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Sophia Cradle IncorporatedPresident Blog : Sophia Cradle

2005 年 10 月 29 日 : 世界への橋頭堡

お客様の大半は東京の会社である。しかしながら、過去 1 年間、 1 度も東京へ出張していない。(そもそも京都を離れたのはささやかな用事で大阪へ 2 度あるくらい。限りある時間をこの上なく大切にしているので社外の人とも滅多に会わない。)ビジネスの大半は東京を中心とする首都圏でなされている。だから手っ取り早くビジネスを立ち上げたければ東京へ行くのがベストなのは確か。

でも敢えてその道は選ばなかった。人と違う行動を採ることはベンチャーらしく思えた。誰もが発見できない新しいビジネスチャンスはそんな行動の中から生まれるものでは?

皆が東京へ出稼ぎに行くからそれに習えば儲かるというのは面白くない。東京へ行くこと自体に何も問題はない。昔むかし、京都が首都だったはずで、時代の流れに翻弄されたくもない。

創業以来、外出を避けていたのには理由がある。そういった状況に自らを追い込めば、京都からでも日本全国に商品が売れるための仕組みが必然的に創造される。

マーケットが東京だけならば東京に出張しても、支店を開設しても全然問題ない。ビジネス的にそうすべきだろう。しかしソフィア・クレイドルのマーケットエリアは全世界なわけ。たまにローマやパリ、ロンドンへ出張するのならば、それも良い。けれども何か案件が発生するたびに海外出張しているとすれば、人がいくらいてもたらないビジネスモデルが出来上がってしまう。

それを避けるために、最初からハードルを高くして、営業はインターネット 1 本で、商品の出荷は宅配便、サポートはメールという手段ですむビジネスモデルを構築していった。

インターネットだけで商品を売る難しさは身に染みるほど味わった。でもそれを一種のパズルのようなゲームに置き換えてみることでいろんな発想が思い浮かんだ。様々なアプローチを実践し、取捨選択しながらここまで来たのだけど、幸い何とかここまでやってこれている。

ネットから注文が入れば、宅配便の会社にダイヤルするだけで荷物が配送されるように業務がスムーズに流れている。発注元が国内であろうと海外であろうと、日本語と英語の違いを除けば、受注・出荷処理の中身は全く同じ。京都に本社があるだけで世界マーケットを対象にしたビジネスができる。それはインターネットの偉大さを実感する瞬間でもある。

  

2005 年 10 月 21 日 : 成長の実感

2005 年 10 月から第 5 期がスタートした。今日は決算の書類整理のためにお客様からの注文書をバインダーに閉じていた。第 4 期の注文書は 8 センチバインダー 1 冊にまとめることができた。感慨深かったのは同じ厚さのバインダーがもうひとつあったことだ。それには第 1 期から第 3 期までの 3 期分の注文書がまとめてあった。

注文書を閉じるバインダーの厚さで会社の成長を実感できるフェーズにようやく突入した。創業の頃、販売する製品すら無かったり悪戦苦闘しながらベンチャー的な香り漂う製品を販売していた日々とは隔世の感がある。

今のペースからすれば第 5 期の注文は海外からの受注も見込めるので大幅に増加する見通しだ。しかしスタッフ増員の計画はいまのところない。これまでの 4 年間で、売上が増加してもスタッフの人数を増やすことなく回るビジネスモデルを意識的に創ってきた。数年間はこのペースで伸びても数名のスタッフを増員するだけでいいスケーラブルなシステムになっている。

どうしても欲しい人材がいれば若干名採用する程度の人員計画はある。創業以来、スタッフの数は 16 名程度を維持して経営してきた。人数は一定でも売上と利益は着実に伸びている。その分、スタッフの待遇やオフィス環境は改善されてきている。

売上と利益の伸びとスタッフの数をどうバランスをとるかが重要だと思う。理想とする人材にはなかなか巡り合えないだけに、在籍するスタッフにどうやって報いるかというのが先決であると考える。

例えば、仕入れがゼロの会社でスタッフは増えないのに売上が 3 倍になるというのは 1 人当たりの付加価値が 3 倍に高まることを意味する。それはスタッフが以前と比べて 3 人分の仕事をすることに等しい。

ベンチャーで働くメリットは 2 点に集約される。自ら好んで打ち込める仕事を成し遂げれること。それから、その成果に応じて上限のない収入を得られること。第 5 期以降はこれまでの先行投資を回収するフェーズなのでベンチャーの 2 番目のメリットをスタッフが享受できるようにしたいと願っている。

  

2005 年 10 月 21 日 : BREW SDK 2.1エミュレータ用カメラ機能ツールを無償配布

[PRESS RELEASE]

ソフィア・クレイドル、BREW SDK 2.1エミュレータ用カメラ機能ツールを無償配布

〜 エミュレータ対応によりデバッグ作業時間を半減 〜

[概要]

携帯電話向けソフト開発の株式会社ソフィア・クレイドル(本社:京都市、代表取締役社長:杉山和徳、以下 ソフィア・クレイドル)は、BREWSDK 2.1エミュレータに、カメラ機能を追加するツール『 Camulator (カミュレーター)』の無償配布します。受付は、2005年10月21日から2005年11月30日まで、同社サイトにて行います。入手には、同社新製品SophiaFramework Ver. 3.0 β1 無償トライアルに申し込み、アンケートに回答する必要があります。


[詳細]

カメラ搭載携帯電話の増加に伴い、BREW【※1】においても Ver. 2.1 よりカメラ機能をサポートするようになりました。しかし、BREW SDK 2.1ではエミュレータ【※2】上でカメラ機能がサポートされておらず、デバッガ【※3】などの開発支援ツールが使用できないという問題がありました。

その問題を解決するために開発されたのが『 Camulator 』です。『 Camulator 』は BREW SDK 2.1エミュレータにカメラ機能を追加し、携帯電話を使わずパソコン上でのデバッグ作業を可能にした世界唯一のツールです。

SophiaFramework【※4】との併用により、カメラ機能のメモリ追跡も可能になります。その結果、プログラミング、テスト、デバックの一連の作業サイクル回数が大幅に削減されます。

実機デバッグで35時間必要だったテスト時間が、『 Camulator 』を使用することにより20時間へ削減された例を確認しています。

本ツールのダウンロードにはSophiaFramework Ver. 3.0 β1 無償トライアルに申し込み、アンケートに回答する必要があります。

本プレスリリースURL : リンク
SophiaFramework無償トライアル受付URL : リンク

対象BREW 2.1端末:26機種
(PENCK・W31S・W31K・W31SA・W22SA・W22H・W21CA/CA II・W21T・W21SA・W21S・W21K・Sweets・talby・A5511T・A5509T・A5507SA・A5506T・A5505SA・A5504T・A5503SA・A5502K・A5501T・A1404S・A1403K・A1402S II・A1402S)

対象端末数: 約1300万台 (1機種50万台としてソフィア・クレイドルが算出) 

以上


■用語解説

【※1】BREW
読み方:「ブリュー」または「ブルー」
2001年1月に米国クアルコム社が発表した携帯電話向けソフトウェアの規格。「ブリュー」もしくは「ブルー」と読む。異なる携帯電話機のOSの仕様差を吸収し、単一のコンパイル後のプログラムをインターネットからダウンロードし、さまざまな携帯電話機でそのまま高速に動作できるように設計されている。日本ではKDDIが2003年2月よりBREWサービスを提供開始。NTT ドコモの一部の機種でBREWが採用されている。2005年10月現在、世界で29ヶ国56 の通信キャリアが採用しており、世界的な規模でその普及が急速に進んでいる。

【※2】エミュレータ
システム上で、異なるシステムを動作させるプログラムのこと。エミュレータを使えば、Windows上で携帯電話の機能を再現し、携帯電話向けに開発されたアプリケーションを動作させるようなことができる。

【※3】デバッガ
プログラムの不具合(バグ)の発見や修正を支援するソフトウェアのこと。プログラムが意図しない動作をしたり、停止した場合、プログラム中のどこに不具合があるのか調べる必要がある。デバッガはプログラムの状態を調べ、不具合の発見を支援してくれる。

【※4】SophiaFramework
読み方:ソフィア・フレームワーク
ソフィア・クレイドルが2002年8月に発表した、BREWアプリをC++プログラミングで開発することを世界で初めて実現した唯一のBREW向けC++オブジェクト指向開発環境。ユーザーインターフェース、通信、グラフィック描画、文字列処理など、ビジネス、コンテンツ、ゲームなどジャンルを問わず、あらゆるBREWアプリを開発するのに必要十分な“クラス”と呼ばれるプログラムモジュール群がラインナップされている。すでにKDDI公式EZアプリ(BREW)やビジネス系BREWアプリで多数の導入実績がある。
詳細情報URL: リンク


■ 会社の説明
株式会社ソフィア・クレイドル
代表者: 代表取締役社長 杉山和徳
設立日: 2002 年 2 月 22 日
所在地: 京都市左京区田中関田町 2 番地 7
資本金: 2645 万円
事業内容: モバイルインターネットに関する:
1.ソフトウェア基礎技術の研究開発
2.ソフトウェア製品の製造及び販売
3.システム企画及びインテグレーション
ホームページ: リンク

  

2005 年 10 月 19 日 : コンセプト

ソフィア・クレイドルで創っている製品やサービスのイメージを分かりやすく表現するのに苦心する。パズルとしてそれが解けたときに爽快感を味わう生活を送っている。

2005年11月から世界マーケットを対象にして"SophiaFramework"という製品の販売を本格的に開始する予定である。その時、インビジブルなソフトウェアはどう表現すればよいか。製品が売れるかどうか。それはコピーライティングのメッセージに左右される。

"SophiaFramework"は携帯電話向けソフトを開発するための一種の言葉と見なすことができる。携帯電話を言葉を理解する機械であると想定しよう。ソフトとは携帯電話という機械に思いの動作をさせるために言葉で表現した文章と見なせる。

仮に携帯電話が英語と日本語の 2 種類の言葉が分かるとして携帯電話に話かけてみる。この BLOG を読んでいる生まれも育ちも日本の方ならば、日本語を選択して話しかけるだろう。何故なら、意識することなく直感的に自由自在に日本語を扱えるからである。

それではなぜ私たちは日本語を無意識に思うまま自由に操れるのだろうか。答えは簡単だ。日本で生まれるとすると、ずっと日本語を読んだり聞いたり話したりしているからである。いくつものイメージや概念が知らず知らずのうちに言葉と一体になってパターン化し心のなかにインプットされているのだろう。生活シーンで英語はそんな風に接していないので、直感的に言葉がポンポンと浮かぶようなことは少ない。

日本人が日本語を、英国人が英語を直感的に扱う雰囲気。携帯電話向けソフトの業界でそんな空間のようなものを創造した。それが"SophiaFramework"のコンセプトである。携帯電話向けソフトを開発するためには、最初に携帯電話特有の制約に纏わる数々のテクニックを熟知してその壁を乗り越える必要がある。

PC でソフトを開発していた時と同じような感覚でプログラミングできるならば、すんなり携帯電話向けソフトの開発もできる。他に手掛けているものは世界に誰もいない。それが最大のビジネスチャンスだった。

現在、"SophiaFramework"が前提とするプラットフォームは携帯電話。未来は iPOD でも PDA でも PSP でも、そして PC やサーバーですらかまわない。多種多様ないろんなプラットフォーム向けのソフトを同じ言葉で同じ感覚で直感的にプログラミングできるようにすること。それがこの製品の着地点のイメージでありビジョンだ。

  

2005 年 10 月 19 日 : 世界戦略

マイクロソフト製品で普段よく使うのはWindows、Internet Explorer、OutLook、Word、Excelというたった 5 種類のソフトでしかない。にも関わらず、マイクロソフトは世界最大のソフト企業である。その理由は世界中の人びとがその限られたソフトをいつも使っているからである。

ソフィア・クレイドルは少数のスタッフから構成される組織である。研究開発できる製品の種類や数も限られる。ソフト企業が成長するための基本は、たとえ種類は少なくとも自社のソフトをネット経由で世界中に流通させることであるという仮説を立てた。国内だけでもソフトを販売するのは大変だ。だから世界に販売しようとするのならば逆に製品の種類を絞るというのが正解ではないかと考えた。

そんな背景もあって、ソフィア・クレイドルでは創業した頃から英語版の Web サイトを用意し世界に向けて情報発信している。そして海外から注文が来てもネット経由で製品をオートマティックに瞬時に出荷できる体制を整えつつある。ネットがあるからこそ成立するビジネスモデルである。少数でやろうとすれば必然的に製品の種類を絞らざるを得ない。結果的に最善を尽くしたビジネスが展開できるというシナリオなのである。

あまり外出しないかわりに研究や勉強も兼ねてベンチャーのサイトをヴァーチャルに訪問する機会は多い。Web サーフィンしながら思うのは英語版の Web サイトを提供しているベンチャーの少なさだろう。感覚的な数値ではあるが、1 〜 2 %くらいの確率でしか存在していないのではないだろうか。

客観的には国内、そして海外という戦略が常道かもしれない。けれども、そんな事情があるからこそ、最初から海外マーケットをも視野に入れて事業を展開するというアプローチもあり得ると思う。ある意味ではニッチ中のニッチな、正統派ベンチャー戦略ともいえるかもしれない。

現状のネットビジネスでは、想定するキーワードにて Google, Yahoo!, MSNなどに自社サイトが上位にランキングされることが生命線ともいえよう。ローマは一日にしてならずともいう。同じように海外の検索エンジンにて自社サイトが上位にランキングされるにはそれなりに時間がかかる。

直ぐに結論がでるものでないかもしれない。それ故に、経営資源が限られるベンチャーにとっては目先の現金に結びつかない海外 Web サイトは敬遠がちになるのだろう。でも海外マーケットを視野に入れるのならば、最初から、数年後全世界に製品をネット経由で全自動販売しているイメージと、そこに至る道筋を鮮明に思い描いてビジネスをすること。逆説的ではあるけれども、それがゴールへの近道であると信じた。

  

2005 年 10 月 15 日 : 上限なき世界

"ソフィア・クレイドル"というベンチャービジネスを創める時、Web や PC のソフトビジネスは眼中になかった。なぜなら上限が読める世界だったからだ。国内なら成功できるかもしれないが、世界のマーケットを考えた時、その可能性は限りなくゼロに近かった。

例えば、Web のビジネスなら少なくとも Yahoo!Amazon が創めた頃でないと世界なんて望めない。自分のビジネスの感覚では既に時代遅れの感は否めなかった。

試行錯誤しながらたどり着いた結論が、英国 ARM 社が提供するマイクロプロセッサ上でのソフトビジネスである。創業して 4 年近くになるが、周囲を見回して同じ志向性を持つ同業者はなかなか見つからない。

ARM プロセッサは NTTドコモ、KDDI、vodafone の携帯電話に止まらず、アップルの iPOD、ソニーの PSP、任天堂の NintendoDS、PDA、カーナビなど日常生活のありとあらゆる電子機器に組み込まれている。

しかし多種多様な電子機器にわたる ARM プロセッサ用ソフト開発を劇的に改善するプログラミング環境は、ソフィア・クレイドルを創業したときには存在していなかった。私たちはそこにビジネスチャンスを見出していった。ソフトプロダクトのビジネスだからすぐにお金にならない。でもマーケットポテンシャルは無尽蔵。しかも競争は皆無。ベンチャーを創める場としては持って来いだった。

携帯電話のように iPOD、PSP、NintendoDS などがデフォルトでネット接続されるのも時間の問題と思う。そうなった時に、ソフィア・クレイドルの提供するソフト技術がネット経由で配信されるとするならどうなるだろうか。

ソフトは一種の情報であって質量を持ち得ないので、1 台の情報端末にダウンロード可能なソフトの数の上限は無きに等しい。そもそもネット接続されるその種の情報端末も数え切れない。正しく無限の可能性が秘められている。

仮に 1 本あたり 1 円でソフトをネット配信したとしても配信先が ∞(無限大) であれば、トータルの売上も 1 円/個 × ∞ 個 → ∞ 円という世界である。いわば上限の設定は不可能であり、そこには果てしなくひろがる世界がある。

"∞(無限大)" のビジネスを実現するには、Google のようにビジネスモデル自体をコンピューターとインターネットで完結させることが肝要だと思っている。

これは一種のロングテールなビジネスモデルといえるかもしれない。

  

2005 年 10 月 13 日 : 定員限定

2002 年 2 月の創業以来、スタッフの定員は 16 名限定で"ソフィア・クレイドル"というベンチャーを経営している。将来、しかるべき条件が整えばその定員を増やすことは充分にありえるけれど、当分の間は定員 16 名で事業運営しようとしている。

ベンチャー事業にはその内容に応じて適正規模があると思う。要は 16 名という規模に押さえることで必然的に事業内容を絞らざるを得ない状況を創り出そうとした。そうすると一緒に仕事をするスタッフも自ずと少数精鋭となる。適正規模を維持することで、その集団が生み出すアウトプットが自然に極大化するシステムが重要だと考えた。

先日の BLOG で紹介したマイクロソフト創業時の成長の奇跡を見てほしい。著しい売上の伸びを遥かに下回るペースでしか人員は増えていない。

ソフトウェアビジネスの場合、結果が具体的な数字として現れるには少なくとも 3 年かかる。表の場合、1979 年に 1,356 千ドルの売上の数字と 1975 年の従業員数 3 名という数字。1975 年に 3 名で開発したソフトウェア( BASIC というプログラミング言語)が 1979 年に売れ始めて 1,356 千ドルと読むこともできる。 3 名で年間 1,356 千ドルの売上というのは決して悪くない数字だと思う。それにマーケティング理論の S 字形の売上曲線をたどればしばらくは何もしなくとも売上は増える一方である。これがソフトウェアビジネスの真髄といえよう。

[マイクロソフトの成長の軌跡 : 1975-1980 のデータ ]
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年度(年)  売上高(千ドル)   伸び率(%)   従業員数(人)
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 1975                     16                     −                         3
 1976                    22                    38                          7
 1977                382                  636                        9
 1979             1,356                  256                      13
 1980              2,390                 76                      28
------------------------------------------------------------------------------
          ※ 「マイクロソフトシークレット」より

プロフェッショナルな世界ほど定数というものが限られている。それによってオートマティックにクオリティが維持される機構が働く。J リーグならその最高峰である J1 は 12 チームでありプロ野球でも 1 軍は 12 チームである。さらに各チームで正式な選手として登録できる人数にも定数が決められている。

だからこそ個々の選手が切磋琢磨しながら自分に秘められた潜在能力をできる限り顕在化させようとする。すると感動的なプレイが生まれ観客は満足する。そういったプロフェッショナルなメカニズムは、ソフトウェアを開発し販売するというベンチャービジネスでも有効である。

ビジネスという観点からは、ソフトウェアビジネスの儲けの本質とは一体何かという問いかけはとても大切だ。そのヒントは単純である。既にソフトウェアビジネスで成功を収めたベンチャーの歴史をたどってみると良い。

マイクロソフトはプログラミング言語( BASIC )、オラクルはデータベース、グーグルは検索エンジンといった例を挙げることができる。ソフトウェアビジネスで顕著な成功を果たしたベンチャーは何れも勝負を賭けたソフトウェアのヒットをきっかけにして飛躍した。ソフトウェアビジネスでは、まずどのソフトウェアで勝負を賭けるのかその選択と集中をする。そして決定したそのソフトウェア開発に全力投球するというのが肝要だろう。

AだけよりもAとBという複数のソフトウェアを開発し販売した方が儲かりそうな気がする。しかしBよりもAが有望であればAに集中特化する方がソフトウェアビジネスは儲かる。なぜなら研究開発が完了すればソフトウェアの原価は限りなくゼロに近いため、

粗利益 P = 売れたソフトウェアの本数 N × 単価 @

という数式が成立するからである。

AとBの両方を手掛けために力が分散しAとB共に売上本数ゼロで共倒れになるリスクもある。成功しているソフトウェア会社を見れば明らかなのだが、売れるソフトウェアは圧倒的に売れるけれども、売れないソフトウェアは全く売れない。大抵の場合は売れない。しかし上の数式のNの値がゼロでなければもっと売れる可能性は充分にある。全世界をターゲットにすれば限界のない数字に近い場合もある。

集中特化するソフトウェアがひとつだけならそれを開発するための人数は少なくても良い。むしろ大切なのは如何にして数式のNを増やすかである。それはその組織を構成する人材のクオリティと関わる問題であり、その組織に合った人材をどうやって集めて維持し洗練させてゆくかという問題に帰着される。その一つの解としてその組織の定員を限定するという発想がある。

  
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