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2005 年 08 月 22 日 : Value

事業によって本質的な価値はさまざまだと思う。それぞれの事業でその価値について考えてみるといろんな発想が浮かんで来るものである。ソフィア・クレイドルの製品を購入してくださっているお客様は、携帯電話向けアプリケーションを開発している企業である。

お客様はソフィア・クレイドルの製品をなぜ購入されたのか、或いは購入しなければならない本当の理由は何か?

というようなことをよく考えてみると、意外と次の展望が開けてくる。当社製品の本質的な価値は『時間短縮』である。例えば、携帯電話向けアプリケーション開発のある工程に何人日かの工数を要していたとする。それが当社製品を使うことで、その工程の必要性そのものが無くなるのである。それ故に、これまで6ヶ月の期間を要していた開発作業が5ヶ月で済んでしまったりするというような価値をお客様に提供しているわけだ。

お客様に当社製品を買うだけの価値があるということを簡単に理解してもらうにはどうすれば良いだろうか?製品を販売する単位は"円"であるのに対して、その製品の価値の単位は"時間"である。これでは単位が異なるので、瞬間的に比較することはできない。小学校で単位を同じにして二つのものを比較したようなアプローチを採る必要がある。

少々複雑なのはお客様によって時間の金額的な価値が異なるということである。時給800円で働く人もいれば、時給5000円で働く人もいる。状況はそれと似ている。

ある携帯電話向けアプリケーションをビジネスで使うことによって、例えば月に100万円の利益が出るとする。もしその携帯電話向けアプリケーションを1ヶ月早く提供できるとすれば100万円多くの利益を得ることができる。そうであれば、それに対して30万円のコストを費やしても充分に元が取れる。

ネットのサービスであればタイミングも重要である。例えばそれが業界初のサービスであれば、一番最初にそのサービスを提供することで得られる顧客獲得の価値というのは、サービスを前倒しにすることから得られる利益の増加分以上に大きいものである。

ヨーロッパやアメリカなど海外に仕事で行く場合、50年以上前ならば移動手段は飛行機ではなく船であったが、今は船ではなく飛行機を利用するのが常識だ。何故ならば、現代は飛行機の方が安く時間の価値がますます高まっているからである。

  

2005 年 08 月 11 日 : Ocean

「行く川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しく止まる事なし。世の中にある人と住家と、またかくの如し」

鴨長明による「方丈記」の有名な冒頭の一節である。オフィスから徒歩で数分のところに世界文化遺産として有名な下鴨神社がある。その近くを加茂川と高野川が合流し鴨川として北から南へと走っている。調べてみると、鴨長明は下鴨神社の神官の次男だったらしい。著名な文章は鴨川が合流する辺りの風景を眺めながら想い浮かべたものかもしれない。

いつも眺めている川は同じだけれど、その川を流れる水は決しては同じではないという意味らしい。何でも良いのだけれど、会社でもその存在そのものは何ら変わらないのに、それを構成するスタッフは時間の経過と共に変化する様がこんな感じである。

新しい世界を期待してソフィア・クレイドルにジョインする者もいるし、たまたま通過するものもいる。スタッフ自身も物理的に精神的に時の移ろいとともに確実に変化している。人それぞれに個人的な思いがあり、それを正確に捉えようとすれば正しく複雑系の科学なのかもしれない。複雑系の学問では、個々の構成要素をバラバラに分解しようとしても逆にますます複雑性を増すばかりで理解が困難になるが、複雑なものも全体の概念として把握に努めればその実像が明らかになると言われている。

会社についても複雑系的な発想でものごとを考えるのが良いのかもしれない。

大切なのはきっと創業以来存続している「ソフィア・クレイドル」という川のような存在が全体として何処に向かって流れているかではないだろうか。川の水が流れの方向に進んでいくように、会社のスタッフもその方向に向かって進むように。肝心なのはその川の流れの行き先は一体何処なのかという一点に集約されるように思う。

そんな事情もあって「方丈記」のこの文章は私にとってお気に入りで、ものごとの発想の原点でもある文章なのだ。名前に川のつく者も多くこれがまったくの偶然であるのも不思議な事ではある。京都には海がない。けれどもセルビアからはるばるやって来た外国人スタッフが活躍している。そのせいか流れの先にある海に共に憧れを抱いている。

  

2005 年 08 月 02 日 : Strategy & Tactics

起業家にはそれぞれに"戦略(Strategy)""戦術(Tactics)"があると思う。

それでは"戦略""戦術"を打ち出す上で最も大切な考え方は一体何なのであろうか?

一つの答えは「その組織に所属するすべてのスタッフが瞬間的に理解できる単純明快さ」だろう。個人的に"戦略""戦術"をこんな風に定義している。"戦略"とは着地点、"戦術"とは着地点に辿り着くための経路であると。

具体的に言えば、ソフィア・クレイドルの"戦略"は次のようになる。

Strategy "世界のあらゆる携帯電話組み込みソフト開発でソフィア・クレイドルの技術が使われること"

"戦術"とはその着地点に到達するための経路だからこんな具合。

Tactics 1. 世界に通用するソフト開発を為し得る超一流の人材を世界から募ること

Tactics 2. プログラミング言語や圧縮技術など汎用性と普遍性に富むソフト開発に的を絞り、集中投資すること

Tactics 3. 想定されるお客様に最適な Web サイトをデザインし構築し運用すること

Tactics 4. 製品 や Web は、日本語のみならず、英語、中国語など多言語対応すること

Tactics 5. ソフィア・クレイドルのソフトを自社のサーバーから世界に向けてネット配信できるインフラをデザインし構築し運用すること

ベンチャーの強みはある分野に集中特化し、熱意と情熱で新しい発見や発明をスピーディに実現する過程にある。それを達成するためには所属するすべてのスタッフが"戦略""戦術"を完璧に理解していることが何よりも重要である。そのためには"戦略""戦術"は全てのスタッフにとって単純明快であることが必須条件である。

  

2005 年 07 月 31 日 : BREW / Java 完全攻略 ケータイ開発実践入門

2005 年 8 月 5 日にスタッフが寄稿した専門誌「組込みプレス Startup Issue 」(技術評論社)が発売される。

2005 年 5 〜 6 月の 2 ヶ月間はこの仕事で多くの時間がこれに割かれた。創業してからずっと、携帯電話向けソフトウェアテクノロジーに関して他社が手掛けていない独自性を追求してきた。できるだけ沢山のノウハウを惜しみなく公開するようにスタッフに依頼した結果としての記事である。さすがスタッフ同士の見事なチームワークだった。

紙面に限りがあるため、書きたかったけれども残念ながらそれが叶わなかったノウハウも多い。それらについては今秋を目処に、弊社サイトにて無償で順次公開して行こうと思う。

■スタッフが寄稿した雑誌の特集企画:

【 BREW / Java 完全攻略 ケータイ開発実践入門 】

第 1 章 BREW,Java によるアプリケーション開発の基本
     〜携帯電話におけるソフトウェア開発のしくみ〜

第 2 章 C ではなく C++ で BREW アプリを開発する理由
     〜大規模化するアプリ開発に適した開発方法を考える〜

第 3 章 BREW アプリ開発における C++ の実際
     〜コンパイラ,BREW 環境特有の制限を考慮した設計〜

第 4 章 RVCTB コンパイラの特性を意識した最適化
     〜クラス定数の利用方法検証〜

第 5 章 ヒープと文字列クラスの実装 
     〜 C++ のメリットを実感しよう〜

第 6 章 Java アプリ開発実践入門
     〜キャリアごとの相違を踏まえた開発を成功させるには〜

第 7 章 Java → BREW 移植のポイント
     〜シングルスレッドで,UI コントロールも少ない BREW への対処法〜

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2005 年 07 月 26 日 : 多言語・複数バージョン対応 BREW SDK 切り替えツールを無償配布


BREW には6種類のバージョンがあり、更に日本語、英語、中国語など多言語対応している。それらの複数の BREW SDK を1台のパソコンにインストールしたとしても、それぞれの BREW SDK を自動的に切り替えて使える、便利なツールの無償提供を開始した。

《ソフィア・クレイドル、多言語対応 BREW SDK 切り替えツールを無償配布》

〜1クリックで様々な種類の BREW 開発環境を切り替えるツール〜

[概要]

携帯電話向けソフト開発の株式会社ソフィア・クレイドル(本社:京都市、代表取締役社長:杉山和徳、以下 ソフィア・クレイドル)は、多言語、複数バージョンの BREW に対応した『BREW SDK 切り替えツール(BREW SDK Switcher)』をバージョンアップしました。本バージョンでは、日本語と英語以外に、中国語、韓国語、ポルトガル語に対応し、また BREW 3.0 及び 3.1 にも対応しています。2005年7月26日より2005 年8月末までの期間限定で同社サイトにて無償提供します。

[詳細]

現在、BREW【※1】対応の携帯電話は世界マーケットで急増しています。そして、BREW アプリを開発するための BREW SDK【※2】 は多言語化し、最新バージョンは3.1 になるなど様々な種類が存在します。しかしながら1台のパソコンで、これらの様々な種類の BREW アプリを開発するには、その度に BREW SDK を手動で切り替える必要があり、極めて煩雑な処理が必要でした。

この度、ソフィア・クレイドルは、この BREW SDK を、”1クリックの単純な操作”で、自動で切り替えるツール『BREW SDK Switcher』を、日本語、英語、中国語、韓国語、ポルトガル語などBREWがサポートする全ての言語に対応し、最新の BREW 3.1 にも対応するようにバージョンアップしました。また、米国マイクロソフト社の最新版の開発環境である Visual Studio .Net にも対応するようになりました。

なお、本ツールは下記URLにて、2005年7月26日から2005年8月末日までの期間限定で無償提供されます。

BREW SDK Switcher ダウンロード URL :
/developer/tools/dtbw/0001/index.html

本プレスリリースURL:
/news/press/20050726.html

以上


■ 用語の説明

【※1】BREW
2001年1月に米国クアルコム社が発表した携帯電話向けソフトウェアの規格。「ブリュー」もしくは「ブルー」と読む。異なる携帯電話機の OS の仕様差を吸収し、単一のコンパイル後のプログラムをインターネットからダウンロードし、さまざまな携帯電話機でそのまま高速に動作できるように設計されている。日本では KDDI が2003年2月より BREW サービスを提供開始、NTTDoCoMo が今年秋頃からのサービスの開始を発表している。その他にも世界的な規模で普及が進んでいる。


【※2】BREW SDK
Qualcomm社が提供する、Windows 上で動くBREW開発キット。BREW プログラミングを行う際にはこの BREW SDK のインストールが必須となります。

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2005 年 07 月 10 日 : 行百里者

『戦国策』(秦三巻)に「行百里者半九十(百里を行く者は九十を半ばとす)」という有名な箴言がある。百里の道程を行くときは九十里で半分まで来たと心得ることこそが、ものごとをパーフェクトに完成させるための秘訣ということだ。

途中まで計画通りなのに成就せずに終ることが多い。それは最後の詰めの段階でそれまでの成功体験を過信して油断する人間の弱さにあるのかもしれない。

だから自分のイメージしたビジョンを実現するためには、残り10パーセントに辿り着いたといえども、まだ半分しか仕事は終っていないと気持ちを引き締めてより慎重に行動するように心掛けたいものである。それによって達成不可能と思われるような仕事や偉業も、必然的に現実のものとして姿を顕すのではないだろうか。

今、18ヶ月というベンチャーにしては長き時間をかけ、そのフィニッシュを決めるべきフェーズのソフトウェア研究開発プロジェクトがある。その完成まで残り2ヶ月を切った。『戦国策』の「行百里者半九十」という言葉をよく噛み締めて最後の詰めに取り組む姿勢が大切だ。

昨年の3月以来、ソフィア・クレイドルの時間と労力の90%は、全世界のマーケットをターゲットとする、この新製品の研究開発に捧げられてきた。具体的な収益というビジネスのかたちになるのは、2005年10月からスタートする第5期からであり、これに託す思いは計り知れない。

先週は、残り2ヶ月という貴重な期間をどのように過ごしてその思いを必達するかという道筋について、スタッフ全員と議論しながらその計画を策定していた。

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2005 年 07 月 02 日 : 星影

2005年7月2日時点で、「BREW」と「C++」というキーワードで、GoogleYahoo!MSNという著名3大検索エンジンをかけてみた。すると、Googleでは143,000件、Yahoo!では205,000件、MSNでは40,848件、「BREW」と「C++」に関連する登録サイトがそれぞれあった。何れもソフィア・クレイドルのサイトが第1位にランキングされており、いわば三冠を制したことになろうと素直に喜んでいる。

BREW」の業界で「C++」に関連する製品を研究開発し販売している会社は世界でソフィア・クレイドルだけである。だからなるべくしてそうなったと言えるかもしれない。けれども、ベンチャービジネスを創める何も定かでない霧の中を進む時期に、敢えてそういう選択ができるかが大切と思う。想定通りに事が運ばなければ全ての財産を失う結末を迎えるかもしれない。しかも世界中を見渡しても、自分たち以外誰もそんなことに挑戦していなかった。

今でこそ来年には世界で1億台を突破する勢いのBREW搭載携帯電話は、ソフィア・クレイドルを創業した2002年2月、世界マーケットではたった数百万台しか使われていなかった。その当時、NTTドコモ単独でも4000万台以上の携帯電話が利用されていた。そんな状況の中で、敢えて勝算を見込んでこの分野を選択するという種類の決断が、ベンチャー起業家には試されると思う。

何故、BREW搭載携帯電話というものに勝機を見出したかは、過去の日記で何回か触れているのでそちらを参照していただきたい。「BREW」そのものは米国のQualcomm社の提供するプラットフォームである。「BREW」だけの切り口であればQualcomm社と運命共同体の道を歩むことにもなりかねない。だから「BREW」だけでなく、もう一つの視点を求めた。それが「C++」というプログラミング言語であった。

例えば、Googleで「C++」をキーにして検索エンジンをかけてみると、世界で31,000,000件もの登録サイトがあることが分かる。それくらい世界レベルで考えてみれば、「C++」というものはメジャーなキーワードである。仮に「BREW」が今日のように世界中で普及が進むのであれば、そこには「C++」という分野が自ずと創造されるであろう。私たちは今「BREW」と「C++」を掛け合わせた業界で世界オンリーワンにしてナンバーワンを目指して、創業4年目の時間軸を駆け抜けている。

昼間は、太陽の光に遮られて見えない数え切れない程の星影も、夜になって見上げると自然に目に映ってくる。太陽が輝く空には無数の星が隠されているのだという事実は、ベンチャー起業のチャンスは無限大であることを示唆しているのかもしれない。

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