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2005 年 03 月 12 日 : メタプログラミング

ブラウザやメーラー、表計算などの便利で使いやすいプログラム(アプリケーション)のお陰で、たくさんの恩恵を受けている。

自動車や家電をロボットが自動的に製造するように、こういったコンピューターのプログラムが自動生成されるとすればどうだろうか。

プログラムを生成するプログラムのことを『メタプログラム』という。メタとは「上位の(above)」とか「超えて(beyond)」というようなことを意味するギリシャ語に由来する接頭語だ。いまソフィア・クレイドルではプログラムを自動生成するための『メタプログラミング』という概念とそのメカニズムの実現について研究開発を推進している。(携帯プログラムのサイズを半分にするSophiaCompressもプログラムを生成するという意味において一種のメタプログラムである。)

こんなに科学技術が進歩しているのに、プログラムだけは相変わらず大半の部分を人手に頼った方法によって製造されている。人間というのは必ずミスをする性質を持っている。そのため、どんなプログラムでもバグ(不具合)の存在からは免れない。大規模なプログラムであればあるほど、バグが含まれる可能性が高いといえよう。

WindowsにしてもWindowsXPになってようやく安定してきたが、WindowsMeやWindows98までは利用している最中にハングしてWindowsが立ち往生するのは日常茶飯事のことだった。もしそんなプログラムが飛行機や原子炉のような人命に関わる運行システムに使われるとすればどうだろうか。

プログラムを生成するための『メタプログラミング』の仕組みが確立されれば、それによって自動的に生成されるさまざまなプログラム(アプリケーション)も大元の『メタプログラミング』に信頼性があればすべて信頼できるものになる。

地球上には植物や昆虫、魚、鳥、哺乳類などいろんな生物が存在しているが、遺伝子の構造自体は共通していて、生物の遺伝子の中の情報のちょっとした差異がそのような多様性を生み出しているようだ。メタプログラミングの研究のヒントも見出せるかもしれない。

『メタプログラミング』によってプログラミングの世界は次のステージへと新たな進化発展を遂げるような予感がする。

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2005 年 03 月 11 日 : コンバージェンス

無(ゼロ)』から創まる、そんなベンチャーが長きに渡り継続的に発展するにはどうすればいいのだろうか。どのようなメカニズムが必要なのだろうか。インテルとマイクロソフトは『ウィンテル』として共に「CPUの処理能力は18ヶ月で倍増する」という『ムーアの法則』に従った事業戦略を展開し、現在も堅調に成長を続けている。大抵の場合、飛躍的な成長の裏には、何らかのしっかりとしたコンセプトやトレンドが確実に存在している。生き物でいえば、骨格に相当するようなものだ。

今は誰の目にも見えないのだが、何年後かの未来社会ではユーザーにとって必要不可欠なものを、鮮明にイメージできるセンスや才能を磨かなければと思う。日常生活のちょっとした兆しや変化からその後の未来の動向を予測し、その実現に向けて全力投球する姿勢がベンチャー経営者には必要だろう。

あまり聞きなれないキーワードかもしれないが、『コンバージェンス』を意味するようなトレンドが未来の高度情報化社会では重要視される。そんな風に考えて、私は『ソフィア・クレイドル』というベンチャーを創業した。辞書で調べてみると、『コンバージェンス』は「converge」という英単語から派生した言葉でそれは「(of a number of things)gradually change so as to become similar or develop something in common」(Oxford Dictionary of English)と定義されていたりする。『元々は異なるたくさんの物事が徐々に一つのものに収斂してゆく』という意味だ。

昔は文字しか入出力できなかったパソコンが、今では文字以外にも音声、画像、映像などいろんなメディアを扱える。だから、パソコンが一台あればすべて事足りるというのも、ある意味では『コンバージェンス』だ。インターネットで、ラジオやTV、映画などをまとめてひと括りにしてコンテンツ配信するのも『コンバージェンス』。音楽が聴けて、カメラ撮影ができて、電話もインターネットもできる携帯電話。それもまさに『コンバージェンス』の一種だ。

このごろ生活の中で興味深く思っている傾向がある。それは音楽CDを買うと、その中にDVDが入っていてその音楽の映像ソフトも入っているという現象である。CDもDVDも両方再生できるプレイヤーを持っている方はプレイヤーは一台で済むが、そうでない人はDVDを観るときはDVDプレイヤー、CDを聴く時はCDプレイヤーにメディアの種類に応じてプレイヤーを変えてそのコンテンツを楽しんでいる。

次のステップとしては、そのCDとDVDも一枚のメディアに統合され、ユーザーは利用シーンに応じて音楽を音または映像、或いは文字・画像(詞や楽譜)で鑑賞する生活スタイルを予測できる。最終的には音楽のオリジナルデータは一箇所のサーバーに記憶され、ネット経由でさまざまな情報機器にリアルタイムにコンテンツ配信され、それぞれの機器の特性に合わせて再生されることになろう。

コンピューターそのものは、世の中の事象をある側面からモデリングしシミュレートする能力で社会の発展に寄与してきた。昔のコンピューターは性能も低かったので、ものごとをある側面からしかシミュレートできなかった。今日ではコンピューターとネットワークの大きな発展に伴って、一つのモデルで全方位あらゆる角度からモデリングの対象となったその事象シミュレートできるようになってきている。例えば、音楽の場合、一つのモデルで音で聴く、或いは映像で観るといったような方式である。やろうと思えば、その曲の詞や楽譜、そして解説やエピソードまでもが音楽を楽しみながら同時に閲覧することすら可能だ。

最近では、『ムーアの法則』に従って高性能なCPUが安価に大量生産され、携帯電話、テレビ、自動車など様々な機器に導入されようとしている。そうなってくると、コンテンツそのものをいろんな情報機器に合わせて開発すると膨大なコストがかかってしまう。それらの情報機器がその性質に応じて、一つのコンテンツをそれぞれ適切に解釈し、ユーザーに最適なユーザーインターフェースでコンテンツ配信することが求められるようになるだろう。

コンテンツのモデルを一つに統一し、それを多種多様な情報機器に配信するのであれば、コンテンツの送り手と受け手の両方に、ある種共通のプラットフォームがあればスムーズにゆく。

ソフィア・クレイドルでは、携帯電話という情報機器でさまざまな情報をハンドリングするユーザーインターフェースを核にした軽量でスピーディなプラットフォームを研究開発してきた。パソコンのWindowsOSそのものを携帯電話で動作させることは不可能であるが、携帯電話上のソフィア・クレイドルのプラットフォーム(SophiaFramework)をパソコンで動作させるのは何の問題もない。実際のところ、パソコン上の携帯電話のシミュレータ上で動作している。

さまざまなコンテンツのモデルが一つに収斂(『コンバージェンス』)し、それを大小、形態もバラエティに富んだ情報機器に配信するとなると、自然にそれを統合するような統一されたプラットフォームがいろんな機種に搭載されることが求められる。機能性は勿論のこととして、そこには軽量であること、スピードが速いこと、さまざまな機種で動作できるように移植性が高いことなどが大切だ。いまはそんな方向性に未来を感じてソフトウェアビジネスを推進している。

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2005 年 02 月 23 日 : ストラテジックマインド

「0」、「1」、「2」、「3」、・・・「9」という10個の数字を並べた、所謂、順列の組み合わせがどれくらいあるのか瞬間的に想像できるだろうか?

電卓を叩いてその順列の組み合わせの数、即ち「10!=1×2×3×・・・×10」を計算してみると、「3,628,800」という数字が液晶画面に映し出された。たった10個の組み合わせだけでもこんなにも膨大な数となってしまう。

現実の世の中では選択肢とその組み合わせは数え切れないくらいある。だからこそ、同じように見える事業でも、それぞれの切り口に対する見方や優先順位をどのように意思決定し行動するかで、実際の結果は全く異なった様相が現れる。

いつも行列ができて繁盛しているラーメン屋もあれば、昼食時ですら閑古鳥が鳴いている寂れたラーメン屋もある。事象の全ては経営者がいろんな物事の切り口の視点をどのように選択し、考えて行動しているかという結果に過ぎないのかもしれない。しかし、これこそが戦略的な思考であり、経営者が最も大切にすべき行動様式なのだ。

創業時におけるソフィア・クレイドルの戦略的な視点というのは以下のような感じだった。

ソフィア・クレイドルは携帯電話向けのソフトウェア製品の開発と販売の事業を展開している。商売の基本は“まず最初にどこで創めるのか”ということである。分かり易い店舗の例で譬えるのなら、同じ店であれば人通りの多いところに開店した方が売上が大きくなるのは小学生にでも分かるだろう。しかし、現実の事業では人通りの多いところが見えない場合が多く、この選択と集中が意外に難しい。

携帯電話向けソフトウェア開発事業を創める時に真っ先に注目したのが、世界における携帯電話出荷台数のメーカー別シェアの数字だった。世界的に売れている、或いは売れるであろうから数の多いプラットフォームを選択した方が、人通りが多い通りと同じだから商売が成功する確率は高まる。

物事を俯瞰する姿勢が、勝てる戦略立案には求められよう。創業当時はそんな事情で携帯電話の世界シェアを調べて考えていることが多かった。以前の日記で紹介したデータであるが、3年前とほとんど変化はないのだが、携帯電話の世界シェアは次のようになっている。

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 携帯電話の世界マーケットシェア
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 ノキア        30.9%
 サムスン       13.8%
 モトローラ      13.4%
 ジーメンス      7.6%
 LG          6.7%
 ソニー・エリクソン  6.4%
 サジェム       2.5%
 松下         2.4%
 NEC         2.0%
 三洋         1.7%
 その他        12.8%
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 合計         100.0%
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           ( 2004年3Q)

世界の携帯電話業界をよくご存知ない方は、この表を見て意外に思われるかもしれないが、日本の携帯電話は世界マーケットでは全く売れていない。実質的にはソニー・エリクソンは海外に含めてよいので、世界マーケットでは海外の携帯電話メーカーが90%以上のシェアを占めている。

創業当時、この数字を見て思ったのが、日本国内でしか使えないようなソフトウェアテクノロジーは世界マーケットでは確実に淘汰されるだろうということだった。

であれば、最初から海外でビジネスを創めるというオプションも有り得たが、敢えてそれは選択しなかった。幸運にも国内でも海外マーケットを対象とした携帯電話向けソフトウェア事業が可能だった。そして、日本でしか得がたいような都合の良い点もあったからだ。

それは携帯電話そのものの進化と関係している。どんな製品にしても、それが多機能、高付加価値化してくれば、必ずそこにはレイヤー構造のようなものを製品のアーキテクチャーに見出せる。ちょうど、ソフィア・クレイドルを創業した2002年当時、携帯電話業界はそんな変化の荒波に揉まれていた時期だった。

携帯電話のOSがいくつかに統一される兆しがあった。それからアプリケーションを開発するための全世界で利用可能なプラットフォームとしてJavaBREWといったようなものが姿を見せつつあった。JavaやBREWの上であれば、世界マーケットにおいて携帯電話の種類に関係なく、ソフトウェア事業を展開することができた。しかも、国内マーケットに普及している日本製の携帯電話のハードウェアは世界で最も進んでいたので、先進的なアプリケーションを世界に先駆けて研究開発できる可能性があった。

  

2005 年 01 月 06 日 : From the top of the world

13 世紀の始めのこと。ある不思議な人物が、突如として歴史の表舞台に現れ、人類史上最大といわれるモンゴル帝国を築き上げた。何故、無名の存在に過ぎなかったチンギス・カンが、そんな気宇壮大な伝説のような歴史を成し得たのだろうか。

モンゴル帝国のことを調べていて興味深かったことは、遠い国々へのモンゴル遠征軍は、主として少年たちで組織されていたことだ。しかも、故郷であるモンゴルを出発する時は、10 代前半の者がほとんどであったという。しかし、少年たちの軍隊を率いる指揮官は、歴戦練磨の戦士で、彼らを充分に教え鍛えることができた。遠い国への長い遠征の過程で、少年たちは、指揮官の指導に素直に従い、自らの武術に磨きをかけたという。そして、さまざまな実地での体験や訓練を通して、一人前の勇敢な戦士へと成長していった。そのようにして統率された軍隊は、古今無双の戦闘力、機動力を擁して連戦連勝し、人類史上最大の世界帝国が誕生したということだ。

このような過去の歴史の断片からも、未来に向けてベンチャー経営の戦略を立案するための、ある種の教訓や示唆が見出せる。

若きスタッフたちが、世界の檜舞台で、自由にのびのびと楽しく活躍できる場を目指して、ソフィア・クレイドルというベンチャーは創業された。なかにはそれが信じられずに去るものもいたが、年々世界の頂点へと近づいている。創業以来ずっといるスタッフたちにはそれがよく実感できると思う。

世界に通用するようなものは、どのようにして生まれるのであろうか。

それは、一朝一夕に生まれるものではなく、木の年輪が増えるように、その土壌や礎となるところで、長い歳月がどうしても必要なのに違いない。恐らくモンゴル帝国は、伝統を享け継ぐものが、長期的な視野から、少年たちをじっくりと実践で育てることで、帝国の繁栄を築いていったのではないだろうか。

世界の頂点を目指している。だから、何年ものロングレンジに渡って、若い頃から自分たちの技術、製品、そして会社そのものを継続して成長させたいと願っている。

大企業に所属していた頃は、配属された組織の壁があって、世界レベルでものごとを考える余地はほとんど無かった。入社した瞬間、サラリーマンというのは安定しているけれども、数学でいうところの上限がある世界に思えた。

ある意味、ベンチャーを創業して思うのは、反対にこんなことだ。たしかに数学的に言えば、やりかたを間違えると、すべてを失うことや−∞となってしまう可能性もある。だが、+∞という数学も現実に存在する世界でもある。それこそ、創業したばかりの頃は、『世界を狙う』、という表現すらが夢物語としてしか捉えることが出来なかったかもしれない。いま残っているスタッフたちは、オリンピックのゴールドメダリストのように世界の頂点に立てる日を信じて、真剣に仕事に取り組んでいる。

去っていったスタッフたち、そしていまのスタッフたちのために『Dreams Come True. 夢は実現する』ということを実証したい気持ちでいっぱいだ。長期戦になろうとも、現実社会でいろんな経験を積み重ね、自らに磨きをかけ、いつの日か必ず世界で一番高い頂上に立ち、スタッフたちと共にそこからの美しい景色を眺めたい。

  

2005 年 01 月 05 日 : Viewpoint

年明け早々なのに、新たにカナダ、ポルトガル、タイ、ベトナム、デンマークといった意外な国々からも問い合わせが来るようになってきた。恐らく日本で利用されているような高性能な携帯電話が、きっとそういった国においても普及の兆しがあるに違いない。

昨日、今日と、会社は休みなのだけれども、インターネットを駆使して、米国のある会社とソフィア・クレイドルの製品導入の検証をしている。問題となる箇所も特定できたので、多分うまくいくことだろう。ここに導入すれば、ソフィア・クレイドルにとって初めての海外進出ということになる。(こういう時、インターネットの偉大さや有り難さといったものを痛感させられる!)

今年は期待が持てる楽しみな一年だ。これまで努力して研究開発してきた製品の成果が現れ、拡がってゆく。さらにより高い目標を打ち立てて、ひたすら努力することが大事ではないかと考えている。そして、一歩一歩自分たちが成長することに、人生の意義を感じるようでありたいと願う。

ベンチャービジネスで成功するためのキーとなるポイントの一つは着眼点ではないだろうか。天才的な頭脳を有する会社であるのに、伸び悩んだり、倒産、吸収される会社が後を絶たない。戦略的に間違った選択をすれば、いくら戦術に長けていようが軌道修正のしようが無いということなのだろう。だから、何かものごとを始める時は、それに将来性があり、自分たちの強みを発揮でき、自分たちにしかできない事業かどうか、それをよく洞察することが何よりも大切だ。

いくら将来性があっても、大手企業などの他社が参入しえないような、特別な理由や条件が無ければ、その事業は始めない方が良い。自分たちにしかできないことは何かをよく見極める必要がある。そのためにも創業する前に、自分たちの好きなこと、得意なこと、強みは何かということを冷静に、真剣に見つめ直すことだ。

i モードが導入された時点で、直ぐに携帯電話というものの将来性を非常に感じたが、どこから入っていけば良いのか、その突破口をなかなか見いだせずにいた。3 年という期間を費やして、ようやく『未来の携帯電話=ネオ・タイプの超小型モバイル PC 』という方程式に確信が持て、この分野に入るべき道を発見することができた。

しかし、何れ多くの競合他社がこの分野に参入することは予想された。そこで、結論から言えば、携帯電話のソフトウェアであっても、「どう転んでも 時間の掛かってしまう ビジネスの分野」を探し出す努力をした。それが現在製品となっている携帯ソフト圧縮ツール「 SophiaCompress(Java) 」と携帯ソフトフレームワーク「 SophiaFramework 」である。何れの製品も、天才的な一人のプログラマーが設計し、ごく少数の有能なプログラマーのチームでプロジェクトを構成して、実現していった場合の方が、格段と質の良いものをアウトプットできる。

携帯電話向けソフトは、メモリ容量や CPU の性能の問題があって、いまは量よりも質が重視される傾向にある。さらに、他のジャンルのどんな製品でもそうかもしれないが、ソフトウェアのクオリティというものは、それを構成するパーツの中で最も劣る部分で決定されると言われている。所謂、ボトルネックのことだ。多人数からなるプロジェクトの場合、どうしても様々なプログラマーが混ざってしまい、部分的にはすごく優れていても、ある部分が欠陥となり、総合的には陳腐なものになっている、という残念なことが往々にしてある。

そこに目をつけて、ほんの数名の少数精鋭のプロジェクトで、3 年というベンチャーにしては比較的に長い歳月をかけて、自社製品の完成度を高めつつ、実績を積み重ねていった。現段階でこれといった競合他社を見いだすことはできない。同じくらい天才的なプログラマーを擁して、いまからこの分野に参入したとしても、これまでの3年という歳月を挽回することは至難の技だ。

ベンチャーといえば、「スピード」というものが重視される傾向にあって、意思決定においてスピードはとても重要だと思う。しかし、反対に、製品開発においては、どのように頑張っても、例えば 3 年かかるような分野を選択し、3 年後にピークになるものにフォーカスを絞り、それを見計らって目立つことなくこっそりと研究開発を進めることも一つの重要な考え方だ。直ぐに実現できてしまうような、簡単な製品やサービスは、当たることもあるが瞬間的に消え去ってしまうのことの方が案外多い。

有り難いことに「時間」というものは、大企業にも零細企業にもすべてに対して、平等で最も貴重な経営資源だ。

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2004 年 12 月 22 日 : 携帯の未来

携帯電話の将来展望】( Sun Developer NEWS より)

世界最初のコンピューター「ENIAC」が世に登場したのは1946年のことです。あれから、半世紀にわたる時を経て、コンピューターはあらゆる側面から進化・発展を遂げてきました。

エニアック−世界最初のコンピューター開発秘話−』(スコット・マッカートニー著)によると、「ENIAC」は高さ9フィートのキャビネット40個に、1万8千本近くの真空管から構成され、床面積1800平方フィート、重量30トンという巨大なコンピューターでした。動かすには174キロワットの巨大な電力が必要で、コンピューターが動作していない時でさえ、その電気代は1時間あたり650ドルもしました。また、「ENIAC」はひとつの弾道を計算するのに30秒もかかりました。

しかし、現代のスーパーコンピューターでもってすれば、その弾道計算に必要な時間は3マイクロ秒以下です(マイクロ秒とは100万分の1秒)。今のコンピューターは、「ENIAC」と比較してその処理速度は1000万倍以上です。そして、Javaが搭載された携帯電話でその弾道を計算したとしても30秒はかからないでしょう。今後、携帯電話の処理性能はますます加速度を高めて、予想もしない方向に更に、進化・発展を遂げるでしょう。その未来を予測しつつ、ハードウェアソフトウェアの技術開発をする仕事はとても興味深いものです。今や、50年前には30トンもの重量を有するコンピューターを越える処理性能が、ポケットに入れて持ち運びできる携帯電話の中にあるのですから。

昔、「マイコン」と呼ばれていた今の「パソコン」の原点である「マイクロプロセッサ4004」(日本のビジコン社製)が、初めて登場したのは1976年のことです。これには0.6MIPSの計算能力があり、これは「ENIAC」と同等の性能であったらしいのです。ところが、当時は、世界最大のコンピューター会社であるIBM社を含め、まさにこの「マイコン」が、今日の「パソコン」として大きく進化・発展するという無限の可能性を予見できた人はほとんどいませんでした。

その意味合いから、今は、30キロバイト、100キロバイトなどのメモリ制約や処理性能の面で、パソコンと比較すれば大きく見劣る携帯電話ですが、実は、何十年か前の大型コンピューターに匹敵するCPU性能がなんと今の携帯電話の中に存在しているのです。その驚くべき事実をよく認識・理解し、留まることない数々の技術革新により今のパソコンのCPU性能に匹敵する処理性能が、将来の携帯電話に搭載されるものと考えて、未来の携帯電話の姿を想像することがとても大切ではないかと思います。

コンピューターの未来を占う上で大きなヒントとなるのが、IT技術の発達により、コンピューターがそもそも開発されたきっかけとなった計算能力を、今や必要としなくなったのだという課題をよく理解することでしょう。現在、コンピューターで大きな課題となっているのは、『使い易さ』、『便利さ』、『快適さ』、『面白さ』など、利用者サイドにとっての、日常に即してのより切実で高度な要求に向けての解決策ではないでしょうか。

20年前は余程のマニアで無い限り、個人で「マイコン」を購入し、その利用を楽しむということはありませんでした。しかし、近年のハードウェア技術の急速な発達を梃子にして開発されたWINDOWSブラウザのような、主として「ユーザーインターフェース」を中心とした使いやすいソフトウェア技術の登場により、子供や年長者やあらゆる方がパソコンを操れる時代となりました。

しかし、「パソコン」という外見的にも技術的にもとっつきにくいイメージがあることが、かえってある種の障壁となってしまい、一部の方たちには利用がためらわれる傾向にあります。しかし、今後、コンピューターというものは、より『人間の視点』に立つことを前提にしたプログラミングがなされることにより、今の携帯電話のようにその中にコンピューターが内蔵されていることをまったく意識させないものに変化するでしょう。私たちは、あたかもテレビ、書籍、文房具、電話などの日用品のように全ての人が自然にかつ自由にコンピューターを利用するという大きな潮流の中にあるのです。

これを達成するには、ユーザーインターフェース、人工知能、小型化、無線通信など今まで以上に高度なコンピューター技術の更なる技術革新が必要とされるでしょう。例えば、何年後かには、今の最新式パソコンを上回るコンピューター性能や無尽蔵に利用できる高速無線回線、ハード機器間の無線接続などが携帯電話に実現されるようなことをイメージアップすれば、現在と大きく異なる携帯電話の利用シーンが浮かんでくるかもしれません。

(以前サン・マイクロシステムズさんのサイトに寄稿した文章より)

  

2004 年 12 月 21 日 : Imagination

日頃お世話になっている方々から励ましの言葉をいただく。とてもありがたく感謝している。

ある方は「世界ナンバー 1 を目標にせよ」と、また、ある方は「大企業に少しでも近づくように」とおっしゃる。

この 2 通りの発言には、似て非なる大きな違いがあると思っている。

「大企業に少しでも近づくように」という発想で企業経営をしていれば、いつまで経っても零細企業であり続ける確率が高い。むしろ、既存の大企業を凌駕するくらいの勢いで、常日頃から大志を抱いて経営に励むことのほうが、永遠の企業へと近づける方法ではないだろうか。

思いもよらない幸運というのは、稀なことだからそういうのである。日常で起こっているほとんどのことは自分の思いの範囲内かもしれない。思いや夢、そしてビジョンを大きく描くことができれば、それだけ達成できることも大きなものとなる。

想像力というものは、経営者にとって極めて大切なスキルである。

見えないものをもう既に実現しているくらいに思いを描くこと。

イメージをビジョンにすること。

〜 ご存知の方も多いと思うけれど、これは、最近読んだ素朴なストーリーであるゆえに考えさせられた本の例である 〜

最近、IT ベンチャーの話題を、新聞、雑誌、テレビなどで知る機会が多く、様々な波があるようだ。ほとんどのネットベンチャーが国内での活動に終始し、世界的な視野でものごとを捉えていないんじゃないかと思う。

Yahoo! や Amazon ような海外の有力ネットベンチャーが、鎌倉時代の「元寇」のように日本に進出してくることは間違いない。その時、日本のネットベンチャーが、どのように防戦に回るのかが見ものである。

ソフィア・クレイドルの業種はソフトウェア業であり、最初から世界を舞台にしていないと結局は生き残れないので、それを前提にして経営をしている。開発している製品が、世界中の人々に評価され、支持され、愛されるようにと。

厳しい局面にも遭遇するだろう。

厳しさの中で育っていくことができれば、世界的な事業だから、正しく地球規模のスケール感に満ちたワクワク&ドキドキの仕事となろう。

いまはその夜明けなのかもしれない。

  
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