの場合、どうしても様々なプログラマーが混ざってしまい、部分的にはすごく優れていても、ある部分が欠陥となり、総合的には陳腐なものになっている、という残念なことが往々にしてある。
そこに目をつけて、ほんの数名の少数精鋭のプロジェクトで、3 年というベンチャーにしては比較的に長い歳月をかけて、自社製品の完成度を高めつつ、実績を積み重ねていった。現段階でこれといった競合他社を見いだすことはできない。同じくらい天才的なプログラマーを擁して、いまからこの分野に参入したとしても、これまでの3年という歳月を挽回することは至難の技だ。
ベンチャーといえば、「スピード」というものが重視される傾向にあって、意思決定においてスピードはとても重要だと思う。しかし、反対に、製品開発においては、どのように頑張っても、例えば 3 年かかるような分野を選択し、3 年後にピークになるものにフォーカスを絞り、それを見計らって目立つことなくこっそりと研究開発を進めることも一つの重要な考え方だ。直ぐに実現できてしまうような、簡単な製品やサービスは、当たることもあるが瞬間的に消え去ってしまうのことの方が案外多い。
有り難いことに「時間」というものは、大企業にも零細企業にもすべてに対して、平等で最も貴重な経営資源だ。
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2004 年 12 月 24 日 : Communication −考察−
いまから6 〜 7 年前、総勢 170 名に達するくらいのプロジェクトを指揮するリーダーをしていた。現在より量的にスケールの大きな組織だった。
当時、いろいろと苦い経験を味わった。さまざまな貴重な教訓も学んだ。なかでも、組織が急拡大するにつれて、コミュニケーションをどうやって効率化するかについて考えさせられることが多かった。
海外展開を視野に入れてソフィア・クレイドルというベンチャーを経営している。現在は十数名の小規模な組織だが、もっと大きな組織になっても通用するようなコミュニケーションのインフラを整備しておきたい。
備えあれば憂いなし。
いまの段階から将来に向けて磐石なものを構想しておきたい。
スケールの大きな仕事をしようとすれば、多様な才能を持つ、多くの人たちとのコラボレーションが必要となる。有能な人材をたくさん集めることができれば、それだけ大きな仕事がこなせる。
プロジェクトに関わる人が増えてくると、同時に、コミュニケーションのボトルネックというものが生じてくる。これは成長する組織が避けて通ることのできない道でもある。
大規模な組織では、人と人とのコミュニケーションをどうやって最適化するかということが厄介な課題となる。ごく普通の当たり前の話かもしれない。でも、これを本質的な問題として受け止めて、その対策のために、具体的な行動へと繋げている経営者は意外に少ない。
大規模な組織になった時、その運営の効率を最適にする術とは――「いかにして無意味なコミュニケーションのための時間や手間を減らすか」なのである。
実際に作業をする時間よりも会議の方が長いというのも、あちこちのプロジェクトで日常茶飯事のことのようだ。言うは易しであるが、解決するためにはどうしたらいいのだろうか。これは次のような簡単なたとえ話から、示唆を得ることができると思う。
日本人とロシア人がいてコミュニケーションをとろうとしたとする。でもお互いに相手の母国語を知らなければ、先に言語を学ばなければならないということになる。そのため肝心のコミュニケーションに辿り着くまでに、相当の時間がかかってしまう。
お互いに共通の言葉として英語が分かるのならば、直ぐに本論に入ることができる。つまり、両者が、コミュニケーションに必要なバックグラウンドを共有していればいるほど、そのコミュニケーションは短時間でありながら最高の結果に近づいてゆくことになる。
仕事の場合も、スタッフ同士が、必要な知識や智慧、ノウハウなどについて、多く深く、知っていればいるほど、無意味なコミュニケーションの量が減り、仕事はそれだけ上質なものとなる。阿吽の呼吸という表現でよくいわれる。
ベンチャー企業であれば、日々の業務に追われてしまって、物事や相手のことを知る機会や時間が減りがちである。それに注意しなければならない。具体的な仕事よりも勉強や研究や懇親のため、最初は仕事のペースが落ちてしまう。
だが、急がば回れということで、まずは仕事の基盤となるものを学ぶことを第一にしたほうがよい。指数関数曲線を描いて成長するための重要なヒントである。
そのために、企業理念、ビジョン、そして行動指針がある。