ホーム > President Blog : Sophia Cradle Incorporated

Sophia Cradle IncorporatedPresident Blog : Strategy & Tactics

2006 年 04 月 10 日 : アプローチ

起業した当初最も思考を巡らせたことは、どうすれば如何なる競合が現れても生き残れるかという戦略と戦術であった。

自然界と同じくビジネスの世界も弱肉強食の厳しいルールに従って動いている。

強くなければ生きていけないのである。( 優しくなければ生きる資格がないとも言われるが … )

そのために己の力を付けなければいけないし、戦い方も裏の裏まで見通して考え抜かなければならない。

基本的な戦法というのは、競争相手が現れても一対一の戦いに持ち込むあたりにあると考えた。

ソフトウェア業界でのそれに相当する発想は、音楽の例から示唆される、曲のトータルなイメージが一人の作曲家から創られるごとくトータルな設計思想のようなもので勝負するということだ。

それで、多人数よりも一人で作業する方が圧倒的に秀でた結果が生まれるイノベーションとマーケティングのコンセプトにかかわる分野に集中特化した。

こうすればベンチャー企業以外は基本的に競争相手はいない。

何故ならば、大企業には僕と同じくらい土日もなく寝食を惜しんで働いている者も滅多にいない。そもそもそんなモチベーションも持ち得ないだろうし、自分の身に迫る危機や危険を感じることも少ないと思うからだ。

ベンチャー企業だけは競争相手として注意を払うべきである。

けれども全体的な傾向として言えるのは、直ぐに現金化できるビジネスに走るベンチャーは多いが、3 〜 5 年しないと結果が見えない気の長い事業に取り組む者は少ない。

そのような背景から僕が狙ったのは、世間で持てはやされる短期間で株式公開するようなベンチャーではなく、長期的なスパンで永遠の発展が望める堅実な事業であった。

  

2006 年 03 月 28 日 : Chain reaction

いま眺めているパソコンはネットに接続され、その向こう側には何十億台ものパソコンがシンメトリックにネット接続されている。

こんな幻想的な世界は 10 年前は想像すら出来なかったと言えよう。

たった 10 年というスパンで世界全体が変貌を遂げ、別の方向へと進みだした感がある。

何十億もの世界の人々とネットで繋がっている認識があるかないかで、主観的な世界の広がりも全然違ってくる。

生涯で勝負できる、数少ない絶好のチャンスである。

いまだにネットが珍しかった時代と同じスタイルでビジネスをしている経営者が多いように思える。

自分独自の考えを客観的な方法で表現し、ネットに情報発信するスタイルが何よりも優先されるとして僕はポリシーを曲げることなく行動している。

ここ数年というもの、営業で外出することもなければ、資金繰りで奔走することもない。セミナーや勉強会、業界団体の集会に出席することもない。講師として参加したことはあるけれども。

いまは、ただ自分と向き合って、これから激変する未来を主観的に構想しネットを通じて世界の何十億人もの人々に伝えることが肝要だと考えて、只管そればかりしている。

世界には「何十億人もの人々がネットに繋がっている」という事実をどのように捉えるかである。

アタマに想い描く世界観が極めて個人的であって、1000 人に 1 人しか熱狂的に賛同しないにしても、世界全体では数百万人もいることになる。

従来であれば、己の足で接触できる人の数に限りがあったため、どうしてもお願いして賛同してもらう必要があった。

ネットの世界では、それが全く逆になって、好きな考え方やモノが存在していたら好んでそれを選ぶという流れになる。売り手も買い手もどちらも好意的に納得する形でビジネスは進んでゆく。

そんなスタイルのビジネスが成功するか否かは世界の人々がそれを選ぶかどうかだろう。

人々から選ばれるものはどのような発想から生まれるのかが最も重要かもしれない。

宇宙全体はいまも膨張していて、僕たちの地球を包む銀河系は猛烈なスピードで宇宙空間を移動していると言われる。

けれども、僕たちにはその実感は全くない。辛うじて、地球が自転していることや太陽の周りを公転していることを、朝昼晩或いは春夏秋冬という時の流れから理解できる程度である。

空を飛んでいる飛行機や道を走る自動車はどうだろうか?

明らかに、どちらからどちらの方向へどれくらいのスピードで移動しているか自分の目で確認できる。

目隠しをされて外界が全く見えない乗り物の中にいたとすればどうだろうか?

何も知らされていないとすれば、きっとどこに向かって進んでいるのか皆目見当も及ばないと思う。

これは何を意味するかというと、世界を自分の中からだけ除いていれば世の中の潮流から外れて行動してしまう失敗をしてしまう危険性があるということである。

自分の外から世界全体を眺めることができれば、世の中の潮流に素直に乗ることができて、自分の主張がすんなりと受け入れられる確率も高まる可能性が高くなるということである。

インテルのCPUを直接自由に使いこなせる人は何人いるだろうか?1000人に1人とか、1万人に1人とか、…ってな感じで、そんな人は珍しい。

でも、インテルのCPUが入っている Windows パソコンは誰にでも使えるくらい至極簡単である。

自分が主張するものが0.1%の人にしか受け入れられなかったとしても、それを理解してくれた人がその考え方を加工、編集し、付加価値を与えることで、次の段階では全体の1%に増えることだって珍しくないのがネットである。

ネットの良さは情報が融通無碍に人から人へと伝わり、かつそのプロセスにおいて付加価値が高まることも有り得るし、そのスピードが光速である点だろう。

僕が狙っているビジネスというのは、自らが発信する情報に人々が重層的に付加価値をアドオンして、次第次第に理解する人々が増えてゆく自然な流れを創り出すことである。

  

2006 年 03 月 25 日 : 交換法則

集合 S に 2 項演算 "·" が定義されているとき、 S の任意の 2 元 a, b について

     a・b = b・a

が成立するならば、この演算は交換法則を満たすという。このとき、演算は可換であるともいう。(Wikipedia より)

例えば、整数の足し算と掛け算については交換法則を満足するので、これらは可換である。

抽象的に考えれば、ビジネスの財務諸表に現れる全ての数字は、整数の足し算と掛け算をした結果に過ぎない。

すなわち、ビジネスのほとんどの出来事は可換であり、2 種類の事象 "a" と "b" があったとき、"a・b" と "b・a" のどちらを選択するかが経営者のセンスと言えるかもしれない。

例えば、3 つの事業を展開し、それぞれの事業で 1 億円の売上を上げて総売上 3 億円とする経営者もいれば、ひとつの事業に絞って総売上 3 億円とする経営者もいる。

或いは、100 名の社員を雇って、1 人あたり 1000 万円の売上で総売上 10 億円とする経営者もいれば、10 名の社員だけを雇って、1 人あたり 1 億円の売上で総売上 10 億円とする経営者もいる。

財務諸表の結論を眺めた瞬間は、どちらも結果は同じである。けれども、どちらの会社に未来が拓けているのかという問題意識が重要だろう。

  

2006 年 03 月 24 日 : マーケティング

「企業は、その目的が顧客を創造することであるがゆえに、二つの、いや二つだけの基本的な機能をもっている。それはマーケティングとイノベーションである」とP.F.ドラッカー氏はいう。

たった二つの基本機能しかないにも関わらず、冷静に周囲の企業を見渡せば、二つがバランスの取れた企業は滅多に見掛けない。

マーケティング、もしくはイノベーションのどちらかに甚だしく傾いているのが現状ではないだろうか。

P.F.ドラッカー氏のいう、マーケティングとイノベーションのバランスを僕は何よりも大切にしている。

根本的な原理原則にも拘らず等閑にされていることは、他と比較して相対的に百戦百勝の勢いで経営するための能力を獲得したに等しいからだ。

ソフトウェア業界では、技術志向の企業はイノベーションに没頭するあまり、マーケティングが貧弱である場合が多い。

ソフトウェア業界のサイトについて、デザイン、文章、構造、ナビゲーションなど、どうだろうか?

これはよく出来ているということで、それを参考にしてサイトを設計し構築したいと思えるのはごく僅かではないだろうか。

昨年サイトリニューアルのためにいろんなサイトを研究していた頃、僕はそんなサイトをソフトウェア業界に見出せなかった。

デザインが良かったり、製品情報以外に役立つ情報を発信をしていたり、製品マニュアルを公開していたり、製品価格を公開していたり、日本語だけでなく英語のサイトを公開している例はあまり見当たらない。

この業界はそのような切り口では競争レベルが極めて低いと言えるかもしれない。

確かにプログラミングを趣味とし得意とする者にとって、テクノロジーの追求は楽しいものである。だけど、たとえ世界に誇れるほど、もの凄い技術が生まれたとしても、それが売れなければそれは自己満足でしかない。

人々に好んで選ばれ売れ、そして使われることに意味があるのであって、未来への飛躍はそれを起点にして創まるのである。

ソフトウェア業界では、他の会社がマーケティングが等閑になっているだけに、ほんの少しそれに努力を傾けるだけで収穫は予想以上にあると思う。

それはこんな例えが分かり易いかもしれない。100点満点で、数学が 90 点、英語が 5 点であったとする。

上限が 100 点であるだけに、数学を 95 点にするには大変な努力が要求されるが、英語を 10 点にするのは容易い。しかも前者は相対的に5%弱の点数の上昇に過ぎないけど、後者は 100 %の点数の上昇なのである。

5 点であるマーケティングに少し注力し、10 点にまで向上させる努力で得られる成果は桁違いに大きい。

  

2006 年 03 月 14 日 : 借景

自然ほど雄大で永遠なものもない。

そんな自然を取り込むことができれば、という発想が京都には昔からあった。

遠くに見える山や樹木を背景にして、あたかもそれらも庭の一部であるかのようにしてしまう、庭園の思想や技法のことを借景という。

嵐山を借景にした天竜寺の庭園は、春は桜、秋は紅葉、と四季折々の自然の美しさが楽しめる。

人の創造するものは有限であるからこそ、自然を取り込むことで無限にひろがる何かが生まれる、この発想は偉大だと思う。

ソフィア・クレイドルは、世界の人々に選ばれるベーシック(クラシックでモダン)なソフトウェアテクノロジーを創り出す点に最大の目標を置いている。

素敵な何かを創り出すためには、既に出来上がっている何らかの偉大な力を借景にする考え方も大切だと感じる。

  

2006 年 03 月 09 日 : 選球眼

経営者ならば、誰しも自社の商品やサービスがヒットするのを望むだろう。

ベンチャーであれば、空振りが続けばいずれ会社は倒産を余儀なくされる。ヒットしなければ存続は望むべくも無い。

会社を存続させ、経営を安定させるためには、どうすれば商品やサービスが必ずヒットするのかというのが最大の命題だ。

きっと状況は野球でヒットを打つ時と似ているに違いない。

ボールをよく見て、絶好のタイミングを逃さず、思い切って最適なフォームでスイングできるかどうかであろう。

起業とは、業界、商品、サービス、一緒に働くスタッフ、場所、… あらゆるものを自分の意志で自由に選択できるということを意味する。

良くも悪くも全ての結果は責任者である起業家自身に跳ね返ってくる。

経営者にとって、日常生活のあらゆる場面は、選択、選択、選択 … というシーンの連続である。

実は個々の選択は些細な場合が多い。

一つ一つは取るに足らない問題のようにに見えるかもしれない。

けれども、それらを集積したものは想像を絶するほと巨大なものへと変貌を遂げているのが常である。

全ての瞬間において、油断することなく、卒なく、いい球ならば思い切って振り切り絶対にヒットを放って見せるという強い意志が求められる。

高打率の打者ほど、一球一球を大切にしてボールのコースを見極めてバットをスイングするように、経営者も一つ一つの意思決定を大切にして選球眼を養い、どうすればヒットする確率が高まるのかという問題意識を持って経営に望むべきだと思う。

  

2006 年 03 月 08 日 : パラダイム転換

サラリーマンを辞めて起業した時、働くのは同じなんだけれども世界観のパラダイムを転換する必要性を痛感した。

それはこんなことだ。

サラリーマンならば 1 ヶ月働けば、月給 50 万円とかの収入が確実に見込める。

起業するとなると、収入というものは自分の力で受注し商品やサービスを納品した瞬間にしかやってこない。

その時、 50 万円とか、何がしかのお金が入ってきたりするのだ。

そんな瞬間が永遠に訪れそうもない状況に遭遇するかもしれない。

実際には、そんなケースの方が圧倒的に大多数を占めるものと思う。

けれども、やりようによっては 1 ヶ月の間にそんな祝福すべき瞬間を数限りなく迎えることだって可能なのだ。

その限界にチャレンジするのは、ベンチャービジネスの醍醐味の一つだ。

ビジネスの結果が、サラリーマン時代の月給を上回ることもあれば、下回るこもある。

大抵の場合、創業の頃ほどサラリーマン時代の収入を下回る屈辱の日々かもしれない。特に、研究開発型ベンチャーでは、少なくとも最初の数ヶ月間というものは売上ゼロの連続である。

土壇場では強靭な精神力が要求される。

どん底からどうやって自分だけの力を信じて這い上がるかが全てなのだ。

前に進んでいる限り、昨日より今日、今日より明日なんだという認識をすべきだろう。

きっと目には見えないけれども小さな進歩の積み重ねが3年後、5年後、10年後…に活きてくるという信念を持ち続けられるか否かが肝心なんだろうなと感じる。

ベンチャーの環境は想像以上に厳しく険しい。

それ故に、ベンチャーという環境に己を置くだけで、1 年、2 年、3 年…と年を重ねる度に自分自身が加速するように成長していることに気が付くだろう。

同様に、商品やサービスも時と共に飛躍的に良き方向に向かって走り出す。

だからこそ、ベンチャービジネスでは長く続けるというポリシーが大切なんだと思う。

  
<前のページ |  1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16  |  次のページ>