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2005 年 08 月 12 日 : ある数学的な考察

公理とはそれが自明であることにしようという一種の前提条件のようなものである。数え切れない程の定理によって構成される、計り知れない数学の理論体系も創まりはほんの数個の公理の集まりに過ぎない。公理系に正しいと証明された命題を定理として追加し、その定理によってより複雑な内容の定理が証明されてゆく。それはソフトウェアを理論的に構成してゆく様に何となく似ている。

元を正せば、コンピューターは 0 と 1、そしてその 2 進数による加算からなる公理系から様々な定理のような機能が追加されて、今日のような誰にでも簡単に使える、日常の仕事や生活において欠かせないツールになった。

具体的なたとえで言えば、多くの方が斜辺の長さを C として、そのほかの2辺の長さを A、 B とすれば、

  A × A + B × B = C × C

というピタゴラスの定理を覚えているのではないだろうか。この定理を使えば A = 3, B = 4 の時、容易に C = 5 というように C の長さを導き出せる。

レオナルド・ダ・ヴィンチによるエレガントな証明が存在したりする。一見簡単そうに見えるピタゴラスの定理を 10 分以内で証明できる人は 100 人中 1 人いるかいないかというところだが、この定理を使うのは至極簡単。それ故に使われ続ける定理は偉大であって永遠の存在そのものである。

寿命の長い製品を手掛けようとすれば、その製品の時間の流れる方向を見極めるというのが肝心なポイントではないかと考えている。元来、コンピューターは数学的な発想から生まれたものである。あたかも新しい定理が次々と証明されてはそれが数学的理論体系に付け加えられて数学が進化発展を遂げているように、ソフトウェアも樹木の年輪のような薄いレイヤーが時間の経過を経て積み重ねられては新しい発明や革新が起こっている。そしてコンピューターはますます人間に近い存在になり、ユビキタス(いつでもどこでも必要な情報が取り出せる環境)といわれるようなキーワードで表現されるようになってきた。

いま創っているものが"未来のソフトウェア"の前提になり得る定理のような存在であるか否か?その見極めこそがソフトウェア系ハイテクベンチャーの製品計画の本質だ。

  

2005 年 08 月 09 日 : Lifecycle

マーケティング理論によれば、製品には導入期、成長期、成熟期、衰退期といういわゆる製品寿命があって、それを前提とした戦略と戦術の策定と実践が重要であると言われる。ただ、過去の歴史を振り返れば、永遠に成長期であったり成熟期であったりするモノが存在するのも事実なのだ。音楽や絵画、或いは楽器や車などマシンも"古典"と呼ばれるような作品は、あたかも時が止まったかのように何百年もの時を経ているのに、今もって健在で生きいきとして魅力を感じることができる。

何ごとも思いから始まる。そんな"作品"と呼べるくらいの超一流の製品を創造することが出来て、それが人間の寿命を超越して永遠に近いほど存続しえるとすれば…どれくらい素晴らしいことだろう。これこそがお金に換えることすら叶わない究極の価値であり、人生を賭けて打ち込む理由もそこに見出せる。

確かにそんな偉業を成し遂げるのは簡単じゃないと思うけれども、モーツアルトやピカソのような作品が過去の事例として存在する以上、可能性は決してゼロでない。むしろ逆に無限の広がりのようなものがそこにある。

IT業界にこの身を置いて、ドックイヤーとかラットイヤーとか言って慌しく節操無く動いている業界構造そのものに何となく違和感を感じざるを得ない。日々、海岸に押し寄せては引く波間のうたかたのように多種多様なインターネットのサービスが生まれては消え去ってゆく。でもコンピューターやインターネットの原理自体は何十年間も全く変わっていないし、それを使う人間も"ニュータイプ"に革新したわけでもない。

製品とはそれを利用する人間がいて初めて用を為す。生物の進化の時間は私たちの寿命を遥かに超えてゆったりと流れている。人間そのものが変わるにはきっと何万年以上もの時が必要なのだろう。それくらい時の流れは雄大であって、製品開発のヒントも、そんな風に人類の進化を見つめたり、永遠の寿命を持つものにロマンや憧憬を感じたりするところに隠されているように思う。

  

2005 年 08 月 07 日 : Engine performance

ネットでF1ドライバーズポイントを調べてみると、今シーズンは昨年まで数年間にわたって連戦連勝だったフェラーリに所属するシューマッハの成績が振るわない。それに代わってルノーのアロンソがトップを快走している。

ドライバーのテクニックやパフォーマンスなど相対的な変化による影響もあるかもしれない。けれども、マシンに搭載されているエンジンや乗り心地などのハードウェアやソフトウェア的な性能の差にもきっと何かがあるに違いない。トップF1ドライバーにしてもマシンが思うように走ってくれないと、チェッカーフラッグを一番に受ける栄誉を手にする願いは叶わない。逆に、たとえそんな高性能マシンに素人ドライバーが乗り込んでみても、百戦練磨のドライバーたちの遥か彼方の後塵を拝するだけだ。

プロフェッショナルにはプロフェッショナルにしか使いこなせないツールやシステムがあるわけで、感性や才能とツールとの一体感というのが最も重要なファクターなのだと思う。いくら才能に恵まれた偉才がいたとしても、その才能を発揮するためのツールがなければ折角の才能も永久に眠ったままだ。その才能に相応しいツールがあって初めて、この地球上に新しい創造に伴う感動も生まれる。

コンピューターは人間の知性や感性を増幅させるために生まれたツールである。最初はソフトウェアの概念が無くて、ハードウェアだけのコンピューターで柔軟性は無かった。しかしソフトウェアという概念の創造によって、今日のようにコンピューターは発展を続けている。ソフトウェアはハードウェアと違って柔軟に変化する性質を帯びている。だから"ソフトウェア"という名で呼ばれる。それは生物が何十億年もの期間にわたって進化を遂げてきた姿に似ている。

しかしそのソフトウェアの進化発展は、プログラマーという人間の知性と感性によって成し遂げられるのである。その先に待つ夢のある未来の創造は、超一流のプロフェッショナルなプログラマーの腕にかかっている。そんなF1ドライバーのようなプロフェッショナルプログラマーに必須の高性能エンジンともいえる"プログラム開発環境"を提供できる誇りや自信を持ちたい。そんな使命感に基づいて、ソフィア・クレイドルのチームはソフトウェア研究開発に取り組んでいる。

  

2005 年 08 月 05 日 : Language

何気なく使っている"日本語"、普段その有難さを実感する人は少ないだろう。もし"日本語"が使えないとすると、その瞬間からこの上なく不便な生活を送らなければならない。実際のところ、言葉というものは人間にとって無くてはならない重要なものであり、今日の文明や文化もそのお陰とも言える。

人間というのはおかしな生き物だ。それがないと致命的ともいえるくらいに大変なのに、普段はそのメリットに全く気が付かない。"メラビアンの法則"でも言語はコミュニケーションの7%くらいしか影響を及ぼさないと言うけど、絶対にそんなことは無いと個人的には思う。

人間のコミュニケーションが言語によってなされるように、コンピューターとのコミュニケーションはプログラミング言語と呼ばれる存在によって為される。マイクロソフトBasicオラクルSQLボーランドPascalアドビPostscriptというように、ソフトウェア業界における偉大なベンチャーが飛躍したきっかけはコンピューター言語での成功である場合が多い。

これは恐らく、日常生活で言語が重要なのと同じような関係で、コンピューターの世界でも言語というものが重要な位置付けを占めるからだろう。それで上にあげたようなハイテクベンチャーの如く、大いなる成長と発展を遂げようとするならば、言語というものが成功のキーになると考えている。

だからソフィア・クレイドルでは、携帯電話向け組込みソフトを記述するためのプログラミング言語に関連する製品の研究開発に特にこだわっている。

  

2005 年 08 月 03 日 : 眺め

10年ほど前、夜の国道を行き交う自動車のライトの軌跡を飽きることもなく眺めていた。今ではマンションが建ったのでその向こう側は何も視えない。

今は見えないけれど10年前は見えていた過去の事実が新しい発想を喚起してくれる。私たちは"x"軸、"y"軸、"z"軸の座標軸から構成される3次元空間に束縛されるようにして暮らしている。その結果、今は窓からマンションの向こう側が見えないという現象が発生している。

もし私たちが現在の3次元空間に時間軸"t"を導入した4次元空間の存在であるならば、10年前に遡って夜景を駆け抜ける自動車の光を眺めるのも可能だ。

何ごともそうかもしれないが、ベンチャーを経営していると未来をどう視るかで総てが決まるようにすら感じられる。でも4次元空間の中を自由自在に瞬間移動できるタイムマシンがあるわけでもないので、未来を確実に視ることは叶わない。

しかし窓から見えない眺めの例のように、過去に遡ってそれを視るというのは可能でそこに未来を眺望する重大なヒントが隠されている。

たとえば、ソフィア・クレイドルでは30年前から現在に至るまでのコンピューター業界の過去を精査しつつベンチャー経営をしている。30年前であれば、会計のような企業情報システムは何億円もするようなコンピューターで処理がなされていた。しかし今では数万円のパソコンに弥生会計を導入するだけで手軽に使える時代である。こんなトレンドを知れば、会計システムが10年後には数千円の携帯電話サイズのコンピューターで処理されたとしても何ら不思議でない。そこに隠された巨大なビジネスチャンスを見出そうとしている。

肉眼で視えない未来もこんな風にして眺めれば新しい展望が開けてくる。

  

2005 年 08 月 01 日 : Reason

"何故ベンチャーを創めたのか?"

この問い掛けへの答えはベンチャーの未来の在り様に大きな影響を与える。個人の生活がこの上なく充実したものになるようにしたいとの願いを"ソフィア・クレイドル"というベンチャーに託して起業した。

創業以前、大企業でサラリーマンをしていた。自分を含め組織に所属する人々は必ずしも充実した人生を過ごしているわけではなかった。学んだ最大の教訓は、企業の規模や知名度は必ずしもその企業に所属する個々のスタッフの幸福に直結しないという事実だった。

"どうすれば充実した人生を過ごせるのか?"の答えはベンチャー創業の理由でもあり、現在も捜し求めて模索している。

物事の考え方には大きく分けて2種類ある。それはトップダウンに概念を展開してゆく演繹的アプローチ。もうひとつは個々の事実をボトムアップに積み上げて全体的な概念を形作ってゆく帰納的アプローチ。どちらかといえば、前者が大企業的であり、後者がベンチャー的である。

トップダウンで下位概念に展開するプロセスでは、創造性というものが入り込む余地は限定される傾向にある。決めた枠の範囲内では確実にスピーディに仕事がなされるが、意外性といったものが無いのは大きな欠点だろう。

21世紀の時代を迎え、"ワクワク&ドキドキ"というキーワードに代表されるように「感動ビジネス」がいま脚光を浴びている。個人的な見解として「感動」とは思いもしない冒険や発見の中に見出せるようなものと思っている。

四季折々のたとえば桜や紅葉などはささやかだけれども心の中に残る美しいものである。そういった情景を心の中に少しずつ積み重ねるようなプロセスが大切ではないか。偶然の産物なのかもしれない。感動的な新しい真実や真理とは往々にしてそんな風にして見出されると思う。それはあたかも万華鏡に映し出された美しい映像のようでもある。

ボトムアップの帰納的アプローチでは、時間を要するかもしれないけれど感動的な場面に遭遇する機会も多い。それは時間が掛かれば掛かるほど喜びもひとしおという感覚に近い。

  

2005 年 07 月 28 日 : Extention

ビジネスを広げる方法には2種類ある。一方は"X","Y","Z"…といった異なるマーケットセグメンテーションに"A"という事業に絞って展開するやり方。もう一方は"X"という単一のマーケットセグメンテーションに"A","B","C"…といった異なる事業を展開するやり方である。勿論、その両方を同時にやるというオプションも有り得るが、それで成功するのは稀なケースだろう。(ビジネスがまだ小規模なうちは、ここでいう事業は商品と置き換えて考えてもよい。)

そのどちらを選択するかが、事業を拡大する時に問われる経営者のセンスではないだろうか。どちらか一方のアプローチが優れているというわけではない。自分が手掛ける事業の社会的な、或いは個人的な意味や意義から最も適した道を選択するのが良いのだろう。

私の場合、こんな風にして事業を成長させてゆく夢を抱いている。ソフィア・クレイドルという事業で最も大切にしている信念は、"シンプル・イズ・クール&クール・イズ・シンプル"という発想である。21世紀の時代では、その仕事をするだけの価値の誇らしさから自然に生じるクールさ、即ちカッコ良さというものは避けて通れない気がする。

個人的には、クールさというものはシンプルさに直結しているかのように感じている。水墨画においては"白"と"黒"という、たった2色の濃淡で全ての色を表現していたりする。実際にそれを眺めて『なるほど』と感心したりもする。実際のところ、この広大な宇宙に存在する多種多様な物質も全ては原子という共通の単位で構成されるというシンプルさである。それでいて、人間の浅はかな智慧では計り知れないほどの複雑さで満ち溢れている。生物の遺伝子も然りである。現象として複雑なものもその原因となる元を正せば、シンプルなある事実に辿り着くのが実態ではないだろうか。

そんな発想から、ソフィア・クレイドルでは何事もシンプル&クールに"Simple & Cool"、そして創造的に考えること"Think Creative"を第一にして運営しているつもりである。実際、やっている事業も、携帯電話向けソフトウェアを記述するためのプログラミング言語とプログラム圧縮という、たった2種類のソフトウェアテクノロジーでしかないというシンプルさである。

だから、この単純且つ明快なビジネスを大きく発展、繁栄させためのアプローチの基本的な考え方は「"A"という事業を"X","Y","Z"・・・という異なるマーケットセグメントに横展開する」という方法論こそ自分には最適であると考えている。

こんな背景もあり、ソフィア・クレイドルで行っている事業は"全世界で共通して使えるのか?"それから"携帯電話に止まらず、それは自動車やテレビ、エレベーターなど、全く異なるジャンルでも応用できるのか?"が究極の意思決定の判断材料となっている。製品・サービスの開発においては常に広く海外マーケットでも通用する汎用性を意識し、それをインプリメントする人材をも広く世界から募る。そんな姿勢こそが成功の秘訣ではないかと思えさえする。

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