2005 年 06 月 19 日 : 組込みソフトウェア業界
デジタル家電、ロボット、FA、ゲーム、自動車など、この種のハードウェア機器産業は日本が世界 No. 1。組込みソフトウェアとはそれらのデジタル情報機器をコントロールするプログラムのことであり、実は身の回りのありとあらゆるものにそういったプログラムが内蔵されている。携帯電話と同じく、こういった機器もインターネット接続を含め IT 化の波が押し寄せつつある。
いろんな統計データを解釈すると、組込みソフトウェア全体の携帯電話向けのものが占める割合は 1 %にも満たないと推測できる。それは携帯電話以外のアプリケーションドメインに、携帯電話の 100 倍以上の潜在的なマーケットが存在するというビジネスチャンスを意味する。
経済産業省による 2004 年版組込みソフトウェア実態調査報告書によれば、組込みソフトウェアのアプリケーションドメインは下記のような分野があるということだ。
1. 通信端末機器(携帯電話)
2. カーナビ
3. 教育・娯楽機器
4. 個人用情報機器
5. 家電機器
6. AV 機器
7. コンピューター周辺機器・OA機器
8. 医療機器
9. 通信設備機器
10. 設備機器
11. 運輸・建設機器
12. 工業制御・FA 機器・産業機器
13. 自動車用ソフトウェア(エンジン制御)
現時点のソフィア・クレイドルでは、集中と選択という戦略的必要性から、通信端末機器(次世代携帯電話)というアプリケーションドメインに絞って事業を展開しているに過ぎない。まだ他のアプリケーションドメインの組み込みソフトウェアは大規模、複雑化していない。それ故にプラットフォームのオープン化の必要性も少なく、今参入しても思うほどの投資対効果が得られない。
将来的には、時代の趨勢から携帯電話以外のアプリケーションドメインも、携帯電話と同じような道筋を辿るであろう。だから上に列挙した全てのアプリケーションドメインをも対象とするつもりでいる。それを意識し長期的な視野から製品を研究開発し販売するのが大切な考え方ではないだろうか。
ソフィア・クレイドルで研究開発しているソフトウェアの規模は、プログラムのソースコード行数にして 10 万行規模のものである。組込みソフトウェアの 90 %以上は 10 万行以下の規模だ。しかもその大半は 1 万行以下と小規模。実を言えば、携帯電話も 10 年前はそれに組込まれるソフトウェアの規模は数千行規模に過ぎなかった。インターネット接続、カメラ、テレビなどいろんな IT 的な機能の拡張と共に肥大化し、現在では数百万行規模にまでなっているという事情がある。
汎用計算機、ミニコン、パソコン、ワークステーション、PDA など CPU が組込まれる情報機器は、そのハードウェアの高度化、多機能化に伴い、ソフトウェアの大規模、複雑化という至上命題が自然に沸き起こった。何れもプラットフォームのオープン化と過去に開発したソフトウェアモジュールを再利用するというアプローチを採ったところのみが今日に至っても生き残っている。そんな原理原則がある。
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2005 年 06 月 14 日 : 新しいかたち
昨年あたりからiPODを始めとするデジタルオーディオプレイヤーが爆発的に売れているらしい。それに連られるようにしてインターネットによる音楽配信もスタートしている。一曲あたりのダウンロードの価格は210円とのこと。インターネットによるソフトウェア配信時代の幕開けと謂えるかもしれない。
着うたフルなどの音楽配信ビジネス拡大を背景にして、この秋にはハードディスクが内蔵された携帯電話が東芝から発売される。USのモトローラからはiTune搭載携帯電話が間もなく発売されるとも聞く。隣の韓国ではハードディスク内蔵のMP3搭載携帯電話は既に販売されている。
デジカメがカメラ内蔵携帯電話に取って代わられたように、デジタルオーディオプレイヤーもそんな道筋を辿ってゆくのかもしれない。とにかくソフトウェア的なものをワイヤレスにダウンロードできるというのは便利というより他にない。
いま世界には20億台近くの携帯電話が日常生活における必需品として使われている。いまはインターネットに接続し、音楽やゲームなどいろんなソフトウェアをダウンロードできるタイプのものは世界マーケットではほんのごく僅かかもしれない。ほとんど全てのパソコンがインターネットに接続しているように、携帯電話がそのようなスタイルになるのはきっと時間の問題だろう。
一曲210円の音楽といえども、もし仮に世界中に点在する20億台全ての携帯電話にネット配信されるのならば、その曲だけで4200億円のマーケットが創造されたことになる。これがインターネット時代の一つの典型的なビジネスのモデルではないかと10年くらい前からずっと考えていた。
僅か5分程度に過ぎない一曲の音楽にも、極論すればそれだけ膨大なポテンシャルを有するということを意味するのだ。それでは、どうすればそのビジネスを具体的に顕在化させ得るのか?この問い掛けに対する答えが全てといっても良い。それは、その作品のパーフェクトさや、人間が生まれながらにして共通に持っている感性の何かに自ずとシンクロするようなものを創作できるかどうかではないだろうか。
ワイヤレスインターネットのビジネスを始めるにあたって、最も大切にした視点の一つは戦国時代の鉄砲に相当するものは何か?というような発想だった。携帯電話に組み込まれるソフトウエアも、その基本はプログラミング言語によって記述される。それは単純明快、明白な事実であるので、実はこの分野にこそ全人生を賭けるだけの価値のある巨大なビジネスの種が隠されていると考えた。
戦国時代は鉄砲の性能やその使い方の優劣によって勝負が決着していった。それと同じように、他と一線を画するアプリケーションが創造されるか否かは、企画力以外にプログラミング言語の優劣に大いに関わる問題であると捉えた。しかしながら、その言語自体が機能的にも品質的にも他を圧倒していない限り、無名のベンチャーにその資格はない。それ故に、機能と品質に関しては一切妥協することなく仕事に取り組んでいるつもりだ。
そのような地道な努力を継続する過程においてのみ、最高傑作と呼べるような作品は生まれるような気がしてならない。プログラミング言語とは簡単にいえばコンピューターに対する命令(言葉)の集まりともいえる。これに対して私たちが日常当たり前のように使っている自然言語は、人に対する言葉である。これら2種類の言語の相違を対比して、想像することでいろんなアイデアが浮かんでくる。この言語の相違についてはまた後に考察したい。
世界でビジネスするのであれば英語という言語は欠かせない存在になっている。一方では10億人以上という人口を有する中国語もその数からビジネスをする上で将来は重要な言語になるのではないだろうか。
そんな風にして考えると、いまソフィア・クレイドルでデザインしているプログラミング言語が、携帯電話やそのほかのワイヤレス機器のソフトウェアを開発するためのデファクトスタンダードになれるかどうか、それによって未来は全く異なる結末を迎えることになる。
数年先の未来では、携帯電話の中で動作する大半のソフトウェアはインターネット経由でダウンロードされる形式で販売されるだろう。一つ一つのソフトウェアの単価は安くとも、ダウンロードされる数が桁違いに巨大であること、そしてそれらのソフトウェアのほとんどがソフィア・クレイドルのデザインするプログラミング言語で記述されているというイメージがこの先5年後の私たちのビジョンであり、ビジネスのかたちである。
2005 年 06 月 05 日 : Core concept -19-
海外からの問い合わせが全体の8割を超える。特に、SophiaFrameworkという製品への海外からの問い合わせが全体の半分を占める。しかしマニュアルの英訳が間に合っていない。英語版があれば間違いなく注文は来る。そんなジレンマを抱えながらも、一歩ずつ前進している実感だけはある。
いま最も力を入れているのは、携帯ソフトを記述するためのプログラミング言語に関して、世界共通のデファクトスタンダードを確立するという一点に絞れる。PCの世界では当たり前であるが、C++というプログラミング言語でシステム開発をしている技術者は多い。だが携帯ソフトの世界ではそれが皆無に近い。
私たちは、コンピューターの小型化へと進むトレンドから、何れ携帯ソフトもC++というプログラミング言語で記述されるであろうと予測し、それを実現する仕事に3年以上の歳月を費やした。長かったがそれもまもなく完成する。何事も最後の仕上げが肝心だ。間近に迫ったゴールに向かって只管完璧さを求めて全力を尽くしている。
この製品への海外からの期待は極めて大きい。宣伝も広告も一切していないのに、問い合わせが引っ切り無しにやってくる。海外のお客さまにも理解できるようにマニュアルの英訳が望まれる。A4用紙に印刷して1000ページを上回るボリュームがある。製品が完成すれば次はマニュアルの翻訳という仕事が待ち構えている。
スクールに通い英語を学ぶ人は多い。なぜ学ぶのか?その理由の一つに、自分の世界観が広がり新たな仕事ができるからといったことがあるかもしれない。コンピューターのプログラミング言語においても同じように、新しい言語によって世界が変貌を遂げることだってあり得る。私たちはそんなところに一つの目標をおいて仕事に励んでいる。
(つづく)
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2005 年 05 月 29 日 : Core concept -16-
例えば野球の場合であれば、プロのピッチャーはボールが辿り着くキャッチャーのミットの中心を凝視めて投球する。
ビジネスの場合も同じで最終着地点を具体的にイメージしそれに向かって行動すれば、知らず知らずのうちにその方向に向かって近づいている事実に気付くだろう。
ソフィア・クレイドルの携帯電話向けソフトウェア事業の最終着地点は、全世界の携帯電話利用者にネット経由で自社ソフトウェアを自社のサーバーからダイレクトに配信するビジネスを具現化することである。
会社全体としての首尾一貫したビジョンは、ソフィア・クレイドルに所属するスタッフの尊く貴重な才能や能力、熱意によって創作される製品やサービスが、社会に受け入れられることによって永続して発展を遂げることである。
企業、特にベンチャーと呼ばれるような組織では、スタッフが自分たちの組織の方向をよく理解して、現在の自分の行動によってその着地点に向かって進んでいるかどうか反省できるスタイルが望まれる。
(つづく)
2005 年 05 月 21 日 : Core concept -15-
人間が動物と比較して一線を画している点は言葉を扱える点にあると謂える。太古の昔、言葉の発明により文明が生まれ、文明によって国家は栄え、人々の生活も豊かになっていった。あまりにも当たり前すぎて、無意識にうちに言葉というものを生活に取り入れている私たちであるが、その威力は偉大である。ブログにしても、謂いたいことをどのような言葉を選択し、どのような文体にするか、その並べ方で読者に与えるインパクトは大きく異なってくる。
言葉、即ち言語というものはコミュニケーションにおける基本中の基本で、コミュニケーションのツールとしては最も大事にすべきものであろう。同じように、ソフトウェアにもそれを記述する言葉、即ちプログラミング言語が存在する。古代の国家が使用する言葉の優劣で繁栄するか否かが決められたように、ソフトウェア業界においても、どのようなプログラミング言語を使ってプログラムを作るかで競争力が大きく異なってくる。
携帯電話向けソフトウェアの世界は、30年くらい前のパソコンがマイコンと呼ばれていた頃の状況に酷似しているように思える。機能性に優れた、品質の良いプログラムを早く簡単に作るためのプログラミング言語が無きに等しい。30年前、マイクロソフトはBasicという簡単にプログラムを作成する言語をマイコンの世界に導入することで飛躍の切っ掛けを掴んだ。
コンピューターの歴史を振り返れば簡単に分かることなのだが、飛躍するソフトウェア開発ベンチャーは、先ずプログラミング言語の周辺の事業からスタートしているのが大半だ。私たちは過去のこのようなトレンドから携帯電話のソフトウェアを容易に迅速に開発するためのプログラミング言語環境に貢献する事業からスタートするのがベストではないかと考えた。
2002年がスタートした頃は、ゲームが中心ではあったがNTTドコモの携帯Javaであるiアプリもようやく脚光を浴び、携帯Javaアプリ開発のマーケットは活況を呈していた。Javaというプログラミング言語に関わるシステム的なインフラ以前に、そういった土台が無くとも早く携帯Javaアプリが欲しいという最終利用者のニーズは極めて高かった。
それ故に、携帯電話向けアプリケーション開発会社は携帯Javaアプリを作れば作るほど儲かるような状況にあった。ソフトウェア技術者をたくさん雇い、たくさんの携帯Javaアプリを作れば作るほど儲かるのような状況が今でも続いている。
そんな事情もあって、直ぐにはお金に結びつかない携帯Javaを圧縮するツールであるとか、いまや全てのKDDIの携帯電話に搭載されているBREWというシステム向けのC++ライブラリを研究開発し製品化し、そして販売までしているソフトウェア開発会社は私たち以外は皆無である。3年以上の時を経て、未だに私たちの競合会社は存在しない。競合が存在しないということは、逆の意味ではマーケティングでは苦戦することを意味するのであるが、そんな逆境にあるからこそマーケティング力も鍛えられるというものである。
何ごとも急がば回れ。かつてパソコンがマイコンと呼ばれていた時代のソフトウェア開発ベンチャーが辿った王道に、私たちはビジネスチャンスを見出していった。
(つづく)
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2005 年 05 月 17 日 : Core concept -13-
音楽家、作家、画家などのアーティストと同様、プログラマーの業界にもそれに近い雰囲気のトレンドのような兆しがこの日本においても体感できつつある。そこにある種の真新しいビジネスチャンスが隠されていると信じている。
携帯電話に一昔前のパソコンに搭載されていたような性能を有するCPUが搭載される時代だ。近未来においてその勢いは益々高まり、想像すらできない身の回りの機器にまでCPUが組み込まれてゆく。その時人々の生活が便利に楽しく豊かになるかどうか?それは、さまざまな機器に組み込まれたCPUを直接制御するソフトウェアの機能性とクオリティに掛かっているといっても過言ではない。
生活に身近なありとあらゆるモノにCPUが組み込まれ、ソフトウェアがプログラミングされオートマティックにインストールされる。そしてそのソフトウェアは、名も知れぬ人々に無意識のうちに利用されゆく。これは掛け替えの無い生活というものに密接に絡んでくる問題だ。それだけに、人の感性にシンクロするようなものだけが長く生き残り使われる世界へと移り変わってゆくのだろう。音楽や絵画と同様に、ソフトウェアも人にとって心地よい旋律や色調を醸し出す空間を構成するのものが選ばれる時代がやって来るだろう。
その意味において大切に心掛けねばならないのは人の感性を第一にして他と一線を画するものをどうやって創造するかということ。インターネットが世界中の隅々まで張り巡らされたいま、真に優れたソフトウェアは、光速のスピードでさまざまな情報機器にネット配信することができる。一つのソフトウェアが何十億台もの情報端末に瞬く間にネット配信されることも充分に有り得る。新しい現実が目前に迫っている。
そんな時代になってくると、たった一つだけの存在に過ぎないとしても、人々にとって何らかの理由で真に価値があり役立つものであれば、一瞬にして局面が良い方向に切り替わる、過去に人々が経験し得なかった世界になるだろう。ある意味では心躍るフェーズの連続かもしれない。
国内の音楽業界で最も売れている一人の、或いは一組のアーティストの年間売り上げが100億円程度だったりする。将来的にはソフトウェアの世界もこんな感じで、他よりも群を抜いて秀でたものを創作し、ネットで配信することができれば一人のプログラマーがそれに近い世界を創れるようになる。海外のマーケットに進出できれば、そのビジネスポテンシャルは想像できないほど膨大なものとなろう。
だからこのビジネスで成功するための必要不可欠な秘訣は、数多くの作品よりもたった一つでもいいから、世界の人々に最高傑作と自ら誇れる作品を生み出すことであり、具体的にはそれを現実とするノウハウを獲得することであろうと考えている。
(つづく)
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2005 年 05 月 12 日 : First finale
2005年5月からソフィア・クレイドル製品の海外輸出を開始する。長らく海外のお客さまから待ち望まれたことがようやく実現できる。同時に海外の有力ITベンチャーとの共同プロジェクトもスタートする。
単純に携帯電話の普及台数から類推すれば、日本を「1」とすれば海外のマーケットポテンシャルは「15」くらいである。日本における携帯電話のマーケットは飽和状態だが、海外の方はいまも勢い良く延び続けている。将来的に「15」というこの数字は「20」にも「30」にもなることだろう。
ソフィア・クレイドルのビジネスモデルは国内マーケットからの売上だけでも充分に利益が見込めるように組み立てられている。しかも粗利益率はほぼ100%だから海外マーケットでの売上はそのまま利益になる。自然に儲かる仕組みが実現できるわけである。
利益はスタッフと会社、そして社会の未来への発展に向けた源泉である。そのために、ソフィア・クレイドルを史上類を見ないような高収益企業にしたいと思っている。
それは海外でのビジネスにかかっていると謂っても過言ではない。そのために、Webとマーケティングに関してプロフェッショナルな人材を採用する活動を久々に展開している。
これまでは製品開発で手一杯だったが、これからは海外マーケットも含めたWebマーケティングを戦略的に強化するつもりだ。
これによって、「世界中のあらゆる携帯端末にクールなソフトウェアをネット配信する」というソフィア・クレイドルのビジョン実現に向けた、第一フェーズが完結する。